2024/06/07 18:00
climbgrowが、全国10都市を巡るツアー【LOVECROWN TOUR2024】を開催中だ。
この記事では、ツアー2か所目の東京・高田馬場CLUB PHASE公演をレポート。開演時刻になり、杉野泰誠(Vo./Gt.)、近藤和嗣(Gt.)、谷川将太朗(Ba.)、谷口宗夢(Dr.)が登場するも演奏はなかなか始まらない。どうやらギターアンプの調子が悪いようだ。しかし「こんなこともあるよ。仙台の時、照明落ちてきたことあったからね」と笑うメンバーはトラブルなんて何のそのという感じで頼もしい。そんなある意味ライブらしい場面を経てバンドと観客の団結はもう一段深まったようで、アンプ復活後、メンバーが一旦捌けてから再登場すると、観客は熱量高く4人を迎えた。
歪むギター、杉野の強烈なシャウトを合図に、4人が向き合って楽器を掻き鳴らす。そうして1曲目がスタート。むせかえるようなグルーヴに挑発された観客が、拳を目一杯突き上げながら応じている。最初の数曲を終えたところで、バンドのキメとともに、「Welcome to 【LOVECROWN TOUR】! ここ高田馬場、ぶち込みにきました! ロックンロール始めます」という杉野の口上がばっちりキマった。その後始まったのが4つ打ちナンバー「THIS IS」なのだからタガを外して飛び跳ねるしかない。杉野がシャウトをかます裏で、谷口のビートが曲間を繋ぎ、熱を絶やさぬまま次の曲が始まる。ハイになった谷川がフロアにダイブさせたベースが、観客の手を介して返ってくる。近藤が前に出てきてガシガシと鳴らすギター。まだセットリストの半分も過ぎていないのに、クライマックス並みのテンションで叫ぶ観客。イヤモニを外した耳で歓声を受け取り、「最高! バンド最高っす、ありがとう」と笑う杉野。そして「最高の夜にしようぜ」という言葉とともにライブ鉄板曲「極彩色の夜へ」が始まれば、特大シンガロングの発生だ。「なんていい夜だ」という気持ちでみんなが一つになっているような、心の中で肩を組んでいることが分かるタイプのシンガロングだった。
ライブの後半では前列の観客にマイクを渡し、さらに「歌いたいってやつ、いる?」と観客同士でマイクをまわしてもらい、コール&レスポンスを行う場面もあった。ステージもフロアも分け隔てなく、みんなではしゃぐロックンロールパーティー。途中のMCでは杉野が近藤に「楽しい? ずっといい表情で弾いてるから」と尋ね、近藤が大きく頷く。それを受けて「大きめの″うん”もらったから、俺も一生懸命歌おう」と杉野。さらに「楽しいなって人、手上げてもらっていいですか?」という質問にたくさんの手が上がると、「めっちゃええやん。かわいい」と頬を緩ませ、「和嗣とお前らのために歌うわ」と「未来は俺らの手の中」を歌い始めた。「ロックンロールが好き、それだけでいいじゃん! climbrgrowが好き、それだけでいいじゃん!」と杉野が叫ぶと、観客も同じ気持ちだと主張するように「うおー!」と声を上げる。
ニューアルバム『LOVE CLOWN』のリリースを記念して開催された今回のツアー。セットリストは日によって変えているそうだが、目玉はやはりアルバム収録曲。ライブハウスの床や壁をビリビリと震わせる骨太のバンドサウンド、“今この瞬間の感情が乗っているから同じライブなど1本もない”というありがちな精神論に寄りかからず、バンドや楽曲のポテンシャルを最大限に引き出さんとするアレンジのセンス、それでも今この場所で湧き上がってくる感情の掛け算によって、各曲は輝きを増していた。音源でも2曲で1セット感が強かった「沈まぬ太陽」~「罪ト罰」は、ロックオペラのように重厚な展開が聴きごたえ抜群。「西南西の風」はボーカルと同期のみでまとめている箇所とバンドで鳴らす箇所のコントラストが印象的で、特に終盤の谷口の燃焼具合が素晴らしい(ステージに全てを置いていこうという気概を感じた)。<真空管に宿った情熱に/俺らが火をつけて/心臓を揺らした衝動が/お前に火をつけるんだ>と歌う「KAEDE」の曲中では、杉野が「俺たちに預けてくれ!大丈夫だ、燃やしてやる!」と熱いメッセージを投げかけた。
アコースティックを爪弾く杉野による曲の導入となる語り、そして「27」を通して流れ込んできたのは一人の人間、ロックバンドの等身大の生き様。自分の人生に正直に向き合って書いた曲を歌い終えると、杉野は「どこまで行っても、いつまで経っても、俺、ロックンロールが好きっす!感情がぐちゃぐちゃになるほど、ロックンロールが好きっす!」と思いの丈をぶちまけた。さらに観客には「おまえらの明かりを灯すのは俺たちじゃない、お前自身だ! 火をつけよう、ロックンロールで!」と呼びかける。ロックンロールに突き動かされてここまでやってきた彼らは、音楽を愛する人間の力を、つまりリスナーであるあなたの力を心から信じている。そんなMCのあと、どんな言葉よりも説得力のある4ピースサウンドが豪快に鳴らされた。ツアーとアルバムのタイトルの【LOVECROWN】とは造語で、自分の好きなもの、誇れるものという意味合いだという。バンド人生をかけて培ったロックンロールをclimbgrowが限りなく素直に鳴らせば、その音楽自体がオーディエンスにとって、尊厳や誇り、明日へ向かうエネルギーを取り戻したり再確認したりするきっかけになる。そんな連鎖がこれから全国に広がっていきそうだ。
【LOVECROWN TOUR2024】は8月24日、バンドのホームである滋賀・B-FLATにてファイナルを迎える。
Text by 蜂須賀ちなみ
Photo by ミワカナコ
◎公演情報
【LOVECROWN TOUR2024】
2024年5月30日(木)東京・高田馬場CLUB PHASE
2024年6月14日(金)福岡・LIVEHOUSE OP's<単独>
2024年6月18日(火)茨城・LIGHT HOUSE<対バン>
2024年6月23日(日)大阪・BRONZE<単独>
2024年7月11日(日)京都・MUSE<対バン>
2024年7月17日(水)静岡・UMBER<対バン>
2024年7月18日(木)神奈川・F.A.D YOKOHAMA<対バン>
2024年8月16日(金)愛知・CLUBUPSET<単独>
2024年8月24日(土)滋賀・B-FLAT<単独>
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