2013/07/10
現代のベートーヴェンと呼ばれ、アルバムが社会現象になるほどヒットし続けている佐村河内守氏の交響曲第1番≪HIROSHIMA≫ の全国ツアーが始まり、東京公演が7月6日東京芸術劇場にて行われた。
7月6日は東京初日を記念し、追加演目としてヴァイオリニスト二村英仁と、ピアニスト佐藤彦大によって、佐村河内守作曲の「ヴァイオリンのためのソナチネ 嬰ハ短調」が演奏された。この曲は、もともと先天性四肢障害で生まれた少女(大久保美来さん)の為に作曲された約9分間の作品。「ユネスコ平和芸術家」として国内外で活躍する二村のヴァイオリンが誇り高く、情熱的に響き渡った。
15分間の休憩を経て、いよいよ交響曲第1番《HIROSHIMA》へ。フルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットがそれぞれ3名に、ホルン8名、トランペットとトロンボーン3名、チューバ1名に打楽器5名、さらに多数の弦楽器にハープとチェレスタが加わった東京フィルハーモニー交響楽団による大規模な編成で、ロシアの指揮者アレクサンドル・アニシモフを指揮者に迎え、壮大な旅が始まった。
この作品が、奇跡のシンフォニーと呼ばれているのは、第三楽章の残り数分間で突然やってくる圧倒的な光だ。両耳が聴こえないだけでなく、常にボイラー室に閉じ込められているような轟音が頭に鳴り響く頭鳴症や耳鳴りという何重もの苦難を抱えながら、音を一つずつ探し出し、内側から生まれる真実の音だけで紡がれた音は、この世のものとは思えないほど慈愛に満ちていて、天上から降り注ぐ光のシャワーのようだった。
ただ、そこに行き着くまでは、耳鳴りのように不穏なティンパニーや、突然 嵐のような激しさをもつ低弦、絶望的な不協和音、雷鳴のように轟く金管楽器など、悲憤や苦悩に満ちている。時折登場する物悲しい弦や、敬虔な木管のアンサンブルは、佐村河内氏自身が「人は闇の中に長くいると小さな光の尊さに巡り合える」と述べたように、一筋の光のように輝いて聴こえる。だが、手のひらにすくった泡がすぐに消えてなくなるように、またすぐに暗雲に満ちた闇に突き落とされる。その繰り返しの果てに、やっとの思いで奇跡のように美しい音楽が登場するのだ。甘美な旋律に、「また消えてなくなるんじゃないか」という不安を抱き、そして、その美しさが不動のものと確認できた瞬間、こんなに美しい音楽がこの世の中にあったのかという感動で満たされるのだ。最後は、アレクサンドル・アニシモフが力強く振り上げた指揮棒ともに、最後の鐘“希望のカリヨン”が何度も鳴り響き、東京フィルハーモニー交響楽団の全身全霊の演奏で幕を閉じた。
割れんばかりの拍手とともに、客席の後方で見届けていた佐村河内氏もステージへと登壇し、客席のみならず、何度もアレクサンドル・アニシモフと、東京フィルハーモニー交響楽団へお辞儀を繰り返した。クラシック音楽の歴史に大きな1ページを刻むことになった、この作品と同じ時代に生きていられた事に喜びを感じ、作曲家と同じ空間で聴くことができるということを、心から幸せに思えた夜だった。
◎ツアー情報
公演日:
2013年
7月6日(土)東京芸術劇場 コンサートホール 1日2回公演
7月11日(木)愛知県芸術劇場 コンサートホール
7月21日(日)横浜みなとみらいホール 大ホール
9月16日(月・祝)熊本県立劇場 コンサートホール
10月26日(土)サントリーホール 大ホール
11月24日(日)神戸国際会館 こくさいホール
12月1日(日)横浜みなとみらいホール 大ホール
12月14日(土)東京芸術劇場 コンサートホール
12月19日(木)京都コンサートホール 大ホール
12月28日(土)広島文化学園HBGホール(広島市文化交流会館)
2014年
2月2日(日)岡山シンフォニーホール 大ホール
2月23日(日)長崎ブリックホール 大ホール
3月22日(土)アクロス福岡シンフォニーホール
4月6日(日)愛知県芸術劇場 コンサートホール
4月11日(金)東京エレクトロンホール宮城 大ホール(仙台)
4月13日(日)群馬音楽センター
4月16日(水)札幌コンサートホール Kitara 大ホール
4月25日(金)静岡市民文化会館 大ホール
4月27日(日)サントリーホール 大ホール
5月10日(土)所沢市文化センター ミューズ アークホール
※2013年7月10日時点
指揮:
アレクサンドル・アニシモフ ※2013年 7/6東京(昼、夜公演)、7/11名古屋、12/19京都
金聖響
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