2023/12/01 18:00
Aimerが、ファンクラブ限定ツアー【Aimer Fan Club Tour “Chambre d’hote”】を全国7都市9公演にわたって行い、普段のツアーでは観られない演出などもある特別なライブで、ファンを楽しませた。じつに5年ぶりとなるファンクラブ・ツアーということもあり、全国各地のファンが集まり大盛況となったツアーから、2023年11月 2日に神奈川・KT Zepp Yokohamaで行われたライブのレポートをお届けする。
白を基調としたセットのステージはT字型になっており、左右に楽器が配置されていた。「Open α Door」が流れ、中央にスポットライトが当たると、Aimerがピアノの伴奏と一緒に歌い出す。1曲目は今ツアー、会場ごとに異なる楽曲を披露しており、このKT Zepp Yokohamaで演奏されたのは「Ref:rain」。ピアノの音だけをバックにした繊細な表現で、Aimerの息遣いも生々しく聴こえる。歌い終えて大きな拍手がステージに向けられる中、「こんばんは、Aimerです!」と大きく両手を広げて応えると、最初のMCへ。「5年振りのFCツアー、初のKT Zepp Yokohama、みんなに会えてうれしいです! 今回のツアータイトルは【Chambre d’hote】。フランス語でゲストルームという意味です。距離が近いので、リラックスして楽しんでください。1曲目は、ピアノの野間(康介)さんと「Ref:rain」という曲を歌いました。私と野間さんのピアノによるスタイルというのは、じつはこういうワンマンライブを始める前に、「Live at anywhere」というインターネットライブでよくやっていたスタイルです。そんな私の原点も今日は挟みたいなと思って最初にお届けしました」と、特別なライブへの想いを伝えた。2曲目のニューアルバム『Open α Door』収録曲「群青色の空」からはバンドメンバーが勢ぞろい。丁寧な演奏で、Aimerが「私が大好きな時間帯の空の色を思い浮かべながら作った曲」と紹介した情景を、ドラム、ベースとアコースティック、エレキの2本のギター、バイオリン、ピアノで紡いでいく。1つ1つの楽器の音色がクリアで、Aimerの歌声と寄り添いながらアンサンブルを奏でている。
「ちょっとレアな曲をやりたいと思います」と始まったのは「Life is a song」。緩やかなリズムを乗りこなすように歌うと、「いくよー!?」とオーディエンスに呼び掛けて、フロア中がヒップホップ調に右手を上げて一体化し、「いいね!」と場内を見渡すAimer。「少し遠い季節の曲を」との紹介から「花の唄」へ。重たく絡み合うバイオリンとピアノに包まれて、深い情念を放つAimerの歌声。終盤、より激しくドラマティックに歌い上げると、しばらく浸って聴き入っていた会場からは大きな拍手が沸き起こった。
曲ごとにMCでオーディエンスに語り掛けて、コミュニケーションを取るAimer。お客さんがどこから来場しているのか尋ねると、中国、韓国、イギリスなど海外から訪れている人も。ステージと客席の距離が近く、直接話しかけて会話が繰り広げられるなど、リラックスしたステージングはファンクラブ・ツアーならではの楽しさだ。
「Ash flame」では、序盤のサウンドとガラリと変わり、尖った演奏と激しい歌唱を、続く「ONE AND LAST」ではさらにラウドに疾走する演奏に乗ったロックチューンで圧倒した。幻想的なSEの後、一瞬の静寂から息を吸い込むように「空噪wired」を歌い出すと、ステージが明るくなり“Blanc et noir”(ファンクラブの名称)の文字が電飾で輝き出して、フロアから一斉に手拍子が起こった。まばゆい光に包まれる華やかなステージ上を左右に移動しながら、目の前のオーディエンスに身を乗り出して語り掛けるように歌う姿は、日頃のファンとの心の距離の近さを物語っていた。自ら両手を上げてクラップすると、バンドメンバーを紹介。宮川剛(Dr)、高間有一(Ba)、佐々木“コジロー”貴之(Gt)、三井律郎(Gt)、吉田翔平(Vn)、野間康介(Key)それぞれの見事なプレイが堪能できるコーナーとなった。特にギタリスト2人のバトル的なソロの見せあいは圧巻。さらに「陰の立役者!」と呼びこまれた柳野裕孝(Mp)は、マイクを片手にステージ前に出てコール&レスポンスする芸達者ぶりに、Aimerも思わず笑い声を上げながら見守っている。バンドのグルーヴが最高潮に達すると、「そして最後に、on Vocal、This is Aimer!」と自己紹介して大喝采を浴びた。立て続けに始まった「I know U know」で「一緒に歌って!」とマイクを向けてサビの合唱を促すAimerに、会場中が大合唱と手拍子で応える。躍動するリズムに合わせて飛び跳ねるハッピーな光景が広がった。
「熱くなった!? そろそろ、今夜のライブのラストスパートに行ってもいいですか?」と告げるAimerに、場内からは「ええ~!?」と悲し気な反応が。再び「ラストスパート行ってもいいですか? もっと行けるよね横浜! あなたの嫌なこと全部、ここに置いて行く覚悟できてる!?」と挑発的に呼び掛けると大声援を受けて、「Resonantia」へ。ドラム、ピアノの強烈な打音と太いベースライン、縦横無尽なヴァイオリン、2本のギターによるサウンドの中にあっても、しなやかに突き抜けていくヴォーカルは絶品だ。軽快なピアノのイントロから、「残響散歌」が飛び出すと、ライティングが上下してフロアを照らして興奮を煽る。豪快なサウンドと迫力の歌声、照明の演出に、まるでステージ全体が動いているような錯覚すら感じた。
そしてバラード「キズナ」を丁寧に歌い上げると、両手を広げて万雷の拍手を受け止めてステージを降りた。
アンコールでは、ザ・ウィークエンド「Blinding Lights」 をカバー。「振付けでみんなと一緒に盛り上がりたい」とのことで、振付けをオーディエンスにレクチャーすると、Aimerと楽器を置いてサングラス姿になったバンドメンバー全員がステージ前に横並びで登場(野間康介はショルダーキーボードで演奏)。80’sチックでレトロなシンセポップに合わせて、全員で振付通りに踊って、会場全体がディスコと化した。さらに、各地の会場ごとに披露しているカバー曲のコーナーとして、この日は米津玄師「Lemon」 が取り上げられた。アコースティック・ギターの音色に導かれた歌い出しから、柔らかくあたたかい歌声が心地良く響く。
「私はいつも、今でも変わらずに、“あなた”に歌ってるからね。それを覚えておいてもらえたら嬉しいです」。
アンコールの最後に歌われたのは、12月6日にリリースされる23rdシングルの表題曲「白色蜉蝣」。シンフォニックな演奏とエモーショナルな歌声、ステージを取り囲むあらゆる場所から眩い光がAimerを包んで、感動的なエンディングとなった。最後は出演者全員で両手を繋ぎ、生声で「ありがとうございました!」と、客席に一礼。Aimerはステージの端から端まで感謝を伝えて、「また会おうねー!本当にありがとうー!」と再会を約束して、FCツアー横浜公演は幕を下ろした。
Text:岡本貴之
Photo:加藤アラタ
◎公演情報
【Aimer Fan Club Tour “Chambre d’hote”】
2023年11月 2日 神奈川・KT Zepp Yokohama
◎セットリスト
1. Ref:rain
2. 群青色の空
3. Life is a song
4. 花の唄
5. Ash flame
6. ONE AND LAST
7. 空噪 wired
8. I know U know
9. Resonantia
10. 残響散歌(Long Intro ver.)
11. キズナ
EN1. Blinding Lights(ザ・ウィークエンド カバー)
EN2. Lemon(米津玄師 カバー)
EN3. 白色蜉蝣
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