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2024/02/05

<ライブレポート>Maki、ツアー【清老頭】で届けた熱量と興奮「いつでもここに帰ってきてください」

 Makiが、1月21日に【Maki Tour 2023-'24「清老頭」】をZepp Shinjukuで開催した。

 思う存分笑って歌ってもみくちゃになりながら、拳を挙げてそこにある音楽を受け止める。そして、それぞれが自分の中にある何かを解放していくのだろうーーお客さんの表情を見ているだけで快哉を叫びたくなるようなライブがある。Makiはメロディも良いし演奏もカッコいいしステージに立っている3人には確かな存在感がある。が、同時にオーディエンスこそを主役にしちゃうような懐の深さがあり、だからこそこの音楽は遠くまで飛んでいくのだろう。この日の最後のMCで山本響(Ba./Vo.)は、「ライブを重ねるごとに(ボーカルよりも)みんなの声の方が大きくなっていった」と語っていたが、歌そのものが会場を飲み込んでデカくなっていくような興奮を覚えるライブである。

 【Maki Tour 2023-'24「清老頭」】。10月27日の千葉LOOK公演から始まった本ツアーも、全13箇所を周り、1月21日Zepp Shinjukuでツアーファイナルを迎えた。開演前からどっとお客さんが詰めかけ、会場には来るべき瞬間を待つ期待混じりの熱気が漂っている。そして、その空気はのっけから爆発することになる。

 「風」「文才の果て」と畳みかけると、あっという間にクラウドサーフが生まれ、ドライヴしていくベースが心地よい「シモツキ」で一層その勢いは加速していく。ギターのフレーズだけで心が持っていかれる「soon」は、それまでの熱量を引き継ぎながら素晴らしい演奏を聴かせた序盤のハイライト。「こんな大勢の人の前で演奏できて感慨深いです」。過去の恋を振り切っていく「春と修羅」を歌い、なんでもない日常を綴った「秋、香る」へと繋げていく。序盤は移ろう季節を切り取ったようなセットリストが印象的で、Makiの曲からはどことなく街の匂いを感じてしまう。

 それにしても、なんて開放感のあるライブなんだろう。「斜陽」では気持ち良いくらいにフロア中が飛び跳ねて、痛快なツービートで駆け抜けていく「ユース」、癖のあるギターフレーズが耳を引く「No. 11」で緩急をつけてきたと思ったら、ゆったりとしたテンポが心地良い「Lucky」ではお客さんが肩を組んで揺れている。山本はライブ中に何度も「ここがライブハウス!」と叫んでいたが、日常から生まれる楽曲と、日常と地続きにあるこの特別な空間をまとめて噛み締めるように声を震わせていたように思う。また、「泥にまみれた場所から始まったバンド」、「どんな会場でも変わらずに、泥にまみれたちっちゃいライブハウスでやってきたことしかやるつもりはない」という言葉には、彼らの自信と誇りが滲んでいた。

 「Toy box」を終えると、一瞬の静寂から「1997」へ。そう、この日一番のメロディが会場を包み込む。柔らかい音色と<星が綺麗な夜には 君の事を思い出す>というライン。夜気を感じさせるようなしっとりとした空気の中、山本響はもう会えなくなった友達のことを思い出すように歌い、佳大(Gt.)のコーラスが侘しい気持ちを掻き立てる。すると夜を明かしたようにスクリーンには青空が映し出され、うっとりするギターリフを聴かせる「Landmark」へ。ギターの音色は映像よりもずっと饒舌で、歌の情景を浮かび上がらせながらそのドラマ性を引き立てる。

 さて、ここで一旦ビールを飲んで小休止。放出したアドレナリンを、アルコールで補充しているのだろう。だが、ここで蓄えた燃料もあっという間に使うことになる。「こっから後半戦。ガチガチにやっていくのでよろしくお願いします」という言葉と共に「RINNE」のイントロが流れ出し、そのフレーズだけでフロアからは歓声が上がる。「いつでも飛び込んでこい。優しい気持ちで応えてやる」。衝動を抑えられなくなった人の波が、オーディエンスの頭上を流れていく光景が圧巻だ。爆発力と抒情性を伴った「RINNE」で導火線に火がつくと、「フタリ」、「銀河鉄道」と繋いで痛快なシンガロング。この辺はもうボルテージが上がる一方で、赤いライトがフロアを揺らす「嫌い」は、突き刺すようなボーカルと3人のソリッドな演奏が気持ち良い。終盤に演奏された「world’s end」は、それまでの雰囲気とは異なる90年代USオルタナを彷彿とさせる楽曲で、バンドのレンジの広さを感じさせた。

 あっと言う間の25曲である。「いつでも帰っておいで。どうしようもなく辛い、たまに泣きたい、たまに笑いたいと思ったら、いつでもここに帰ってきてください。命が尽きるまで歌っていようと思います」(山本)。そう、Makiのライブは「遊びにいく場所」であると同時に、「帰る場所」なのだろう。着飾るのではなく、心の鎧を脱ぐためのホーム。それが彼らにとってのライブハウスなんだと思う。最後は「ホームタウン」、「ストレンジ」、「平凡の愛し方」で本編終了。アンコールで登場した山本は、「メンバーが30代になる前に武道館ができたらいいな」とつぶやいていた。ふと思い浮かんだような何気ない話し方だったが、きっとそこにいた誰もがその光景を期待したに違いない。

Text by 黒田隆太朗
Phto by takeshi yao


◎公演情報
【Maki Tour 2023-'24「清老頭」】
2024年1月21日(日)
東京・Zepp Shinjuku

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