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2024/12/14 08:00

【2024年 米ビルボード年間ソング・チャート】テディ・スウィムズ「ルーズ・コントロール」首位、カントリー・ソング躍進

 2024年の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”は、テディ・スウィムズの「ルーズ・コントロール」が年間1位に輝いた。

 テディ・スウィムズは、米ジョージア州アトランタ出身のシンガー・ソングライターで、2019年に故マイケル・ジャクソンの「ロック・ウィズ・ユー」をカバーした動画がヒットして、同年の年末にワーナー・レコードと契約。ビルボード・チャートに初めてランクインしたのは2021年で、今年の1月20日付で「ルーズ・コントロール」 がソング・チャート“Hot 100”で8位に、自身初のTOP10入りを果たした。その後、リミックスのリリース効果で3月30日付で1位に到達し、今年の集計期間(2024年10月19日付)終了まで39週間TOP10にランクイン。次年度以降のチャートでも引き続きTOP10に滞在し、史上2番目のロングランヒットを達成した。

 年間チャートでのTOP10入りは、首位獲得よりいかに長く上位にランクインしたかが重要で、年間3位にランクインしたベンソン・ブーンの「ビューティフル・シングス」も、2月10日付で8位にTOP10入りした後、3月30日付で最高位となる2位まで上昇し、8月3日付まで約8か月間TOP10に滞在した。また、この曲も2月末にリリースしたリミックスの効果によりポイントを上昇させて、ヒットを持続させている。

 一方、週間チャートではいずれも1位を獲得したアリアナ・グランデの「yes, and?」や、ミーガン・ザ・スタリオンの「ヒス」は、上位のランクイン週が少なかったこともあり、前者が年間92位、後者は100位内にもランクインしなかった。

 Hot 100に初めてランクインした曲で年間1位を獲得したのは、2019年の年間チャートを制したリル・ナズ・Xの「オールド・タウン・ロード feat. ビリー・レイ・サイラス」以来で、男性ソロ・シンガーの曲が年間1位を獲得するのは、昨年のモーガン・ウォレンの「ラスト・ナイト」に続き2年連続の快挙となる。

 「ルーズ・コントロール」同様に、上位のロングランが決め手なったシャブージーの「ア・バー・ソング(ティプシー)」は年間2位にランクイン。この曲は、5月11日付で3位にTOP10入りした後、7月13日付で1位に到達して集計期間終了まで通算14週間首位を獲得。TOP10のランクイン総週も今年3番目に長い24週間(集計期間まで)を記録して、テディ・スウィムズ同様に自身初の年間TOP10入りを果たした。

 「ア・バー・ソング(ティプシー)」は、2004年にリリースされたラッパーのJ-クウォンによる同名曲「ティプシー」がサンプリングされていて、同曲は週間チャートで2位、2004年の年間チャートでは11位を記録したが、いずれもオリジナルを上回る最高位を更新した。

 シャブージーが初めてソング・チャート“Hot 100”にランクインしたのは、今年の3月にリリースされたビヨンセの最新作『カウボーイ・カーター』にゲストとして参加した「スパゲッティ」が31位、「スウィート★ハニー★バッキン」が61位に初登場した4月13日付で、リード曲としては「ア・バー・ソング(ティプシー)」が初のランクインとなる。なお、『カウボーイ・カーター』からリード・シングルとして発表したビヨンセの「テキサス・ホールデム」は、週間チャートで2週間(3月2日~9日付)首位を獲得し、年間チャートでは32位にランクインした。

 「テキサス・ホールデム」は、黒人アーティスト(あるいはバイレイシャル)の曲としてHot 100とカントリー・ソング・チャートで同時に1位を獲得した史上初のタイトルで、黒人男性アーティストの曲では「ア・バー・ソング(ティプシー)」が初、2024年は2曲がその快挙を達成した。

 ジャンルの壁を解体したビヨンセを筆頭に、2024年はアーティストのもつ属性をクロスオーバーした曲が続々とヒットした。年間1位を記録したテディ・スウィムズの「ルーズ・コントロール」も、ソウルやR&Bの要素が取り入れられているが、R&B/ヒップホップ・エアプレイ・チャートにはランクインしたものの、R&Bソング・チャートにはランクインしておらず、明確な区分けはされていない。なお、ジャンルの定義はジャンル別のチャートにランクインした作品、またはランクインする条件が備わっている作品とされている。

 「テキサス・ホールデム」に続き、5月25日から7月6日付まで通算6週間(非連続)首位を獲得したポスト・マローンの「アイ・ハッド・サム・ヘルプ feat. モーガン・ウォレン」(年間4位)も、ジャンルの垣根を超えた今年ならではのヒットといえる。ポスト・マローンもまた、ヒップホップからロック、そして今年はカントリーに移行したジャンルレスのアーティストで、人気絶頂のカントリー・シンガー=モーガン・ウォレンをゲストに従えた同曲で、前述の2曲に続きHot 100とカントリー・ソングの両チャートで同時(同週)に1位を獲得した。

 ポスト・マローンの年間チャートTOP10入りは、「サークルズ」が2位にランクインした2020年以来4年ぶり、通算7曲目で、モーガン・ウォレンは昨年の年間チャートを制した「ラスト・ナイト」に続き2年連続、2曲目のTOP10入りを果たした。なお、年度をまたいだ最新のチャート(11月2日付)では、新曲「ラヴ・サムバディ」も1位に初登場して3曲目のNo.1タイトルを獲得している。

 週間チャートでは、ポスト・マローンがゲストとして参加したテイラー・スウィフトの「フォートナイト」(5月4日~5月11日付)も2週間首位を獲得して、年間チャートでは22位にランクインしている。ゲストのモーガン・ウォレンは、この曲の他にも前述の「ラスト・ナイト」(28位)、「カウガールズ」(29位)、「シンキング・アバウト・ミー」(31位)、「ライズ・ライズ・ライズ」(50位)の計5曲を年間TOP50にランクインさせた。

 ジャンルをクロスオーバーしたカントリー・ソングは、TOP10以下にもラテンを絡めたダーシャの「オースティン」(年間27位)、EDMとカントリーを融合させたマシュメロとケーン・ブラウンの「マイルズ・オン・イット」(年間34位)、ハード・ロック調のハーディーによる「トラック・ベッド」(年間67位)などが今年ヒットしている。

 カントリー・ソングでは、その他にザック・ブライアンの「アイ・リメンバー・エヴリシング feat. ケイシー・マスグレイヴス」が年間9位にランクインして、今年は「ア・バー・ソング(ティプシー)」、「アイ・ハッド・サム・ヘルプ」を含む3曲のタイトルがTOP10入りした。年間TOP10にカントリー・ソングが3曲ランクインするのは、ケニー・ロジャースの「レイディ」(3位)、エディ・ラビットの「恋のレイニー・ナイト」(8位)、ドリー・パートンの「9 To 5」(9位)がTOP10入りした1981年以来となる。

 「アイ・リメンバー・エヴリシング」は、2023年9月9日付で1位に初登場した後、今年の3月末まで23週間TOP10にランクイン。集計期間終了まで2か月弱だったにもかかわらず、昨年の年間チャートでは74位にランクインしていて、今年のチャートと集計期間が分かれなければさらに上位だったことが予想される。週間チャートでは両者共に初のNo,1獲得で、年間チャートではザック・ブライアンが昨年の年間13位にランクインした「サムシング・イン・ザ・オレンジ」を上回る最高位更新と初のTOP10入り、ケイシー・マスグレイヴスは自身初のランクインを果たした。

 「アイ・リメンバー・エヴリシング」も、前3曲に続きHot 100とカントリー・ソングの両チャートで同時(同週)に1位を獲得。前述にあるモーガン・ウォレンの最新曲「ラヴ・サムバディ」も両チャートを制し、今年のチャートでは4曲が2つのチャートで同時(同週)に1位を獲得した。

 カントリーがヒットを連発する一方で、ヒップホップ勢からはケンドリック・ラマーが年間6位にランクインした「ノット・ライク・アス」で、2017年の4位にランクインした「HUMBLE.」以来7年ぶり、2曲目の年間TOP10入りを果たしている。

 「ノット・ライク・アス」は、今年3月にリリースされたフューチャーとメトロ・ブーミンのジョイント・アルバム 『ウィー・ドント・トラスト・ユー』収録の「ライク・ザット」で、ケンドリックがドレイクとJ.コールに対する批判を投げたことから始まった一連のディス合戦の反響を受けて、5月18日付で1位に初登場。登場9週目の7月20日付で再び首位に返り咲き、2週目の首位を獲得した。初週では、ドレイクが保持していた週間ストリーミングの最高記録も塗り替えている。

 火種となった「ライク・ザット」も、週間チャートでは3週間(4月6日~4月20日付)1位を獲得して、年間チャートでは14位にランクイン。3人の男性リード・アーティストによる曲が首位を獲得したのは、エミネム、ドクター・ドレー、50セントによる2009年の「クラック・ア・ボトル」以来約15年ぶり、史上4曲目のタイトルで、年間チャートでは2003年の13位にランクインしたネリー、P.ディディ、マーフィー・リーによる「シェイク・ヤ・テイルフェザー」以来の最高位を更新した。なお、R&B/ヒップホップ・ソングの年間チャートでは「ライク・ザット」が4位、「ノット・ライク・アス」は堂々の1位に輝いている。

 一方、対するドレイクは今年の活躍が何とも煮え切らないところで、年間チャートでの最高位は45位にランクインした「Rich Baby Daddy feat. セクシー・レッド&シザ」で、同曲は週間チャートでの最高位も11位どまりだった。その他には、ビーフの発端となった「First Person Shooter feat. J.コール」が61位、ゲストとして参加した4batzの「act ii: date @ 8」が80位、「IDGAF feat. イート」が83位にランクインしたが、例年の傾向からするとぼんやりとした印象を受ける。

 ヒップホップ・ソングでは、その他にジャック・ハーロウの「ラヴィン・オン・ミー」が年間5位にランクイン。2022年の6位にランクインした「ファースト・クラス」に続く2曲目の年間TOP10入りで、それを上回る最高位を更新。週間チャートでも「ファースト・クラス」(3週間)の2倍を上回る6週間首位を獲得した。同曲は、R&B/ヒップホップ・ソングの年間チャートで2位にランクインしている。

 女性ラッパーでは、ドージャ・キャットが「アゴラ・ヒルズ」(年間17位)と「ペイント・ザ・タウン・レッド」(年間21位)の2曲をTOP30にランクインさせていて、前者はR&B/ヒップホップ・ソングの年間チャートで7位、後者は8位にTOP10入りしている。新星では49位にランクインしたフロー・ミリの「ネヴァー・ルーズ・ミー」や、ミーガン・ザ・スタリオンとのコラボレーション「ワナ・ビー」(年間40位)や「Yeah Glo!」(年間44位)をヒットさせたグロリラなどがブレイクした。

 今年ブレイクしたアーティストといえば、「エスプレッソ」が年間7位にランクインしたサブリナ・カーペンターがその筆頭といえる。「エスプレッソ」は、現地時間4月12日に出演した【コーチェラ・フェスティバル 2024】でパフォーマンスしたことが話題を呼び、4月27日付で7位に初登場。最高位は6月と9月に記録した3位で、首位は獲得しなかったが、集計期間終了までTOP10に25週間ランクインして自身初の年間TOP10入りを果たした。

 サブリナは、前述の【コーチェラ】出演前にテイラー・スウィフトの【The Eras Tour】でサポート・アクトを務めたことでも高い注目を集めて、ブレイクに繋げた。「エスプレッソ」の大ヒットを受けて、次曲「プリーズ・プリーズ・プリーズ」は週間チャートで自身初の首位を獲得。年間チャートでは16位にランクインして、両曲を収録したアルバム『ショート・アンド・スウィート』からは「テイスト」(年間86位)の3曲を同時(同週)にTOP10にランクインさせる快挙も達成している。3曲の他には、前作からのシングル「フェザー」も年間25位にランクインした。

 サブリナの他には、前述の「ビューティフル・シングス」が年間3位を記録したベンソン・ブーンや、年度をまたいだチャート(11月23日付)で6位に「ザッツ・ソー・トゥルー」をランクインさせたグレイシー・エイブラムスも、【The Eras Tour】の出演を受けてそれぞれ今年自身初のTOP10入りを果たしている。

 彼らをブレイクに繋げたテイラー・スウィフトは、「クルーエル・サマー」が年間12位、前述の「フォートナイト feat. ポスト・マローン」が22位にランクイン。「フォートナイト」が収録されたアルバム『ザ・トーチャード・ポエッツ・デパートメント』は、今年のアルバム・チャート“Billboard200”で年間1位を獲得している。本作の大ヒットや【The Eras Tour】の興収、2月開催された【第66回グラミー賞】での<年間最優秀アルバム>受賞を含め、昨年に続き今年も大活躍の一年だった。

 「クルーエル・サマー」は、昨年の年間チャートでも18位にランクインしていて、集計期間が分かれなければ今年のTOP10入りは間違いなかっただろう。そのケースでは、昨年の年間9位にランクインしたシザの「スヌーズ」も、今年に入ってからもロングヒットを記録して、年間チャートでは20位にランクインした。シザは、今年2月にリリースした新曲「サターン」も19位に、2曲を年間TOP20入りさせている。

 サブリナやグレイシー・エイブラムスの他には、女性ポップ・シンガーとして「グリーディー」を13位にランクインさせたテイト・マクレーや、「グッド・ラック、ベイブ!」(18位)と「ホット・トゥ・ゴー!」(53位)の2大ヒットを輩出したチャペル・ローン等が今年ブレイクを果たしている。

 男性アーティストでは、ベンソン・ブーンの他に年間8位に「ミリオン・ダラー・ベイビー」をランクインさせたトミー・リッチマンや、ロングヒットを記録した「スティック・シーズン」(年間11位)でブレイクしたノア・カーン等が高い注目を集めた。

 トミー・リッチマンは、TikTokで人気を博してブレイクした米ワシントンD.C.出身の新星で、Hot 100にランクインしたことがなかったアーティストによる初登場での順位としては、2023年8月26日付で1位にデビューしたオリヴァー・アンソニー・ミュージックの「リッチ・メン・ノース・オブ・リッチモンド」以来の最高位となる2位に「ミリオン・ダラー・ベイビー」をランクインさせて、華々しいデビューを飾った。週間チャートでは首位を獲得できなかったが、高ストリーミングを維持して8月末までTOP10に滞在。R&Bソング・チャートでは史上4番目に長い22週間首位を獲得した。

 同様に、ノア・カーンもHot 100では週間チャート、年間チャートいずれも初めてTOP10入りをしたアーティストで、「スティック・シーズン」は2年前の2022年7月にリリースされた後、デラックス盤のリリース効果などでじわじわと人気を博し、今年の4月27日付で最高位の9位まで到達したという経緯がある。

 今年の年間チャートは、上位3組もそれぞれ初めてTOP10入りした曲で年間チャートにランクインしていて、初めてTOP10入りした曲で年間TOP3を独占したのは、ゴティエの「サムバディ・ザット・アイ・ユースト・トゥ・ノウ」が1位、カーリー・レイ・ジェプセンの「コール・ミー・メイビー」が2位、ファン.の「ウィー・アー・ヤング」が3位にランクインした2012年以来のチャート・アクションとなる。

 初めてランクインした曲ではないが、10位に「トゥー・スゥイート」がランクインしたホージアも、同曲で自身初の年間TOP10入りを果たしている。「トゥー・スゥイート」は、3月にポッドキャストでティーザー動画が公開された後、TikTokで人気を集めたことで4月6日付で5位に初登場し、登場4週目の4月27日付で1位に到達。その後、8月24日付まで約5か月間TOP10にランクインした。週間チャートでのTOP10入りは、2014年12月に最高2位を記録した「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」以来で、首位獲得は初。年間チャートでも、2015年の14位にランクインした「テイク・ミー・トゥ・チャーチ」を上回り自己最高位を更新している。

 個性あふれる新顔や、アーティストのもつ属性を問わない曲がヒットした、2024年の米ビルボード・ソング・チャート“Hot 100”。次年度に入ってからも、黒人アーティストによるカントリー・ソング「ア・バー・ソング(ティプシー)」が引き続き首位を独占していたり、K-POPアーティストのロゼとブルーノ・マーズのコラボレーション「APT.」がTOP10にデビューしたり、往年のクリスマス・ヒット=マライア・キャリーの「恋人たちのクリスマス」が再びチャートインするなど、規則性や流行に囚われないチャート・アクションをみせている。チャートも“Less”の時代の幕開けか。

Text:本家一成

◎【Billboard Hot 100】2024年 年間チャートTOP10
1位「ルーズ・コントロール」テディ・スウィムズ
2位「ア・バー・ソング(ティプシー)」シャブージー
3位「ビューティフル・シングス」ベンソン・ブーン
4位「アイ・ハッド・サム・ヘルプ」ポスト・マローン feat. モーガン・ウォレン
5位「ラヴィン・オン・ミー」ジャック・ハーロウ
6位「ノット・ライク・アス」ケンドリック・ラマー
7位「エスプレッソ」サブリナ・カーペンター
8位「ミリオン・ダラー・ベイビー」トミー・リッチマン
9位「アイ・リメンバー・エヴリシング」ザック・ブライアン feat. ケイシー・マスグレイヴス
10位「トゥー・スゥイート」ホージア

集計期間:2023年10月28日付~2024年10月19日付チャート

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