2014/04/21
リアルショップにてレコードを手にする楽しさを再発見するイベントとして世界21か国で開催されている【RECORD STORE DAY】が日本でも4月19日に行われた。
2008年、米サンフランシスコからスタートし、その火は世界中に飛び火し、いまや全世界で実施されている本イベント。毎年4月の第3土曜日に開催されており、海外ではメタリカ、オジー・オズボーン、イギー・ポップ、ジャック・ホワイトらがアンバサダーとなってその規模を大きくしてきた。今年はパブリック・エナミーのMCチャック・Dが就任。日本ではASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文がその任務に就き、リアルショップとレコードの良さを語った。
この日まで、年に1度のお祭りを盛り上げるべくプレイベントなどが多数開催され、昨年以上の動きを見せた。当日も各地でインストアのライブやトークショーが繰り広げられ、タワーレコード渋谷店ではピーター・バラカンとロバート・ハリスによる対談や、ジェットセット下北沢店にはアンバサダーの後藤正文や曽我部恵一らが店内でライブパフォーマンスを披露。また、各店舗ごとにゆかりのあるミュージシャンらがDJとして登場していた。
また、昨年以上に多くのアーティストが【RECORD STORE DAY】用の作品を発表。後藤正文は自身初のソロ・アルバムに加え、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの出世作である『崩壊アンプリファー』のアナログ盤をリリース。くるりもtofubeatsリミックスによる「ロックンロール・ハネムーン」の7インチや、坂本慎太郎とメイヤー・ホーソーンによる互いの楽曲をカヴァーしたスプリット7インチと注目作も並ぶ。きゃりーぱみゅぱみゅや木村カエラといったどメジャー勢の作品も。どれもレアな商品として売り切れとなる店舗が続出していたようだ。
パッケージは売れない、ダウンロードも売れない。確かに市場の縮小が嘆かれているが、デジタル化され“データ”となった音楽は我々の耳に様々な形で届くこととなった。それならばストリーミングなどの定額配信に舵を取ろう!と今後の動向が注目されている。好きなアーティストの音楽を聴くことに対価を払うのは当然であるべきだが、流通やテクノロジーの進化と現在の音楽市場が同じ歩調を取れていないのは明らかだ。しかし、この【RECORD STORE DAY】で沢山の音楽ファンが街に出かけ、レコードショップに行列を作っていた。ごった返す店内にはレコードをサクサク引っ張り上げ、数ある中からお宝を掘り当てる若いユーザーの姿があった。
アナログ盤は音楽を聴く媒体として素晴らしい音質を持ち、分りやすいアートワークで視界に飛び込んでくる。若い世代にとってそれは新鮮で“データ”としてではなく、“形ある音楽”のひとつだ。それは再び市場に新しい“価値”をもたらした。その結果、アナログ盤は新たな人気を獲得し、売上を伸ばした。本イベントに関わらずPerfumeやTHE BAWDIESといった若いアーティストもオリジナル・アルバムのLP盤をリリースしており、これから日本でもこの市場が成長していくことは簡単に予想できるだろう。アーティストとリスナーがアナログ盤という“形ある音楽”を使って楽しみを共有する。数十年も前から変わらなかったこのスタイルに改めて音楽の“価値”を思い知らされ、新たな“価値”と“テクノロジー”が互いに共存していくこれからの音楽市場をチラ見した一日となった。
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