2024/01/22
Apple Musi Classicalが1月24日より、日本でスタートする。
本アプリは、Apple Musicの有料会員が追加費用なしで利用できる、クラシック音楽に特化したストリーミングサービス。北米とヨーロッパでは既にスタートしており、ウィーンフィルによるライブ音源が独占配信されるなど、500万曲以上の豊富な作品を楽しむことができる。今回、アプリの開発に協力したアーティストの一人であるヨーヨー・マにインタビューを実施。本サービスを通じて得た、新たな音楽との出会いについて話を聞いた。
ヨーヨー・マは、Apple Musicのサービス開始タイミングから、開発担当者に対して「クラシック音楽は、非常に探しづらい」とコメントしていたという。クラシック音楽は、他ジャンルと異なり、曲名、作曲者、演奏者(指揮者、オーケストラ、ソリスト)楽章、録音された会場、録音された年など様々な情報を保有している。また同じ作品を、数多くのアーティストが演奏していたり、国によって作品に通称(ベートーヴェン「運命」など)が付けられているケースもあり、検索しても知りたい情報にたどり着かないケースがほとんどだ。今回Appleでは7年以上の期間を費やし、5,000万以上のデータポイントを用いて、500万曲をスムーズに検索、視聴できることを実現した。
ヨーヨー・マ自身にも、アプリを通じて新たな音楽との出会いがあったようだ。「来日前に、録音をしていたのですが、そのうちの1曲は1966年に作曲されたロシアの作品でした。1966年というのは、冷戦中のソ連だった時代です。そのため作曲家は、聴衆のために真実を伝えながらも、国からの検閲や監視からどうやって生き残っていくかを考えなくてはいけませんでした。その楽曲をApple Music Classicalで検索したところ、実に63もの録音が残されていることを知り、様々な解釈を聴くことができました」
「冷戦中という時代の中で作曲家がどう感じ、何を表現したかということを知るということは、極めて重要なこと。なぜなら、戦争のあとには皆が“このようなことは、もうあってはならない”と思うからです。いま世界中が厳しい状況に置かれていますが、同じことを繰り返さないために、権威や政治に対してどうアクションしてきたのか、人々が生きた歴史を知ることはとても大切です」
また、今回のアプリでは豊富なカタログが最高音質(最大192kHz/24ビットのハイレゾロスレス)で視聴でき、一部の楽曲はドルビーアトモスによる空間オーディオで楽しむことができる。ヨーヨー・マが初めてグラミー賞を受賞したバッハ「無伴奏チェロ組曲」も、1983年のリリースから40周年を記念して空間オーディオで配信されている。
「当日28歳だった1983年の録音というのは、当時における私の理解力を示しているだけではなく、40年前に社会がこの作品をどう捉えていたかについても知ることができます。私だけではなく、社会がバッハの音楽をどう捉えていたのか、そういう視点で聴くと、また異なった奥行きで楽しんでいただけるのではないでしょうか。好きな本や映画というのは、10歳で出会った時と20歳とで違う感想を抱きますよね。バッハ「無伴奏チェロ組曲」は、私にとって最高の友人の一人のような存在です。」
4歳でチェロを始めてから60年以上もの間、演奏家としての道を歩み続けているヨーヨー・マ。レコードからストリーミングまで、目まぐるしく変化した環境は、彼にとってどのような影響を与えているのだろうか。
「音というのは、空気中の分子を動かすものであり、エネルギーの量は分析し数値化することができます。一方、音楽は自分の感情に触れたり、記憶を呼び起こしたりすることができ、エネルギーという物質的な価値よりも、場合によっては重要な存在理由であると思っています。人間は、合理的であり非合理的な存在です。先ほどおっしゃったように、私が生きている間に音楽業界には大きな変化がありましたが、人々はさほど変わっておらず、供給システムが変わっただけです。人は、これからも「人生とは、何か」について考え続けないといけません。そして、それを理解する上で、音楽は大きな役割を果たしています。なので、このApple Music Classicalは、自分の人生を理解するための音楽に、アクセスする1つの方法だと思っています。」
Interview&Text:高嶋直子
◎サービス情報
『Apple Music Classical』
2024/1/24 RELEASE
https://apps.apple.com/us/app/apple-music-classical/id1598433714
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