2024/11/13
YOASOBIが、初のドーム公演【YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”】を10月26日と27日に大阪・京セラドーム大阪、11月9日と10日に東京・東京ドームにて開催した。
結成5周年を記念したドームライブは、4日間で約17万人を動員。“超現実”をテーマにしたライブは、その言葉通り“現実を超える”ような多くの驚きの瞬間に満ちたものだった。セットリストは、デビュー曲「夜に駆ける」から最新曲「New me」まで全25曲。今のJ-POPを代表する存在になったYOASOBIの魅力を様々な角度から体感できるようなライブだった。ここでは、ふたりにとって記念すべき初の東京ドーム公演となった9日公演の模様をレポートする。
まず目を見開いたのは登場の演出だった。開演時刻を少し過ぎると、ステージ背後の巨大LEDビジョンにYOASOBIのロゴが映し出され、10カウントがスタート。巨大なモンスターの爪がそのロゴを切り裂き、左右に現れた大きな手がこじあけるようにできたステージ上部の隙間に、Ayaseとikuraのふたりが登場する。「超現実へようこそ! 最後までついてこれますか、東京!」とikuraが叫び、ライブは「セブンティーン」からスタート。レーザーが舞い、観客たちが腕に装着した制御ライト“フリフラ”が光り、5万人がファンタジックな空間に誘い込まれる。
モンスターを模したパフジャケットを身にまとったAyaseとikuraは続けて「祝福」を披露。バンドメンバーたちのもとへと降り立ち、「怪物」「UNDEAD」とアグレッシブなナンバーを続ける。ステージから炎が吹き上がり、躍動感あふれるプレイとikuraの気迫のこもった歌声が響く。
改めての自己紹介のMCを経て「ついにここまで辿り着いたぞ! 念願の東京ドームにやってまいりました!」とAyaseが叫ぶ。続いては「ハルジオン」から「ミスター」と優しく親しみやすいナンバーを続ける展開だ。観客がハンドクラップし、左右に手を振り、あたたかなムードにドームが包まれる。
「もう少しだけ」はステージ上手の高層ビルが並ぶ都市の風景のセット、「海のまにまに」「優しい彗星」はステージ下手の、自動販売機やベンチが置かれた海辺のセットで披露。ビジョンに映し出された風景と共に、それぞれの曲で異なる世界を見せてくれるような演出だ。“小説を音楽にするユニット”として活動し、これまで発表した全ての楽曲に原作小説があるYOASOBI。ひとつひとつの楽曲にストーリーと世界観がある彼らの楽曲をステージに表現したライブは、まるでテーマパークのアトラクションのような体験として感じられる。
US公演や自身初の有観客ライブとなった東京・日本武道館公演など、華々しい5年間の活動を遡っていくドキュメント映像は、最後にAyaseのコンピューターでボーカロイドを用いて作った「たぶん」の制作画面へたどり着く。そしてセンターステージには、この曲を作った当時にAyaseが住んでいた部屋を模したセットが登場。冷蔵庫や電子レンジに囲まれ、こたつに座ってヘッドホンをつけたAyaseに向き合い、ikuraがゆったりと歌う。中盤は、小さな部屋から始まった彼らの“原点”を感じさせる展開だ。続いてもふたりで披露した「ハルカ」と“フリフラ”を用いたクイズコーナーをはさみ、最新曲「New me」を披露。新生活をテーマにした爽やかなこの曲が、彼らにとっての新しいスタートでもあることを感じた。
ふたりが退場すると、メインステージではブラックのスーツをまとった仄雲(Dr.)、やまもとひかる(Ba.)、ミソハギザクロ(Key.)、AssH(Gt.)というバンドメンバーが改めて紹介され、エネルギッシュなソロを披露。一人ひとり東京ドームに立った思いを語る。
「ここから後半戦、どうぞよろしく!」と、同じくブラックのスーツを身にまとったAyaseが告げると、べールをかぶったikuraが再びステージに登場。「勇者」から、スポットライトを浴びたikuraがアカペラで歌い始めた「あの夢をなぞって」と、歌と演奏のパフォーマンスで会場を惹き込んでいく。「三原色」では観客がタオルを回し、熱気が高まる。
そして「次の曲は全員の声が必要です!」とikuraが告げ、いよいよYOASOBI最大のキラーチューン「アイドル」へ。イントロから歓声が湧き、ikuraはセンターステージでキッズダンサーに囲まれて歌い、Ayaseは力強くパッドを叩く。腹の底からの「オイ! オイ!」という5万人のコールがドームに響き渡る。すさまじい盛り上がりだ。「5年前はこんな大歓声のど真ん中に自分たちがいるとは思ってなかった。本当に最高だった。ありがとう」とAyaseが笑顔を見せる。
続けてAyaseは「楽しいことばかりじゃない。辛い瞬間や心が折れる瞬間もあった」と5年間を振り返った思いを吐露した。嬉しさもあったけれど、それと同じくらい強い孤独を感じることもあったという。そんな活動の中でターニングポイントになったのがライブだった、キラキラした笑顔を見ることで乗り越えてきたと語り、そんな“孤独”をテーマにした曲「モノトーン」を披露した。そしてMCのバトンを引き継いだikuraは、憧れの場所だった東京ドームに立った喜びを語る。「YOASOBIのライブの武器はライブチームそのものだと思っています」と、誰も観たことのない景色を作りたいという思いのもと、ステージを共に作り上げたスタッフへの感謝を告げた。
「YOASOBIという船は自分たちの道を信じて進んでいきます」と決意を語り、「アンコール」をセンターステージで気持ちを込めて歌い上げる。「HEART BEAT」では「一緒に全力で歌いましょう!」とikuraが叫び、観客のシンガロングが響き渡った。
そして「ラブレター」ではステージ裏から、モンスターを模した気球が登場。Ayaseとikura は気球に乗ってオーディエンスを見下ろし、手を振りながら歌う。「アドベンチャー」ではカートに乗ったメンバーたちがアリーナを一周し、センターステージで全員が合流。キッズダンサーたちも揃って披露した「ツバメ」から、本編ラストは「群青」。5万人のシンガロングで会場がひとつになり、紙吹雪が舞い、大団円のうちに本編は幕を閉じた。
アンコールを求める歓声に応えてふたりとバンドメンバーが再びステージに登場すると、「舞台に立って」を披露。ikuraは白いエレキギターを掻き鳴らしながら歌う。〈そうだ夢に見ていた景色の/目の前に立っているんだ〉という歌詞のところでは大きな笑顔も見せていた。きっとこの曲のメッセージを、自分たち自身のものとして強く実感していたのだろう。
そしてラストはデビュー曲「夜に駆ける」。背景の映像には、これまでのライブでこの曲を披露したときの光景も映し出され、過去と現在がシンクロするような演出にも胸を打たれた。大きな歓声が響き渡り、ライブは終了。記念撮影を経てふたりがステージから降りた後も、幸福な余韻が残った。
数々の豪華な演出に目を丸くしたYOASOBI初の東京ドーム公演。最終的に感じ入ったのは、彼らの音楽そのものが持つ多くの人を巻き込んでいくようなパワーだった。
このドームライブは彼らにとってひとつの到達点であると同時に、また新たなスタート地点にもなったはずだ。12月から2025年2月にかけてはソウル、香港、バンコク、台北、上海、シンガポール、ジャカルタの全7都市を巡るアジアツアー【YOASOBI ASIA TOUR 2024-2025 “超現実 cho-genjitsu”】が開催される。この先のYOASOBIの歩みにも期待が高まる一夜だった。
Text:柴那典
Photo:Yoshinori Mori、Yoshihiro Mori、Kosuke Ito
◎公演情報
【YOASOBI 5th ANNIVERSARY DOME LIVE 2024 “超現実”】
2024年11月9日(土) 東京・東京ドーム
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