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<ライブレポート>Arakezuri ライブキャパ更新を続ける4人とオーディエンスの思いが合致した熱い【Road to QUATTRO】ファイナル公演

 滋賀を拠点に活動するロックバンド・Arakezuriが初めて挑んだワンマンツアー【Road to QUATTRO】のファイナル公演が7月16日に東京・渋谷クラブクアトロで開催された。終演直後の本人たちに直撃インタビューも実施。メンバーたちの熱い気持ちをそのまま届ける。

 結局のところ、人を動かすのは情熱だ。その純度が高ければ高いほどそれはよりいっそうの威力を発揮する。微塵の濁りも混じり気もない、まっすぐで透明な初期衝動。悩んで、もがいて、泥まみれになっても、それでも前へ前へ突き進まんとするひたすらな推進力。Arakezuriが全身全霊で放つそうした剥き出しのエネルギーは会場を埋め尽くしたオーディエンスの間に瞬時にして伝播し、途轍もない共鳴の渦を巻き起こしてゆく。そんじょそこらのそれと同義に語るのが憚られてしまうほどに凄まじい一体感、理屈を超えて聴き手の胸のど真ん中に突き刺さってくるこの音楽に触れて、誰が心揺さぶられずにいられるだろうか。

 【Road to QUATTRO】のファイナルであり、ツアータイトルにも掲げて目指してきたゴールの地、渋谷クラブクアトロについに辿り着いた。去る2月9日には東京・渋谷Spotify O-WESTにてワンマンライブを大成功に収めたばかりのArakezuriだが、今回のクアトロワンマン公演で早くもバンド史上最大キャパシティの記録を更新したことになる。ツアーは全会場ソールドアウト、もちろんこの日も見事満員御礼で、フロアは立錐の余地もないほどの盛況ぶりだ。年間のべ120ものステージに立つライブバンドとして実力を積み上げつつ、関西在住ながら東京でも着実に活動の場を広げてきた彼ら。今日のライブへの期待度がいかに高いか、詰めかけたファンの表情からもひしと伝わってくる。

 そうして迎えた開演時刻。ステージに登場した4人が一斉に鳴らした轟音が始まりの合図となってオーディエンスを貫いた。

「渋谷クアトロ、準備できてるか! 俺たちが滋賀県、Arakezuriだ! よろしく!」

 そう呼びかける白井竣馬(Vo.& Gt.)に高々と拳を突き上げて応えるフロア。メンバーもオーディエンスも待ちに待ったファイナルの幕を切って落とした記念すべき1曲目は「陽は落ちても、星の真裏にて昇る」だった。7月3日にリリースされた最新のデジタルEP『CAKE』の収録曲だが、実は6年前に発売された1stミニアルバム『結果論』にも収録、これまでも折に触れて演奏されてきたファンはもとよりバンドにとっても思い入れの深いこの曲がここぞとばかりに迸って、場内をたちまち狂騒の坩堝に変える。辿り着くまでは憧れと挑戦の象徴だったはずの渋谷クラブクアトロが、瞬く間に彼らの“ホーム”と化していく様は痛快至極の一語に尽きた。

 この日のセットリストを飾ったのはArakezuriの歴史を縦断的に網羅しながらも、日々、加速度的に成長を遂げ続けている彼らの“今”を余すことなく観る者に届ける最強のラインナップだ。バンドのソングライティングを手がける白井によって綴られた歌詞には、この世のままならなさに打ちのめされた行き場のない心情や、上手くやり過ごせない己の不甲斐なさが吐露され、それでも諦め悪くガムシャラにもがき続ける姿が描き出されて赤裸々このうえない。かっこ悪いかもしれない、情けないと思われるかもしれない、七転八倒の人生だとしても、自分は自分の信じた道をとことん突き進んでいくんだ——そんな彼らの生き様そのものを映し出したような歌が、4人一丸となった骨太なロックサウンドに乗って、ひしめくオーディエンスをぶっ刺し、誰ひとり置き去りにすることなく腹の底から鼓舞していく。

 ステージとフロアとの境界を取っ払うかのようにして繰り広げられるシンガロングの応酬。宇野智紀(Ba.& Cho.)が中心となって白井を支えるメンバーのコーラスも楽曲に宿ったメッセージをひときわ分厚く増幅させる。客席に今にも突っ込んでいかんばかりに激しいプレイとパフォーマンスで魅せる石坂亮輔(Gt.& Cho.)、本編中盤に披露された椿佑輔(Dr.& Cho.)のドラムソロも大いにオーディエンスを沸かせた。

 天井知らずの熱狂は曲を重ねれば重ねるほどにますますのぼり詰めるばかりで、あまりのヒートアップぶりに「ウルトラエール」では演奏を一時中断し、仕切り直す場面もあったが、すぐさま観客同士に助け合いのムードが形成され、ひときわ高い団結力で中断前を上回る最高の盛り上がりをマーク。アーティストによってライブの形はさまざまだが、バンドとオーディエンスがひとつになって、同じ空間にいる一人ひとりを思いながら一緒に作り上げていくのがArakezuriのスタイルであり、醍醐味なのだろう。誰が欠けても今日という日、【Road to QUATTRO】ファイナルの渋谷クラブクアトロ公演は成立しない。最後までこの全員で走りきり、ともにゴールテープを切るのだという暗黙の気概がステージにもフロアにも満ち満ちている。

「俺はArakezuriがもっともっと多くの人に、目の前のあなたのもっともっと深くに、伝わるべきバンドやって信じてる。俺たちが間違ってなかったって、この音楽を信じてくれるあなたたちも間違ってなかったって、俺は証明したい。“かっこ悪い”とか“ダサい”とか言われても全然大丈夫。それを証明するためなら、あんたに会いにいくためなら、この時代、俺は変えるぞ。」

 本編終盤、あと2曲を残したところで白井はそうきっぱりと言い切った。場の空気に酔って飛び出した言葉では決してない。それが容易でないことも、自身もバンドもまだまだ無力であることも、よくよく理解したうえで、それでもと口にした覚悟の宣言だ。たかが音楽、しかもロックに何ができると鼻で笑う人もいるだろう。

 現実はたしかにその通りかもしれない。だが今まさに、嬉々として拳を振り上げ、飛び跳ねながら4人と一緒になってデッカい歌声を重ねている満場の笑顔の光景に未来を思い描かずにはいられなかった。朗々と鳴り渡っている曲の名は「時代」。先述した最新EP『CAKE』の1曲目にしてArakezuriの決意表明と呼びたい1曲だ。〈僕のロックバンドが素晴らしいと思うから/知る人ぞ知るなんかじゃ終わらせたくないんだよ〉〈あなたのロックバンドが夢を叶える姿/死んでも見せたいから 素直に生きていくんだよ〉とまっすぐに歌い上げるこの音楽、この曇りなき情熱を希望でなくてなんと言おうか。

 彼らのアンセム「ヒーロー」で本編ラストを駆け抜け、アンコールで「革命今夜」、本日二度目の演奏となる爆速チューン「ピースオブケイク」と畳み掛けて【Road to QUATTRO】は大団円。だが、当然ながらArakezuriの挑戦はここで終わるわけではない。さらなる高みを目指す彼らが次に向かう場所として、12月20日に東京・恵比寿LIQUIDROOMにてワンマンライブが開催されることがこの日、本人たちの口から発表された。それに先駆けて10月の毎週木曜日には渋谷Spotify O-Crestで【Road to LIQUIDROOM~CREST JACK~】と題した5週連続ウィークリー2マンライブも行われる。なお、本公演より「時代」のライブ映像が公開されたばかりだ。

 快進撃からいよいよ目が離せなくなってきたArakezuri。最後に終演後に直撃した彼らのコメントをお届けしよう。

■白井竣馬(Vo.& Gt.)
ありがとうございました! 楽しかったです。本当にすごくいいライブを会場全体で作れた気がしますね。みんなが参加してくれて、こっちからもライブを観ているみたいな感覚になってました(笑)。みんなからの音楽を俺らが受け取ってるような。

これからも自分たちがやりたいこと、かっこいいと信じているものを、もっともっと伝わるような活動をしていきたい。絶対伝わるべきだと思っているので、それをどんどん広げていけたら。ワンマンライブの規模をさらに大きくしていくこともそうですし、次のLIQUIDROOMもその一歩だと思っています。俺らに会いにきてくれている人たちと一緒にその道のりをのぼっていきたいですね。この記事でArakezuriを知ってくれた方も、今までもずっと知ってくれている方も、みなさんの好きなタイミングで遊びに来てください。いつでもライブハウスで待っています!

■石坂亮輔(Gt.& Cho.)
ワンマンツアー自体がArakezuriとしては初めての試みで、最初はかなりの挑戦やなと思っていたんですけど、今日を終えて、僕らはちゃんと歩けてた、前に進めてたんやなとすごく実感できました。来てくれたお客さんのおかげですね。ここからまた次のステップに挑戦できる勇気をすごくもらえた気持ちです。

これからの野望ですか? 僕らはライブハウス育ちのバンドマンなので、ライブハウスのヒーローになれるような活動をこれからもしていきたいですし、そういうバンドになりたい。今はそう思っています。

■宇野智紀(Ba.& Cho.)
まずはツアーを開催できて、そして完走できてよかったなと思っていますね。それが当たり前じゃないってことは身に沁みて感じてきたので、こうやってみんなが集まってくれて、しかもこんなにも大勢の人たちが自分らの曲を歌ってくれて……本当に最高でした! 至福の時間でしたね。

僕の野望は、そんなみんなに「好きでいてよかったな」って誇りに思ってもらえるバンドになること。LIQUIDROOMにもまたお客さんたち全員と一緒に挑戦できたらと思います。

■椿 佑輔(Dr.& Cho.)
バンドにとって最大キャパであるこのクアトロで、1発目の音をドンッと鳴らしたときが最初のハイライトでしたね。お客さんの歓声がホンマにヤバくて。そのリアクションだけでもうウルッときちゃいました(笑)。「ウルトラエール」で演奏を一旦止めたときに、お客さんみんなが「大丈夫?」って声を掛け合って助け合っていたのも嬉しかったんですよ。そういう環境を作ってくれていることがすごく誇らしくて、あの場面でも実はグッときてました。

とにかくずっと楽しかったですし、これにまた挑戦できるのかと思ったら、楽しみと幸福感でソワソワします。早くやりたい気持ちしかないですね。お客さんとの相乗効果をもっともっと増していけるように、これからもいろいろ楽しいことをやっていきたい。そんなわんぱくな気持ちでいます。

Text by 本間夕子
Photos by イデタリク

◎公演情報
【Arakezuri one man live "HERO's RISING"】
2024年12月20日(金)東京・恵比寿LIQUIDROOM
チケット:4,000円
一般発売:8月10日(土)10:00~
https://eplus.jp/arakezuri/

【Road to LIQUIDROOM~CREST JACK~】
2024年10月3日(木)東京・渋谷 Spotify O-Crest w/ペルシカリア
2024年10月10日(木)東京・渋谷 Spotify O-Crest w/超能力戦士ドリアン
2024年10月17日(木)東京・渋谷 Spotify O-Crest w/3markets[]
2024年10月24日(木)東京・渋谷 Spotify O-Crest w/ちゃくら
2024年10月31日(木)東京・渋谷 Spotify O-Crest(※後日発表)
チケット:3,500円
オフィシャル2次先行:8月1日(木)18:00~8月8日(木)23:59
https://eplus.jp/arakezuri/

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