2024/05/31 18:00
5月26日、大阪・オリックス劇場で、音楽イベント【佐藤竹善 Presents Cross your fingers 24】が開催された。
本イベントは、佐藤竹善がオーガナイズする、世代もジャンルも超えたコラボレーションライブとして1997年に始動。24回目の開催となる今年はスペシャルゲストに、ASKA、大黒摩季、Myuk、鈴木瑛美子が。そしてステージの音を支える、長年の相棒でもあるピアニスト・塩谷哲、パーカッショニスト・大儀見元、昨年に続きジュスカ・グランペールが出演。会場に集まった観客は唯一無二、珠玉の音楽やコラボステージを存分に堪能。貴重な一夜の模様をお伝えする。
ステージはまず、佐藤竹善と塩谷哲によるユニット・SALT & SUGARのステージから。SING LIKE TALKING初期の楽曲で、ファンからの人気も高い「心のEvergreen」を佐藤がピアノを、塩谷がピアニカを演奏するスタイルで披露。しなやかな佐藤の歌声は瞬時に観客の心を掴み、誰もがじっと前を見据え聴き入っている。次曲はジャズボーカリスト、アル・ジャロウの名曲「Boogie Down」を。ジャジーなピアノの旋律がステージの上で踊るようで、そこに佐藤のご機嫌な歌声が絡んでいく。性急に展開していくサウンド、弾むようなスキャットがリズムを生み出し、2人きりで大きなグルーヴを生み出していく。佐藤は「いろんなタイプの音楽が、シンプルな楽器で展開されていく。こういう音楽もあるんだって楽しんでもらえたら」と、イベントの楽しみ方を伝授すると、イギリスのシンガーソングライター、クリス・イートンの代表曲「Wonderful World」をプレイ。佐藤の感情豊かな歌唱はとにかく滑らかで美しく、塩谷の流麗なメロディがその世界をさらに美しく磨いていった。
続いてはインストゥルメンタル・アコースティック・デュオ、ジュスカ・グランペールのステージ。まずは佐藤とともに「She’s Leaving Home(ザ・ビートルズ)」で、彼の歌声をより立体的に魅せながら、旋律を紡いでいく。続いて、オリジナル曲「Red Legend」では「情熱を込めて演奏したい」という言葉の通り、ギターの高井博章、バイオリンのひろせまことが歌うように弦を弾き、音の世界を築き上げていく。バイオリンの音色は迫力もあり、ジャジーなギターとともに、タイトルにある紅く燃えるような音を描く。
同イベントでは毎回、佐藤イチオシの若手アーティストが出演しているが、今年は佐藤曰く「イベントスタート時(1997年)には生まれていなかったシリーズ」として、Muyk、鈴木瑛美子の2組の女性アーティストがゲストに登場。
まずはMyukのステージ。「ワン&オンリーの表現豊かな歌声」と佐藤が絶賛した、柔かく温かな歌声を響かせ、1曲目「魔法」から、“お墨付き”も納得のステージを披露していく。しかもこの日は大儀見、ジュスカ・グランペールとのコラボステージ。卓越した3人の音が彼女の歌声をより一層輝かせ、唯一無二の世界を作り上げていく。彼女自身も「素敵な機会、呼んでもらえて光栄」と、この日のステージがとにかく楽しみだったと嬉しそうに語る。「Arcana」ではさきほどとは一転、民族的な匂いが漂う楽曲のなか、丁寧に、そして情熱的に歌い上げ、多彩な歌声を響かせる。佐藤とのコラボでは、玉置浩二の名曲「メロディー」をジュスカ・グランペールとともに披露。深く胸に染みこむ歌詞、世代も性別も超えた2人の歌声は見事に絡み合い、観客は思わず感嘆の声をあげる。
「彼女の歌う姿にびっくりした! 声の発声も大したものだ!」と佐藤が絶賛したのは鈴木瑛美子のステージ。物語を紡ぐような詞世界が印象的な「カナリアの歌」では深くしなやかな歌声と、ジュスカ・グランペールの情景を思い描く美しい旋律に心が震える。たった1曲なのにまるでひとつの映画を見たような、濃淡の濃い世界観に観客は心酔しきり。かと思えば、コラボ曲には佐藤、塩谷、大儀見とともにビヨンセの名曲「Love on Top(ビヨンセ)」をセレクト。佐藤も「これを僕に歌わせるのか!?」とはしゃぎながら、エネルギッシュに、踊るように、情熱的な歌声を響かせる。開放感たっぷりなサウンドに鈴木は気持ちよさそうな表情を見せ、ラストのロングブレスもとにかく圧巻! 佐藤もそれにつられてか、全身を震わせるように存在感ある歌唱、コーラスを響かせ、彼女の魅力を一層引き立てていく。
「中高年のみなさん、盛り上がっていきましょう♪」、大儀見のラテンなパーカッションに誘われ、ハイテンションに登場したのは大黒摩季だ。1曲目は塩谷、大儀見とともに「熱くなれ~チョット~夏が来る~あなただけ見つめてる」と、誰もが知るヒットチューンを贅沢にメドレーで展開。ハイトーンボイスが美しく伸び、パワフルなパフォーマンスに観客は総立ちになって大盛り上がり。佐藤とのコラボではフォークデュオ・紙ふうせんの「冬が来る前に」を歌唱。楽曲は「パンチのある、ワイルドなシンガーがあえて歌う感じにしたかった!」と、佐藤がセレクトしたというが大黒自身も「新境地!」と語るほど、ハイトーンボイスはより艶やかに、しっとりと湿度を持った歌声となり、ベテランシンガーの新たな一面を見せてくれた。最終曲は佐藤も「良い曲だね~♪」と絶賛していた名曲「ら・ら・ら」。佐藤、ジュスカ・グランペール、そして観客の大合唱も加わり、今夜限りの贅沢な楽曲へと仕上げていく。大黒がコーラスをする姿も新鮮だし、まるでジャムセッションをするようなメンバーの遊び心満載の演奏も聴き応えたっぷり。
ゲストアーティスト、最後のステージはASKA。佐藤は「僕にとって金字塔のような人。影響も受けたし、とにかく釘付けになった。そして今も大きな成熟、成長を遂げている人」と、ASKAに心底惚れていると語る。ASKAも「声は人を現す。竹善は優しい、“染める”声を持っている」と絶賛。2人は名曲の制作秘話や昔話にも華が咲き、まるでラジオ番組のようにここでしか聴けない貴重なトークもたっぷりと披露してくれた。
ライブではアコースティックギターで「帰宅」を、塩谷のピアノとともに。伸びやかな歌声は第一声で会場の空気を変え、唯一無二の歌声を響かせる。次曲は大儀見も加わり、名曲「SAY YES(CHAGE and ASKA)」を。塩谷のピアノの1フレーズだけで会場が沸き、サビの高揚感には思わず鳥肌が立つほどのヒット曲。観客はじっと前を見据え、力強い声を、琴線を震わすメロディを聴き漏らすまいと夢中でステージに見入っている。ASKAの歌声を際立たせる塩谷のピアノ、大儀見のパーカッションも素晴らしく、この日、この瞬間に立ち会えたことに誰もが心躍っただろう。
感動はそれだけで足りず、佐藤とのコラボでは「はじまりはいつも雨」を披露。稀代の名曲を2人の歌声で聴けるのは贅沢極まりなくて、囁くようにビブラートを効かせたASKA、高音のファルセットが心地よい佐藤の歌声。どちらも透明度が高く、でも優しくて力強くて。竹善は思わず「僕のためだけに2人でカラオケに行ったみたい……」と思わず唸るほどだ。
イベントの最後を締めくくるのはSALT & SUGARのライブ。「処女航海’99」では作曲を担当した服部克久、作詞のなかにし礼との思い出を語りつつ、パリジャンな雰囲気を漂わせたオシャレなサウンドでプレイ。言わずもがな、息ぴったりな佐藤と塩谷のステージはとにかく楽しくて、続く「Blackbird(ザ・ビートルズ)」ではそこに大儀見も加わり、大きなグルーヴを作り上げていく。
本編最後、佐藤は「いろんな音楽があって楽しい。ジャズもクラシックもポップもロックも、全部ただの“音楽”になっていくことに幸福感がある」と語り、今年ソロ活動30周年に向けて、より一層精力的に活動していきたいと意欲を語る。そして最後に語ったのは、昨年逝去したKANへの想い。同イベントはもちろん、共演も多かった佐藤。「このイベントらしく送りましょう」とKANの「よければ一緒に」、「カレーライス」をダイジェスト版で届ける。時折天を仰ぐように歌う佐藤の姿も印象的で、彼のリスペクトするアーティスト、そして音楽への愛をひしと感じることができた。
「今回も今までとは違う、ワン&オンリーな特別な一日になりました。個性のある色がキャンバスにのり、ひとつの絵になったよう」とイベントを振り返り、アンコールは出演者全員でイベント恒例のエンディング曲「星の夜(塩谷哲)」を。塩谷、大儀見、ジュスカ・グランペールの演奏は子守歌を歌うように優しくたゆたうように響き、名ボーカリストたちの歌声をより一層輝かせる。佐藤が信じ、選び抜いた本物の音楽に満ち溢れた一夜は、最後の一音まで多幸感に満ちていて、3時間にわたって繰り広げられた宴は大団円で幕を閉じた。
なお、この日のライブの模様は6月15日、FM COCOLOの番組『Whole Earth RADIO』で特集番組として放送を予定している。
TEXT:黒田奈保子
PHOTO:井上嘉和/翼、
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