2024/09/03 18:00
【SUMMER SONIC 2024 TOKYO】、2日目のMARINE STAGEヘッドライナーとしてブリング・ミー・ザ・ホライズン(以下BMTH)が出演。ヘヴィミュージックのファンにはなんとも感慨深い字面だ。BMTHがサマソニに出演するのは2009年、2019年に次いで今回が3度目となる。デスコアという一般受けからは程遠いジャンルでキャリアをスタートさせた彼らが、徐々に音楽性を変化させていき、いつの間にか大会場の似合う、ロックやメタルを代表するバンドにまで上りつめた。そんな彼らがついに日本の夏フェスでもヘッドライナーに抜擢されたのだから見逃すわけにはいかない。
予定時刻を少し過ぎたタイミングで会場が暗転。ステージ両脇のスクリーンには日本のゲームを緻密にオマージュしたイントロ映像が流れる。近年の彼らはライブにおいて独自の世界観を構築するようになっており、もはや一つの“体験”という次元に入っている。BMTHが生み出した人工知能キャラクター“E.V.E”がライブの要所要所でスクリーンに登場し、世界観を維持しつつ観客を煽っていくという秀逸な演出もユニークだ。
満を持してバンドが登場すると最新作『POST HUMAN: NeX GEn』収録のエモーショナルな「DArkSide」でライブがスタート。シンガロングしやすいメロディー、モダンさと00年代的ヘヴィネスを匠にブレンドしたサウンドで会場は早くも一つに。そこに<S P I R I T>のチアリーダー・チャントが印象的な「Happy Song」が続く。オリヴァー・サイクス(Vo)の煽りに応じ、マリンスタジアムのアリーナに巨大なウォール・オブ・デスが出現する光景は痛快の一言。今回の来日公演で久しぶりにセットリストに復帰した「Sleepwalking」ではサポートギターのジョン・ジョーンズがピアノでイントロを奏で、見事なコーラスワークも披露。10年以上BMTHのライブを支えているジョンだが、昨年のジョーダン・フィッシュ(Key)の脱退以降、より一層欠かせない存在になっているのは間違いないだろう。
ノリの良いグルーヴがヘドバンを誘う「MANTRA」、BMTHに流れるリンキン・パークのDNAがふんだんに感じられる「Teardrops」と近年の人気曲が畳み掛けられていく中で、改めて今の彼らの持つスケール感の壮大さを実感する。アリーナやスタジアムが似合うどころか、空間ごと自分たちの色に染め上げているような、とてつもない説得力を帯びている。
セットが進むに連れ、楽曲もより激しいものが連なり始める。最新作の中でも一際ヘヴィな「Kool-Aid」では巨大なサークルピットが発生。ブレイクダウンの一体感ある掛け声も迫力満点だ。一度はメタリックなサウンドから距離を置いていた彼らだが、前作『POST HUMAN:SURVIVAL HORROR』以降の音像はこれまでのキャリアの要素を詰め込んだ創造的なもので、惜しげもなく初期楽曲並の攻撃力を秘めている。そして、前半のクライマックスとして、神秘的なイントロから代表曲「Shadow Moses」が投下される。圧倒的な知名度を誇るシンガロングパート、10年代メタルコアの王道的サウンド。この名曲がサマソニのメインステージで鳴り響いている事実そのものがヘヴィミュージック・シーンにとって大きな勝利だろう。
怪しげなSEから始まった「liMOusIne」。リー・マリア(Gt)、マット・キーン(Ba)、マット・ニコルス(Dr)とジョンがデフトーンズ直系の気怠げなヘヴィネスを奏でてオーディエンスを揺らすと、なんと音源で同曲にfeat.参加しているオーロラがサプライズ登場。幻想的でダークな歌声、オリヴァーとの巧みなパートの掛け合い。自らのSONIC STAGEでの出番まで間もない中で強烈なインパクトを残して歌姫はステージを去った。
BMTHはここからどんどんボルテージを上げていく。近年の楽曲では群を抜いた激しさを誇る「AmEN!」で巨大なシンガロングを巻き起こした後、SEの「Itch For The Cure (When Will We Be Free?)」が流れる。日本で一際人気の高いあの楽曲の確定演出だ。そして、「Kingslayer」の印象的な前奏に移行すると、客席はこの日一の興奮状態に。そこに追い打ちをかけるように、この日2組目のサプライズゲスト、BABYMETALが登場する。SU-METALのハイトーンが清々しく響き渡る。MOA-METALとMOMO-METALのパワフルなダンスも流石の美しさだ。曲の後半ではオリヴァーとBABYMETALが花道で揃ってヘドバンをするという熱い場面も。日本を代表するメタルアーティストであり、BMTHの盟友と言っても過言ではないBABYMETALとBMTHのコラボ楽曲が生で再現される迫力は凄まじい。
続く「Antivist」ではファンの中から志願者を募り、1名にヴォーカルを担当してもらうという演出も。今回選ばれた男性は中々の実力者で、シャウトはもちろん、ステージングからも大舞台に物怖じしない度胸が感じられた(前日の大阪公演で選ばれた男性も非常に優れたパフォーマンスがSNS上で話題となっていた)。この間、スクリーンにカラオケ・ゲームのような映像が映されていたのもエンタメ性に溢れていた。なお余談だが、このコーナーの楽曲はツアーを通して固定ではあるものの、披露前にルーレット形式で楽曲が選ばれる映像演出が伴っており、その際に数秒ずつ昔の曲が流れる。「Pray For Plagues」(1st AL『Count Your Blessings』収録)が流れた瞬間の大歓声には思わず筆者もニヤリとしてしまった。
本編も気づけば終盤。「Follow You」の優しい音色が会場の心を温めると、ポップ・パンク色やハイパーポップの要素がふんだんに取り入れられた「LosT」で再びエネルギーが爆発する。この曲も日本のファン層における人気が高く、要所要所でシンガロングが発生していた。そして、あのシンセの音色と共にラストへ。孤高の名曲「Can You Feel My Heart」は先程の「Shadow Moses」と共に10年以上BMTHのライブを支えてきたが、英語圏ではTikTokの影響で改めて若い世代の間でヒット。新たな層に届いたことで、結果的におそらく今彼らの楽曲で世界的知名度が一番高い曲となっている。この曲の生々しくエモーショナルな歌詞とメロディー、会場全体が飛び跳ねる圧巻な光景を誘発するサウンド。マリンスタジアムはまさしくこの瞬間、一つになった。
アンコールは日本では初めての披露となる「Doomed」から。リリース時の来日公演がキャンセルとなってしまった『That’s The Spirit』(2015年リリース)のオープニングナンバーが、約8年越しに日本で演奏されたのは感慨深い。続く定番曲「Drown」ではオリヴァーが客席に降り、ファンと時に抱き合いながら、共に歌いあげた。心の弱さを吐露する歌詞にこれだけの人が共感し、合唱しているという光景は“感動”という言葉だけでは表せない。ライブを締めくくったのはもちろん「Throne」。レーザー演出と共にあのイントロが流れ、会場はジャンプとシンガロングの海となる。皆すべて出し切るように叫び、飛び跳ね、ぶつかりあう。ロックやメタルの醍醐味がここにはある。最後、バンドはスクリーンに「BMTH JUST ROCKED MY WORLD」という言葉を残してステージを去った。
今回のライブでのBMTHはまさしくロックスターだった。楽曲の強さ、メンバーのカリスマ性、そして観る者を魅了する才能。まさにヘッドライナーに相応しいステージだ。アンコールの前には、バンドのこれまでのキャリアを振り返るVTRが映し出された。初期の若々しいデスコア時代から、シーンの代表格としての地位を確立した『Sempiternal』~『That’s The Spirit』期、世界的知名度が伸びた『amo』期。近年の『POST HUMAN』期に至るまで、このバンドが辿ってきた軌跡、これまでの進化が脳裏によぎる。途中、オリヴァーと故チェスター・ベニントン(リンキン・パーク)のツーショットが映った際には大歓声が上がっていた。オリヴァーはMCで「なぜ日本でこんな大きなライブをさせて貰えているのか分からない」という趣旨のことを言っていた。その答えはライブを観た人なら一目瞭然だったと思う。リンキン・パーク等が繋いできたバトンは受け継がれており、ロックやメタルが決して死んでいないということをBMTHが身を持って証明した圧巻のライブだった。
Text:Haruki Saito
Photos:(c)SUMMER SONIC All Copyrights Reserved.
◎公演情報
【SUMMER SONIC 2024】
2024年8月17日(土)、18日(日)
千葉・ZOZOマリンスタジアム、幕張メッセ
大阪・万博記念公園
<ブリング・ミー・ザ・ホライズン セットリスト>
1. DArkSide
2. Happy Song
3. Sleepwalking
4. MANTRA
5. Teardrops
6. Kool-Aid
7. Shadow Moses
8. liMOusIne feat.オーロラ
9. AmEN!
10. Kingslayer feat. BABYMETAL
11. Antivist
12. Follow You
13. LosT
14. Can You Feel My Heart
アンコール
15. Doomed
16. Drown
17. Throne
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