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2024/03/08

<ライブレポート>MAISONdes、2ndライブでasmi/花譜/水槽らが“内覧者”を物語へいざなう&シークレットゲストにハローキティも登場

 新進気鋭のアーティストとクリエーターを架空の六畳半アパートの住人に見立て、コラボレーション楽曲を発表するプロジェクト、MAISONdes。2021年2月の始動以降、斬新かつ魅力的なタッグによる楽曲リリースを続け、ヒットソングも多数生まれている。

 そんな“住人”たちが会するライブイベント【MAISONdes LIVE #2】が、2024年3月2日、3日と東京・TOKYO DOME CITY HALLにて開催された。2回目となる同イベントは、初ライブからさらに規模を拡大。最終日では新たな展開もアナウンスされ、“世界で一番広い六畳半”のポテンシャルを印象付ける一夜となった。

 前回はステージに家具などを置いてアパートの1室に見立てていたが、今回はアパートそのものを模したセットが組まれた。上下2段は階段でつながり、下段にはバンドメンバーのスペースを含む4室、上段には3室とバルコニーが設置される。部屋を隔てる枠と背景にはLEDモニターが組み込まれ、洗練された映像効果で“内覧”に来た我々を巧みに楽曲の物語へといざなった。

 アパートの“管理人”による出迎えの後、上段の部屋の扉を開いて「ただいまー!」と意気盛んに登場したのはasmi。「ひな祭りやし、みんなでお祭り騒ぎしていきましょう!」と続け、「アイワナムチュー」で華々しくこの日の口火を切った。

 前回に引き続き、ストリーミングサービスのプレイリストのようにほぼ休みなく次々とボーカリストが登場して自身の担当楽曲を披露する。空音とmeiyoはラップとツインボーカルが効いた「infinite」で観客のテンションを上げ、缶缶は「もういいもん」で情熱的な歌声で聴き手の心を揺さぶった。

 六畳半のアパートは“思いのままに楽しめるひとりの空間”であり、ゆえに“悶々とした感情が膨れ上がる空間”にも成り得る。LEDモニターをフル活用したセットは、一気に心理描写にフォーカスした映像に切り替わった。ステージ一帯がメッセージアプリの吹き出しで埋め尽くされると、はしメロが不安や焦りを等身大で突きつける「けーたいみしてよ」、むトのセンチメンタルで甘酸っぱい声が複雑な恋心を彩る「トラエノヒメ」と、若者のリアリティに富んだ恋愛観が押し寄せるセクションへ。「わかっちゃない」を歌唱するあたしは下段の部屋のカーテン越しに現れ、歌詞の一言一言に感情をねじ込む。さらに曲中でカーテンを開けてステージ前方までせり出し、全身を振るわせて力強く歌い上げると、観客もそれを大いに歓迎した。

 水槽は小気味よいリズムに乗って「ダブル・プッシュ・オフ。」を躍動感と情感たっぷりに、相沢は涙を滲ませるようなハイトーンボイスで「湿っぽいね」を瑞々しく彩ると、「いらっしゃい」という言葉とともに現れたのはパジャマ姿のくじら。彼が鬼気迫るパフォーマンスと切実な歌声で訴えかけた「本当は夜の端まで、」で観客を圧倒すると、アパートの外には雨が降り、場面は雨のコンランドリーへ。さとうもかとくじらが「For ten minutes, for a hundred yen」をツインボーカルで届ける。寂寥感と甘さが混ざり合った歌と演奏が、観客の心を優しくほぐした。

 六畳半の部屋には大勢の友達を呼ぶことはできないが、大切な誰かとふたりで親密な空気を育むことができる。夕焼けに染まった室内がステージに広がると、4naとネクライトーキーのもっさが「ダンボールの色」で新しい旅立ちを甘酸っぱく描き、続いてりりあ。が「夏風に溶ける」を歌唱する。モイスチャーな彼女の声はこちらにまで吐息のぬくもりが届くようで、自分がこの部屋の住民であると錯覚に陥るほどだった。

 れんが気品のあるビターな声で「bathroom」の歌詞の世界に奥行きを作り、彼が去るや否やスマートフォンの着信音が入り乱れるとPiiとmeiyoによる「ラリー、ラリー」へ。ふたりはアパートの上段と下段でアイコンタクトを取りながらツインボーカルを響かせ、会場を軽やかに巻き込んだ。

 するとアパートの外に様変わりしたステージには、スペシャルゲストとして次回の入居者であるハローキティが登場。楽曲制作は「人マニア」などでも知られるトラックメイカー・原口沙輔が手掛けること、共に歌唱を担当するボーカリストは後日発表されることを告知した。同コラボレーションの“部屋番号”は1101号室とのこと。プロジェクト始動から4年目に入り、とうとうアパートの階数も10階を超えたことも、新しいフェーズへの突入を象徴していた。

 ここからライブはラストスパートへ。花譜が歌でポップなリズムを作り出す「トウキョウ・シャンディ・ランデヴ」でパワフルに会場を盛り上げ、はしメロが疾走感のあるロックサウンドに乗せて「ロックオン」で鮮やかな高音を響かせると、ステージは再び白昼のアパートへと戻りトップバッターを務めたasmiが現れる。

 MAISONdesに参加したことがきっかけで多数の新しい経験に恵まれたasmiは「つらいときこそMAISONdesの音楽がみんなを救ってくれると信じています。それでも救われなかったら、今日のことを思い出してください。みんなの明日からの日々が、少しでも強くなるように」と告げ、ヒット曲「ヨワネハキ」で2日間の祭典を締めくくる。感謝を込めるように歌うその声に、観客たちは熱い視線を送った。

 MAISONdesへの入居は各アーティストにとって、普段活動している自身のフィールドでは得られない刺激が多いと推測する。この部屋の中ならば、いつもより少し大胆になれるのではないだろうか。この日参加した全員がどこかリラックスしながら、それぞれの部屋を楽しんでいるように見えた。チームとは違う、同じ場所の違う部屋にいるという程よい距離感も、居心地の良さのひとつだろう。歴史を積み重ね、入居者が増えるのと比例して可能性を広げ続ける“六畳半ポップス”。今後どこまでこのアパートは増築し続けるのか、期待に胸が膨らむ。


Text:沖さやこ


◎公演情報
【MAISONdes LIVE #2】
2024年3月2日(土)、3日(日) 東京・TOKYO DOME CITY HALL

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