2023/12/03
9月16日の宮城・セキスイハイムスーパーアリーナからスタートしたマカロニえんぴつのアリーナツアー【マカロックツアーvol.16 ~マカロニちゃん、じつはとってもシャイなの…仲良くなっても時間を置くとすぐまた照れちゃうからコンスタントに会ってくだシャイ…▽編~】。その東京公演が、11月18日と19日の2日間、国立代々木競技場第一体育館で開催された。ここではそのうち2日目、19日のライブをレポートする。
いつも通りのSEに、いつも通りの登場の仕方。だが、一発目として鳴らされた「愛の波」を聴いた瞬間に、マカロニえんぴつがいつの間にかこのアリーナクラスの会場を「ホーム」にしてしまっていることに気がついた。ド派手な照明演出、そして何よりステージから鳴らされる音のスケール感。もちろんこれまでも横浜アリーナやさいたまスーパーアリーナといった大会場で彼らのライブを観てきたが、そのときとは明らかに違う、落ち着きというか普段通りというか。どっしりと構え、自分たちの音を信じ、丁寧に演奏を届けていく、そんなムードがなんとも頼もしい。この日最初のMCではっとり(Vo/Gt)は「ついにこの規模でできるようになりました。みなさんのおかげです!」と観客に感謝を伝えていたが、そんな言葉にも「この規模」を完全に自分たちのものにしたという自信が感じられた。
「レモンパイ」に「ペパーミント」、「リンジュー・ラヴ」に「ブルーベリー・ナイツ」……新旧の楽曲を織り交ぜて構成されたセットリストでライブは進む。どれもが鉄板の名曲揃い。イントロが鳴った瞬間にオーディエンスはすぐに反応し、手を叩き、歓声を上げる。「TIME.」ではそれまでと雰囲気を一変、真っ赤なライトに照らされるなかエモーショナルな演奏を繰り広げ、かと思えば続く「嘘なき」でははっとりがギターを弾き語ってパーソナルな思いを注ぎ込む。そのままギター1本で入っていった「ありあまる日々」。そこに長谷川大喜(この日は彼の誕生日!)のキーボードが重なり、サポートメンバー・高浦 “suzzy” 充孝のドラムが重なり、高野賢也のベースが重なり、田辺由明のギターが重なり……だんだんとバンドの形になっていき、次の「なんでもないよ、」に繋げていく展開は、マカロニえんぴつの歩みそのものを教えてくれるようで感動的だった。
ここで、メンバー全員でのMCを経て、はっとりが恵比寿で自分と田辺にそっくりの酔っ払いのサラリーマンに遭遇したという謎のエピソードを話し始める。何の話だ?と思ったら、これが次の曲への前フリだった。スクリーンにベロベロでスナックに入ってきた上司(田辺)と部下(はっとり)の小芝居が映し出され、その後物語は田辺とスナックのママの大人な恋物語(妄想)に。そこで流れ出したのが、アルバム『大人の涙』でも屈指の問題作、「嵐の番い鳥」だ。ミラーボールが煌めき、バックにカラオケ映像が流れるなか、いつの間にか白いスーツに早着替えしたメンバーに加え、楽曲に参加しているリコ(ヤユヨ)も登場してはっとりとデュエット。これまでもサウナの歌(「TONTTU」)や町中華の歌(「街中華☆超愛」)で異常に力の入った演出を見せてきた彼らだが、今回も全力だった。
そんな「嵐の番い鳥」を境に、ライブは後半戦に入っていく。NHK Eテレ『天才てれびくん』のメインテーマソングとして提供した楽曲のセルフカバー「ネクタリン」、そして高野作曲の「だれもわるくない」では新鮮な打ち込みサウンドで会場を踊らせ、「懐かしいのをやろう!」と初期曲の「メイビーネイビー」で切れ味とクセ満載のアンサンブルを披露していく。そこから田辺の激しいギターリフとともに突入したマカロニえんぴつ流メロコアチューン「Frozen My Love」では大量の風船人形がクラウドサーフ。金テープも発射され、クライマックスに向けて一気にテンションを高めていった。
「冷蔵庫(『Frozen My Love』は冷蔵庫の歌)の次は洗濯機だ!」とシンガロングを巻き起こした「洗濯機と君とラヂオ」、イントロで高浦のドラムが力強く牽引した「星が泳ぐ」を経て、はっとりが「本当に嬉しい時間を過ごせた、ありがとう!」と叫ぶ。「ロックバンドは、ここに立って、そっちに向かって届けているわけじゃない。あなたと一緒に感じて、傷ついて、そのたびに考えて、一緒に歌いたい生き物なんだ。そういう意味でいうとあなたたちのほうがロックバンドかもしれない。かっけえロックバンドになってきたな、お互い。そうは思いませんか?」。その言葉に大きな拍手が巻き起こる。「感じるんだ、考えるんだ。ときには自分に対しても抗うんだ。悔しいけど疑ってみるんだ、『間違ってたのは俺のほうかも、私のほうかも』って。そしたらまた、いい歌作ろうぜ、一緒に」。これまでは自分たちのことをセンチメンタルに語ることが多かったこの最後のMCで、はっとりは堂々と大観衆と向き合っていた。それもまた、大きくなったマカロニえんぴつの今の立ち位置を物語っているようだ。「あなたが拾い上げてくれた、マカロニえんぴつという音楽でした」。そうして鳴らされた本編最後の曲「悲しみはバスに乗って」が大きく、強く響き渡った。
その後、アンコールでは名曲「ヤングアダルト」を会場に集まった万単位のオーディエンスの心に共鳴させ、最後にはバンドの転換点を刻んだ「ミスター・ブルースカイ」を高らかに歌い上げたマカロニえんぴつ。心の叫びのような力をもったはっとりの歌は、「俺たちはここにいるぞ、ここまで来たぞ」と宣言しているように響いた。
Text:小川智宏
Photo:後藤壮太郎
◎ライブ情報
【マカロックツアーvol.16 ~マカロニちゃん、じつはとってもシャイなの…仲良くなっても時間を置くとすぐまた照れちゃうからコンスタントに会ってくだシャイ…▽編~】
2023年11月18日(土)、11月19日(日)
東京・ 国立代々木競技場第一体育館
※【マカロックツアーvol.16】ツアータイトル内「▽」正式はハート記号
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