2024/03/25
忘れらんねえよが、一夜限りのスペシャルライブ【爆音ビルボード】を2024年3月15日にビルボードライブ東京で開催。2ステージにわたり最高の音楽仲間たちと爆音を奏で、観客とともに六本木の夜景を満喫した。この記事では2ndステージの模様をレポートする。
このライブは、忘れらんねえよが2023年12月にリリースしたニューアルバム『いまも忘れらんねえよ。』の発売を記念して、トリビュート・プロジェクト「忘れらんねえよを歌ってみた」参加アーティストとともにお届けするというもの。忘れらんねえよとして初めてのビルボードライブ公演がどんなものになるのか、ますます予測不能となり期待が高まった。
粋なBGMと、観客が鳴らす食器の音が響く洒落た空間で、静かに開演を待つ。普段のライブハウスで見かける、グッズのTシャツを着ている人の姿も見当たらない。しかもタイトルは【爆音ビルボード】。ミッドタウンで爆音など許されるわけがない。六本木という土地柄もあり緊張がMAXに達したその瞬間、大音量でクリスタルキング「大都会」が流れ出して、バンドの面々が客席に姿を現した。トレーナーを着た柴田隆浩(Vo. / Gt.)と、スーツスタイルのロマンティック安田(Gt.)、イガラシ(Ba.)、タイチサンダー(Dr.)。柴田とサポートメンバーというよりは、今やすっかりおなじみとなった、今の忘れらんねえよだ。
「みなさん、ミッドタウンまでやってきたんですね。ようこそ! こんばんは、忘れらんねえよです!」と優しく客席に語り掛けた柴田は、いつも通り観客とのコール&レスポンスから、「これだから最近の若者は最高なんだ」でライブをスタート。タイチの躍動するドラム、イガラシのゴリゴリなベース、安田の鋭いテレキャスターの音に包まれて、溌溂とした柴田のボーカルは太く真っすぐ伸びていく。明るいポップロックに乗せて純粋な心を歌う「バレーコードは握れない」では、演奏を止めると〈ラララ…〉とコーラスする観客の声を1つにまとめるように、柴田が高らかに歌い上げた。「出てますね~、声が! 伸びやかにやらせてもらってます、ありがとう! 俺はいろんな場所でライブをやってきたんですけど、毎回、この街には君がいない!」と曲に繋いで、ライブアンセムの1つ、爆速ショートチューン「この街には君がいない」へ。突き進むタイトな演奏と柴田の力強い歌声、曲の終わりにはタイチのバスドラ連打が気持ち良い。
安田がギターを鳴らしだすと、柴田は「どこかで聴いたことのあるイントロですね。「バンドやろうぜ」じゃないですかこれは。でもアレンジがちょっとカッコイイですね。スペシャルゲスト1組目、呼んでいいですか!?」と、「バンドやろうぜ」をカバーしたネクライトーキーのもっさ(Vo.)と朝日(Gt.)を呼び込む。柴田を挟む形でステージに上がると、そのまま安田のギターに合わせてもっさが歌い出す。独白するような歌い回しから、サビでバンドが雪崩れ込んできて、柴田ともっさがハーモニーを聴かせると、間奏では朝日が幾何学的なフレーズで喝采を浴びた。バンドのキメも連発して〈さあバンドやろうぜ〉と全員で合唱。さらにもう1曲、「CからはじまるABC」に突入すると、オーディエンスはこぶしを突き上げ、ハイテンションでハンドクラップして盛り立てる。怒涛のラウドサウンドが、ステージフロアのテーブル席から上のカジュアルエリアまで駆け上がっていき、すっかりビルボードライブという会場が地下室のライブハウス状態と化して、もっさ&朝日はステージを降りた。
結束の強さを感じさせる演奏で聴かせた「俺よ届け」では、柴田が「歌えー!」と促すと〈絶対 俺変わったりしないから〉と、客席から大合唱がステージに向けられる。客席を見るといつの間にか、忘れらんねえよのロゴが描かれたTシャツ姿になっているお客さんも。スマートカジュアルなウェアの下に着こんでいたとはさすがだ。
柴田はハンドマイクを持ってステージ前に出ると、「あんたらも、あんたらも! 引きこもりなんでしょ、どうせ!」とテーブル席のお客さんたちを挑発しながら、「踊れ引きこもり」を歌い出す。これほど柴田とファンが一致団結できる曲がかつてあっただろうか。引きこもりの、引きこもりによる、引きこもりのためのバイブル・ソング。そんな曲が今、会場を支配している。そしてスローパートを歌い出すと、2組目のスペシャルゲスト、オメでたい頭でなにより・赤飯(Vo.)が客席を経由してステージに上がる。彼らの楽曲「オメでたい頭でなにより」を挟んでから再び「踊れ引きこもり」に戻って歌い終えると、赤飯は「こんな素晴らしいステージに上げてもらって。客席には絶対行かないぞと。だってビルボードライブですよ!?」と、いきなり客席に乱入してしまったことが自分でも信じられない様子。そしてもう1曲、「真っすぐな歌詞ってあんまり好きじゃないんですけど、柴っちゃんの歌詞って真っすぐ歪んでるんですよ(笑)。でもそれが自分にはスッと入ってきて。これから歌う曲は、柴っちゃんだからこその歌詞だから、一発で大好きになりました」と赤飯が歌ったのは、バラード曲「世界であんたはいちばん綺麗だ」。その熱唱ぶりに、一番を歌い終えると大きな称賛の声がステージに向けられた。二番は柴田が歌い、最後は2人で声を重ねて、赤飯の大シャウトで締めくくった。
赤飯と入れ替わりで登場したゲストは、柴田と同じ事務所オフィスオーガスタ所属のNakamuraEmi。かつてNakamuraの曲を聴いて泣いたという柴田が、「歌詞を聴いてほしい。大好きな歌です」と紹介したのは、Nakamuraの「台風18号」。2人で椅子に腰かけて、Nakamuraから柴田へと歌い継ぐ。漂うようなサウンドに寄り添われて、徐々に熱を帯びてくるNakamuraの歌声が、遠くまで飛んでいく。その声を柴田のハーモニーが追いかけて、しばし呆気にとられたように聴き入ってしまう。続いてはNakamuraがカバーしている「犬にしてくれ」。哀しさよりも爽快なドライブ感が際立った歌と演奏で、後半のセリフはNakamuraが担当するなど、以前からサウンドチェックでも歌っていたというこの曲への思い入れが感じられた。Nakamuraを送り出すと柴田は、「すげえな、ミュージシャンって! それぞれカラーがあって」と呟いた。
「俺、ライブで歌うっていう行為がめちゃくちゃ好きなんだよ。マジで生きててよかったと思うし、生きてる理由なんだなって。今日の1stステージも歌っててめちゃくちゃ気持ち良かったし、ちょっと喉を使いすぎたかなと思っても、2ndステージが楽しみだから、やっぱり声が出るんですね(拍手)。本当に生きる理由なんだよ。だから、この場にいてくれて見てくれて、ありがとうございます」
ギターを爪弾きながら「アイラブ言う」を〈アイラブ言う 慣れないミッドタウンに頑張ってきたおまえらが 好きだと言うのさ〉ともじって歌い出した柴田に拍手喝采で、曲が始まると会場全体で大合唱となった。続く「この高鳴りをなんと呼ぶ」が始まると、ステージバックのカーテンが開いて、六本木の夜景を従えて演奏する4人。柴田は曲中に振り返ると、「めちゃくちゃ綺麗だな!」とビルボードライブのステージならではの光景に歓喜。メンバーを紹介した間奏明け、〈最後の言葉を探してる〉と歌う箇所を観客に委ねる熱いシーンも。「最後の歌です!」と歌い出したのは、1stアルバム『忘れらんねえよ』収録の「サンキューアイラブユー世界」。意外な選曲だったが、ボーカルの強度の変化を如実に感じられる歌声でもあった。
アンコールでは、4月、5月の3日間で【「全曲LIVE」~忘れらんねえよの曲ぜんぶやる~】の実施を発表。このライブでは、既存の97曲に加えて3日間で1曲ずつ新曲を歌い、合計100曲を歌うという。新たなチャレンジの発表は、大きな拍手で歓迎された。【爆音ビルボード】の最後はパンクチューン「北極星」。後半のレゲエパートから、場内の照明を落とし真っ暗にして夜景を鑑賞するロマンティスト・柴田。「今、何人のカップルが同じ夜景を見てるんだろう。タイチ、この闇を切り裂いてくれ!」と声を掛けると、タイチが「今日はありがとうございました! 1、2、3、4!」とカウントして明転。最後の爆音を鳴らしてステージと客席が一体となりエンディングを迎えた。
いつも以上にいつもの忘れらんねえよらしい歌と演奏、ゲスト3組の個性溢れる熱演、そしてお客さんの大合唱と手拍子が混然一体となった【爆音ビルボード】。大都会・六本木の夜景にエモーショナルさで圧勝した忘れらんねえよだった。
Text:岡本貴之
Photo:Masanori Naruse
◎公演情報
【忘れらんねえよ「爆音ビルボード」
2024年3月15日(金)東京・ビルボードライブ東京
【忘れらんねえよ 「全曲LIVE」】
2024年4月28日(日)東京・下北沢 近道
2024年5月1日(水)東京・下北沢 QUE
2024年5月3日(金・祝)東京・下北沢 近道
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