2024/05/24
タイから登場した男女ユニット、SERIOUS BACONがニューEP『DINNER IN TOKYO』をリリース。シティポップを思わせるノスタルジックなサウンドに乗せて、初めて挑戦した日本語曲で、ほのぼのとした優しい歌声を披露する。来日中には代々木公園で開催された恒例の【タイ・フェスティバル】に出演。また、東京・代官山SpaceOddでは自身のヘッドライナー公演を開催した。公演の翌日に二人と対面。グループ結成のきっかけから、日本語で歌おうと思った理由や日本での初ライブの感想、日本のアーティストについてまで、たっぷりと語ってもらった。
左からMuang、Cake
ーー【タイフェス】と昨夜の単独ライブを観せてもらいました。両日ともに大変盛り上がっていましたが、お二人の感想は?
Cake:まずは初めての来日公演だったので、すごく緊張していました。「SERIOUS BACONのことを知っている人が本当にいてくれるのかな」と不安だったのですが、会場にはたくさんのファンの皆さんが来てくださりました。なかにはSERIOUS BACONのネームボードを持っている人もいて、すごく嬉しかったです。
Muang:【タイフェス】には他の出演者もいましたが、単独ライブの方は「自分たちのライブを観に来てくれる人がいるのかな」と心配していたので、一緒に歌ってくれる人たちがたくさんいて安心しました。日本の人たちと、日本に住んでいるタイ人、それにわざわざシンガポールから来てくれたファンもいて、すごく嬉しかったです。
ーー今回は5人編成のバックバンドがサポートされていましたが、普段からライブではバンドを率いているのですか?
Muang:はい、このバンドとは、3~4年タイで一緒に活動しています。キーボードの女性が大学の友達だったり、各メンバーが他のバンドでも活動していたり。でもSERIOUS BACONとしては、メンバーが少ない方が話が早いので、もともと二人だけという発想でスタートしました。今回、一緒に来日したCopter(コプター)さんが自身のバンドを連れてこれなかったので、私たちのバンドが彼のバック演奏も務めていました。
ーー初めてのインタビューなので基本的なところから教えていただきたいのですが、まずはSERIOUS BACONというグループ名の由来から教えてください。
Cake:友人と「何かカッコいいバンド名はないかなぁ」と話していた時に、「矛盾している2つの言葉を組み合わせれば?」というアイデアを思いつきました。他にも候補はたくさんあって、なかにはDying Wagyu(和牛)なんていう名前もありました(笑)。でも最終的に落ち着いたのが、このSERIOUS BACONという名前です。
ーーファンからはどう呼ばれていますか?
Muang:SERIOUS BACONと呼ぶ人が多いですが、短縮してベーコンとか。
Cake:シリベーと呼ばれたりも(笑)。
ーーライブを観て、お二人がとても仲良しなのが伝わってきました。二人とも同じ大学に通っていたそうですが、どのように出会って意気投合したのですか?
Cake:私の方が2年、学年が上なのですが、同じ学部に所属していました。毎年、学部として学園祭のようなイベント時にパフォーマンスを行っているのですが、そのミュージカルで私が音楽を担当。新入生だった彼も音楽に興味をもっていたので、一緒に手がけるようになりました。
ーーお二人の音楽的な共通項というのは、すぐに見つかったのですか?
Muang:正直あまり考えたことがなくて(笑)。でも、強いていえばポップというのが共通項ですね。二人に共通しているのが、ポップ系の音楽が好きということ。でも、それ以外は、それぞれ違ったジャンルの音楽を好きで、かなり違っています。
Cake:私は、どちらかというと分かりやすいポップスが好きで、あまり幅広いジャンルの音楽を聴いてきたわけではありません。一方で、彼の方はさまざまなジャンルを聴いてきた上で、音楽を制作しています。その二人の異なる個性が融合されているように思います。私の作詞は分かりやすくて、馴染みやすいことを念頭に、彼は少し複雑で多彩な要素をサウンドに持ち込んでくれます。この二人のバランスがSERIOUS BACONの現在のサウンドではないかと思います。
ーーたとえば、どのようなアーティストに影響を受けてきましたか?
Muang:僕は基本的にギターサウンドが好きなので、ジョン・メイヤーやThe 1975などが大好きです。日本のアーティストだとONE OK ROCK、X Japan、カシオペアなどが大好きです。
Cake:私はアーティストというよりも、ドラマの挿入歌などに影響されてきました。タイのドラマや、海外ドラマ、韓国ドラマ、その中で悲しいシーンになると、いつも流れてくる曲がありますよね。そういった視覚的なインプットに影響されることが多いようです(笑)。
ーー日本ではシティポップ風と紹介されることが多いSERIOUS BACONですが、そのあたりは意識的に取り入れていますか?
Muang:シティポップはもちろん大好きですが、他のジャンルの音楽も取り入れているので、シティポップだけを取り入れているわけではありません。たとえばビートがトラップ風だったり、ジャズっぽい要素を取り入れたり。いろんなジャンルを混ぜ合わせているので、シティポップ100%ではないと思います。でも、なぜかシティポップ風に聴こえるんですよね。それは確かだと思います(笑)。
ーー聴いていて、とても心地良くてアットホームな感じがします。どのような点に拘りをもっていますか??
Muang:サウンド面に関しては、ギターとピアノのコード進行を重視。あとはボーカルの心地良さ、聴きやすさですね。イージーリスニング的なサウンドを心掛けています。そこに他の要素を加えつつ、SERIOUS BACONらしい特徴あるサウンドを作りたいと思っています。
ーー色彩に例えるとニュートラルというか、あまりギラギラしていたり原色ではないイメージですよね。
Muang:そうですね、どちらかというと。特にスタジオバージョンのこれまでにリリースしてきた楽曲は、どれも心地良くて繰り返し聴けるようなサウンドが多いと思います。逆にライブでは、ビートを速くしたり、少しアグレッシブな演奏で盛り上げることを心掛けています。
ーーリリースされたばかりのニューEP『DINNER IN TOKYO』では日本語曲にも挑戦されています。そもそもなぜ日本語で歌おうと思われたのですか?
Cake:以前にもプライベートで日本に来たことがあるのですが、その頃から「日本語で歌ってみたい」、「日本でライブをしたい」という気持ちが、なんとなくありました。同じレーベルの先輩Ink Waruntornさんが日本で活動をしているのを見て、「私たちにもできないだろうか」とレーベルに相談をしてみたら、「チャレンジしてみれば」と後押ししてくれて。その後、タイフェスへの出演が決まり、「じゃ日本語EPを出そう」という話になって、とんとん拍子で進みました。
ーー日本語で歌うのは難しくないですか?
Muang:はい、とても難しいです(苦笑)。
Cake:日本語の読み書きができないので、レコーディングの時には、日本人のスタッフに監修してもらいました。ちゃんと発音が正しく聴こえるかなどをチェックしてもらい、確認しながら制作しました。
Muang:だから、いつもよりレコーディングに少し時間が掛かりましたが。
ーー日本語バージョンもある「I (don’t) miss you」という曲では、どのような心情が歌われていますか?
Cake:一見ハッピーそうだけど、泣きながら歌っている、そんな感じの曲です(笑)。別れたばかりでまだ未練があり、内心まだ吹っ切れてはないけれど、精一杯ハッピーなふりをしている、そんな矛盾した心情の曲です。曲調だけ聴くとすごく楽しそうですが、歌詞を聴けば、すごく落ち込んでいるんです。そんなギャップが面白いと思っています。
ーーこの曲のミュージック・ビデオは、日本で撮影されていますよね。
Muang:4月に【タイフェス】関連のイベントで来日した時に撮影しました。せっかくなので日本の雰囲気を捉えたくて。
ーー近代的な東京ではなく、ノスタルジックな雰囲気の映像で、Y2Kや昭和っぽいのがユニークでした。
Cake:ちょうど桜が咲いていた時期だったので、桜もたくさん撮影しました。昔の曲や映画などが大好きで、よく観ているので、そんなバイブスがあるんじゃないかと思います。映像の編集を手掛けたスタッフも、そうしたノスタルジックな雰囲気を意識していたので、いっそうビンテージ感が増したのだと思います。
ーー昨年リリースされたタイ語の「Best Friend 4Ever」のミュージック・ビデオも、日本語を使ったり日本的な要素が満載されていましたよね。そちらはタイで撮影されていた?
Muang:そうなんです。タイの大学という設定で撮影しました。監督が日本のアニメや漫画が大好きで、学園ストーリー的なビデオを撮らないかというアイデアを出してくれて、僕たちも漫画やアニメが好きなので日本風に作りました。曲にも合っていたし、剣道みたいなことをやってみたり。楽しそうな雰囲気のビデオになりました。
ーーEP『DINNER IN TOKYO』のCDジャケットの帯に、SERIOUS BACONと日本語で書かれていますが、縦書きなのに長音記号が横書きの“ー”になっています。もしかしてあえてそうしたとか?
二人:えっ~~それは全然知らなかった!(と驚いて口をあんぐり)
Cake:ジャケットをデザインしてくれた担当者が、横書きの文字をそのまま縦に並べたから(笑)。でも、ちゃんと文字は読めます?
ーー全然読めますよ。海外の人が日本風に作ってくれたのが分かって、それはそれでクールだと思います。
二人:あー良かった!(笑)。
ーー「I (don’t) miss you」をはじめ、EPに収録されている他の日本語曲の「メガネを作って(Blurry Eyes)」や「聞きたくない(Say No More)」も、あまりハッピーではない歌詞が多いですよね。
Cake:ファンにもよく言われます。1stアルバム『Are You Serious?』にしても、悲しい曲ばかり(笑)。だから今年はちょっと頑張って、ハッピーな曲を作ろうと考えているところです。
ーーでもライブでは終始ニコニコにしていて、微笑みながら歌っているのがとても印象的です。
Cake:、笑うのが好きだから…というか性格ですね。あと歌っている時に、オーディエンスが手でハートマークを作ってくれたりしたら、ついついニッコリしちゃうんです(笑)。結局いつも笑いながら歌っています。
ーー曲間のMCでも、二人が喋っているとまるでコントをやっているかのようで楽しかったです。
Cake:タイ人の性格によるところも大いにありますが、基本的に楽しそうな雰囲気のステージを作りたいと思っています。
Muang:盛り上がったり、楽しい雰囲気の方がいいかなというのはありますね。タイのステージでは、いつもダラダラ喋り過ぎたり、お客さんをいじったりしてるんです。でも、日本では言葉の壁もあり、そこまで今回はできませんでしたが(笑)。
ーー焼肉が大好きとライブでも仰っていましたが、お二人とも?
Muang:そうですね。子どもの頃から(笑)。(日本語で)焼肉が大好きです(笑)。
Cake:ミュージック・ビデオの再生回数が100万回を超えたら、ご褒美に焼肉の食べ放題に行こうとか。そういう目標を決めています(笑)。
ーー日本でも焼肉をたくさん食べられたそうですが、他にも何か印象的だったことはありましたか?
Muang:僕は日本の人たちの礼儀正しいところに感心させられました。USJやディズニーランドのような人混みに行っても、ちゃんと列を作って、物事が整然と行われている。タイだったら、絶対メチャクチャですね(笑)。ちゃんとみんながルールを守っているのに驚かされましたし、感心させられました。
Cake:私は大阪が凄く印象的で、前回、大阪に行った時に大好きになったレストランがあったので、また行きたいと思っています。食べ物が大好きなので、とにかく日本は全て美味しいです(笑)。
ーーEPのタイトルも食べ物に因んでいる? 『DINNER IN TOKYO』ですし(笑)。
Cake:はい、このタイトルは、日本で晩御飯を食べたりした時の素敵な感じを思い出しながら付けました。居酒屋の雰囲気などを、思い出しながら。日本らしいタイトルを付けたいなと思って。
ーー最後に今後の予定を教えてください。
Muang:ちょうどいま、2ndアルバムの制作を進めているところです。歌詞はかなり出来ているので、あとは完成に向けて頑張ります。次の目標としては、今後はタイ以外での活動も増やしていきたいと思っています。ストリーミングサービスなどのデータをチェックして、僕たちの音楽を聴いてくれるファンがどこにいるのか確かめて、活動の幅を広げていきたいと思っています。もちろん日本での活動も積極的に行いたいです。日本のアーティストとの共演も、いつかできるといいですね。今回発見したのが、Ayumu Imazuというアーティスト…(と歌い始める)
Cake:それそれ、「Obsessed」ね。大好き。
Muang:あまり聴いたことのない感じの曲なので気になりました。日本のアーティストはダイバーシティに富んでいて、バラエティ豊か。それぞれが異なる独自の音楽性、ジャンル、スタイルを持っていると思います。聴いていて、すごく面白いと思います。
ーー今日はどうもありがとうございました。
二人:こちらこそ、ありがとうございました。
Interview&Text by 村上ひさし
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