2024/12/07 12:00
いつものコンサートとはまた一味も二味も違うアレンジが施された音楽をより親密な距離感で堪能できるひととき。ビルボードライブの醍醐味とも言うべき極上の音楽体験は、オーディエンスは然ることながら、アーティストにとっても格別に深い余韻を残すものなのだろう。おそらくmiwaもそのひとりに違いない。音楽をこよなく愛し、デビュー以来、唯一無二の歌声で多くの人々を魅了し続けている彼女が今年もビルボードライブのステージに帰ってきた。
【miwa Billboard Live Tour 2024 “miwa CLASSIC Ⅳ”】とタイトルに掲げられている通り、大阪、横浜、東京と全国3都市のビルボードライブを周るツアーも今回で4回目を数える。毎年同じ季節に開催されていることもあり、ファンの間でもすっかりお馴染みの年中行事として根付いた様子。本ツアーのファイナル公演となる11月30日のビルボードライブ東京2ndステージを目前に控えた場内は、ドリンクや食事を楽しみながら、ワクワクとその瞬間を待っているオーディエンスの嬉々としたムードで満たされている。
スタート時刻の19時を回って暗転したステージにサポートメンバーのeji(Pf.)、オバタコウジ(Gt.)に続いてmiwaが姿を現した途端、会場は盛大な拍手に沸き返った。プレミアムなライブの幕開けに披露されたのは、この5月にリリースされた最新アルバム『7th』収録の「キミはナガレボシ」だ。
柔らかなejiのピアノを伴奏に、オリジナルからグッとテンポを落としつつ、朗々と放たれた歌のなんとしなやかなことか。直後、自身のアコースティックギターを爪弾いてピアノの音色と重ねるや、その世界はいっそうのふくよかさでオーディエンスを包み込み、さらにオバタコウジのエレキギターが加わると場の空気が一気に動き出した。こうしたダイナミックなアンサンブルの移り変わりを肌で感じられるのもビルボードライブならではだろう。張りと艶と透明感、そのすべてを含んだmiwaの声は普段のバンドアレンジにおいても存分に存在感を発揮してアンサンブルを牽引するが、少ない音数で一音一音シンプルに研ぎ澄まされたクラシック・アレンジではいっそう本領が際立って圧倒的ですらある。
刹那、時が止まったようにただひたすら息を呑んで聴き入っていた客席も続く「Napa」では演奏と一緒になってハンドクラップ、場内にはたちまち一体感が渦巻いた。
「こんばんは、miwaです。楽しんでますか? 配信をご覧のみなさん、楽しんでる?」
2曲を立て続けに歌い上げたあと、ホッとしたような笑顔で呼びかけるmiwa。実はこの2ndステージは配信用の収録もされており、会場を訪れることができないファンにもリアルタイムでライブの模様が届けられているのだ。
「生配信、緊張します! でも観てもらえるのは嬉しい。会場のみなさんに参加してもらって画面の向こう側にも届くように一生懸命歌いますので、みんなで楽しい時間を過ごしましょう!」
そう告げるmiwaのもとに観客から本ツアー限定のコラボドリンク(ノンアルコール)が差し入れられるという粋な一幕もあり、さらにストリングスの須原杏(Vn.)と村岡苑子(Vc.)を加えたサポートメンバーにもグラスが配られるとmiwaの音頭によって会場全員で「乾杯!」を唱和。ステージで乾杯するのはこれが初めてだと声を弾ませるmiwaの、飾らない自然体な佇まいも実にいい。
中盤では「リトルガール」「It's you」「ミラクル」「シャイニー」「君に出会えたから」とアップテンポなナンバーをメドレーにしてオーディエンスと一緒になってライブを最高潮に盛り上げたかと思えば、来年2025年の3月でデビュー15周年を迎えることに触れつつ、歌い続けてくることができた15年を支えてくれたみんなに改めて自身の原点をお見せしたいとデビュー曲「don't cry anymore」を渾身の歌と演奏で今なお色褪せることのない音楽への情熱を体現してみせる場面も。誰かの期待に応えることや結果を出し続けるプレッシャーにもがき自分を見失いかけていた頃を振り返っては、それでも「私が私の味方で理解者で、信じてあげてそばにいる親友になりたい」と泣きながらスタジオで作っていたという「Who I Am」から、ステージ背後のカーテンが開いて一面に広がった六本木の夜景とともに届けられた「ヒカリへ」へと連なった、後半戦の美しくも力強いシークエンスには、誰もが胸を熱くしたはずだ。
今回も1日に2回公演で行われた【“miwa CLASSIC Ⅳ”】、計6公演にて毎回異なる楽曲を歌ってきたというアンコールの1曲目。やはり原点を振り返れるような曲を、とこれまで「めぐろ川」や「441」などが選曲されるなか、この日披露されたのは「Wake Up, Break Out!」だった。デビュー曲のカップリングにして、miwaが高校1年生のときに制作された曲だ。本ツアーのライブアレンジを一手に担い、今回はもちろん普段の公演でもバンマスを務めるejiが彼女と初めて一緒に演奏したのも「Wake Up, Break Out!」であるらしい。miwaいわく「ステージに立ってる私たちがいちばんグッときてるかもしれない、いちばんエモい曲」であるこの曲を二人きりで紡ぎ上げていく光景はこのうえなく楽しげで、これはたしかに原点だと腑に落ちる気がした。音楽は楽しい、歌うのは嬉しい、そんな無邪気な喜びが今も原動力となってmiwaという人を動かし続けていて、その溢れんばかりのエネルギーが私たちにも伝播して激しく心を揺さぶるのだろう、きっと。
再びメンバー全員がステージに揃い、オーラスは「空っぽ」が飾った。前述の『7th』にも収録、『ぶらり途中下車の旅』テーマソングとしても広く知られているこの曲。今年の8月からカナダに生活の拠点を移したmiwaだが、まさにその決意を固めようとしているときに作ったのが「空っぽ」だったことが演奏を前にしたMCで明かされた。期待と同じくらい不安も迷いもあったものの「この曲がきっと私を(望む場所に)連れて行ってくれるし、カナダに行った自分がみんなの前できっと歌う日が来ると信じて」作り上げたのだとmiwaは言う。勇気を振り絞って新たな一歩を踏み出したmiwaからの少し早いクリスマスプレゼントが、オーディエンスを“まっさらな旅”へといざなう。みんなが明日を、新しい1日を、勇気を持ってスタートできますように——歌に込められた彼女の想いがまっすぐに聴く者の胸を刺した。
「みんなに会いにカナダからいつでも戻ってくるので、15周年もどうぞよろしくお願いします。また会いましょう!」
再会を約束して、ステージをあとにしたmiwa。変化を恐れず、常に進化を続ける彼女は次にどんな表情を見せてくれるのか、楽しみに待っていたい。
Text:本間夕子
Photo:Kaoru Sato
◎配信情報
【miwa
Billboard Live Tour 2024 “miwa CLASSIC Ⅳ”】
東京・ビルボードライブ東京
視聴チケット:¥3,800-
Club BBL会員割引:¥2,900-
販売期間:~12/7(土)21:00
視聴可能期間:~12/7(土)23:59
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