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2023/12/26

<ライブレポート>TETORA/ammo/アルステイク、Orange Owl Records 所属の3バンドがライブハウスで完全燃焼【VS DAY vol.1】

 大阪のインディーズレーベル・Orange Owl Recordsに所属する3バンド=TETORA、ammo、アルステイクの共催ライブイベント【VS DAY vol.1】を観た。LINEグループでのやりとりからammoの岡本優星(Vo./Gt.)が発案したというこのタイトルの読みは「バースデイ」。その理由は、レーベルのボスと彼らのライブ制作を手がける会社の社長が2人とも、奇しくもこの日が誕生日だからだそう。

 というエピソードだけでも3組とその周囲のチームワークと良好な関係性が窺い知れるが、それ以前に彼/彼女たちは常にライブハウスで競い合い、技を磨き育ってきたバンドである。だから当然、仲が良いからといってほのぼのした空気になんかならない。対抗意識をガンガンに燃やし、50分の持ち時間に自分たちの武器をありったけ詰め込んだ迫真のライブばかりだった。全組が勝ちに来ていた。

 どのバンドが主催ということではなく共催なので、出演順はくじ引きで決めたそう。トップバッターを引き当てたのはammoだった。満員の会場が送る大歓声を上書きする爆音で一発かましてから、岡本が叫ぶ。「ammo フロム・大阪、はじめます!」。「フロントライン」で口火を切ると、「未開封」「深爪」と次々に畳みかけていく。北出大洋(Dr.)のタイトだがたくましいビートがボトムを支え、川原創馬(Ba.)は前後左右に激しく動き回りながらのプレイ(ちょっと目を離すと照明の当たってないところまで弾いていたり)。サウンドは良い意味でシンプルであり、そういう音楽だからこそ生み出せる景色があり、そういう音楽にこそ委ねられる感情がある。いきなりダイバーが続出するフロアがその証拠だ。

 繊細なニュアンスを帯びた岡本の歌と、ゆったりとしたベースが心地良いミドルナンバー「寝た振りの君へ」を終え、あらためて挨拶。そして「変化じゃなく進化したい。流行りじゃなく時代になりたいと思ってます」と力強く語ってから「CAUTION」へ。ダイナミックな音像に、ところどころドラム・フレーズで疾走感を加えていく。後半にかけてライブはさらに勢いを増していき、フロアのボルテージも最高潮に。「歌種」では一斉にシンガロングを送り、今日イチファストでショートな「包まれる」ではとことん暴れ倒す。「一組目は俺らしかなかった、そう思わせて帰ります」、そう言い放ってロックバラード調の「なんでもない」を届け、他の曲とは少し装いの違う「好きになってごめんなさい」で締め。いきなりこちらに完全燃焼を強いる内容で走り切ったammoだったが、もちろんライブはまだまだ続く。

 2番手・アルステイクはサウンドチェックからの流れでドラム前に集まって向かい合い、そのまま「他人事」からスタート。「chisa」であむ(Dr.)の叩き出す2ビートが、急きたてるようにライブの流れを加速させていく。ひだかよしあき(Vo./Gt.)が豊かな声量で歌う耳馴染みの良いメロディに、のん(Ba.)が溌剌としたベースプレイを見せつつ要所でさりげなく乗せるコーラスが効いた「アイプチ」、「観に来た人のこれまでにも、これからにも、ちょっとでも重なりますように」との言葉からドラマティックなサウンドで空気を塗り替えた「終わりの続き」という前半パートも見どころ十分だったが、本番はここからだった。

 会場だけでなく観客たちの心の中もパンパンにして帰りたい、というひだかの宣言に次ぐ「嘘つきは勝手」から、アルステイクは猛進を開始する。軽快でありながら迫力満点、ほぼ曲間を空けずにアグレッシヴな楽曲を次から次へ投下。モッシュピットと化した最前列を気遣いつつ、「次は速い曲やらないから」なんて言いながら「走れ」「光れ」と駆け抜ける曲を連発してみたりと、ライブ運びも見せ方も不敵で頼もしい。初めてCDを出した時、ポップで“Orange Owl Recordsの末っ子”と書かれていたことが悔しかったというエピソードも明かしていたように、この日の彼らは胸を借りるつもりなんてさらさらなく、物怖じもしていなかった。これまでの活動で、こうした振る舞いを自然にできるだけの自信を身につけてきたのだろう。終盤にはバラードの曲など懐の深さも見せ、実に17曲も詰め込んだライブは「未完成のまま」で締め括られた。

 オレンジ色の照明の中を登場したトリはTETORA。「くじ引きでトリ引いちゃいました。自分、持ってるなと思いました」と上野羽有音(Vo./Gt.)は笑ったが、それは必然だったのもしれない。そもそもレーベルの長女である彼女たちがいなかったらこの日の3マンは存在しなかったし、2曲目の「言葉のレントゲン」終盤で一旦音を止めて間を置いた上野が告げたのは、来年8月に日本武道館でワンマンを開催するということ。驚きと歓喜で沸き上がる場内の隅々まで、一人ひとりの表情まで見えるくらい、もちろん嬉しそうなメンバーの表情もよくわかるくらい、煌々と客電が点灯する中で演奏されたラストのサビは絶景だった。なお、この発表は自身のワンマン等ではなくこの3マンで発表したかったのだいうことを、後のMCで上野は明かした。

 ただ、祝福ムードがライブ全体を支配していたわけではなく、その後はいつものようにがむしゃらで、その日その刹那しか観られないTETORAのライブだった。「今日は思いっきり一等賞を獲りにきました!」と「正直者だな心拍数」のポップにドライブするロックサウンドを叩き込み、「素直」では立ち上がって煽るミユキ(Dr.)に応え、場内からシンガロングが発生。さらに新曲のバラード…かと思いきや後半でガラッと裏切ってくる「12月」から、「バカ」へ。いのり(Ba.)が太い轟音を放ちながらピョンピョン飛び跳ね、盛り上がりに拍車をかける。一方、「ずるい人」や「今日くらいは」などのエモーショナルな楽曲では、情感豊かな上野のボーカル表現も堪能できた。「アンコールはやらへんから、この曲で終わり」と、最後に真っ白な光を背負いながらひときわ爆音で演奏した、TETORAの何たるかを象徴する曲「Loser for the future」が、その力強く勇ましい姿を焼き付けていった。

 一昨年、下北沢SHELTERで初めて行われ、その後何度も実現してきたこのレーベルメイト同士による3マン、どうやら少なくとも現時点では次の予定は組まれていないらしい。来年にはアルステイクが初ワンマンを、ammoはZeppワンマン、TETORAは武道館ワンマンと、それぞれが大きな挑戦に挑む。それらを越えた先でまたいつの日か、何回りも大きくなった3バンドでガチンコ勝負をしてほしい。そのときはもっともっと大きな会場が相応しくなっているかもしれないが、でもやっぱりライブハウスで観たい気はする。


Text:風間大洋
Photo:稲垣ルリコ


◎公演情報
【TETORA & ammo & アルステイク presents "VS DAY vol.1"】
2023年12月15日(金)
神奈川・KT Zepp Yokohama


<セットリスト>
ammo
1. フロントライン
2. 未開封
3. 深爪
4. 歯形
5. 寝た振りの君へ
6. CAUTION
7. これっきり
8. 突風
9. 星とオレンジ
10. 歌種
11. なんでもない
12. 好きになってごめんなさい

アルステイク
1. 他人事
2. chisa
3. 一閃を越え
4. アイプチ
5. 終わりの続き
6. 嘘つきは勝手
7. 生活のこと
8. わんちゃん
9. チェリーメリー
10. ダメ彼氏
11. 走れ
12. 光れ
13. 今日は
14. ワガママ
15. 裸足と裸足
16. 心
17. 未完成のまま

TETORA
1. 本音
2. 言葉のレントゲン
3. 正直者だな心拍数
4. 素直
5. 12月
6. バカ
7. 嘘ばっかり
8. イーストヒルズ
9. ずるい人
10. 知らん顔
11. 今日くらいは
12. Loser for the future

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