2023/11/16
大阪発のスリーピース・ロックバンドammoが東名阪ツアー【温厚故に高温】の最終公演を東京・Zepp Shinjukuで開催した。
2018年に結成され、2020年4月に1stシングル「寝た振りの君へ」を発表。その後、2020年11月に1stフルアルバム『会うは別れの始め』をリリースし、ライブ活動も少しずつ活性化。岡本優星(V./G.)、川原創馬(Ba./Cho.)、北出大洋(Dr.)の3人体制で、2022年10月には2ndフルアルバム『我々の諸々』を発表するなど、活動の幅を広げてきた。
生々しい感情を刻んだバンドサウンド、ストーリー性と“韻”の面白さを併せ持った歌によって、結成してすぐにコロナ禍にぶち当たったにもかかわらず、ライブハウスシーンで頭角を現してきたammo。これまでサブスク配信はなく、CDでのリリースに拘ってきた彼らは、SNSなどの施策に頼りすぎず、純粋に楽曲とライブだけで支持を集めてきた。10代~20代前半のオーディエンスで埋め尽くされたこの日のライブでも3人は、音楽だけを介した、直接的にして感情的なコミュニケーションを生み出してみせた。
岡本、川原がドラマーの北出の近くに歩み寄り、静かに気合い入れをした後、ライブはスタートした。「大阪、ammoはじめます。【温厚故に高温】ファイナル、Zepp Shinjukuにて。よろしくお願いします」(岡本)と語り掛け、最初のナンバー「わかってる」。未来が見えない“あなた”との関係を詩情豊かに描いた曲を、抑制の効いた演奏で描き出す。途中で演奏を止め、「新宿に新しくできたでっかいライブハウスで、ワンマンライブ、させてもらってます。奇跡じゃなくて、確実をしにきました。ライブハウスはじめようか?」という言葉を放った岡本。その直後に3人は一気に演奏のテンションを上げ、観客も手を突き上げて応える。ここからは性急なファスト・チューンを連発。「ハート・フル」「未開封」「深爪」「馬鹿な人」と楽曲を繋げ、フロアではモッシュが巻き起こる。岡本、川原は激しく動き、ステージ前方で観客を煽り、「ドキドキしてるか!」(岡本)と叫ぶ。観客は身体をぶつけ合い、思い切り声を挙げているが、それは“暴れたい”という刹那的な欲望ではなく、“歌”がもたらす興奮だということがはっきりとわかる。どんなに荒々しく演奏しても、シャウトしまくっても、岡本が生み出した言葉とメロディが壊れることはなく、歌として成立しているのだ。たとえば「最後は繋がるわかれ道」。緩急のあるビートとともに〈不意にどうして/言葉は寄り道をするの〉という詩的なフレーズが飛び込んできて、ファンからも人気の「不気味ちゃん」「寝た振りの君へ」はじっくりと聴かせるモード。〈生憎今日は会いに行く日だ〉(「不気味ちゃん」)、〈痛いくらい泣きたい夜にさ/君がそばに居たから〉など、頭韻・脚韻を取り入れたフレーズは、ライブで聴くとさらに効果を発揮し、心地よさと切なさが真っ直ぐに伝わってくる。岡本のボーカルはライブでも聴き取りやすく、楽曲に込めた物語や光景がありありと浮かんでくるのだ。
「現実で夢中を、ずっとずっと歌ってきた曲を。最後までよろしくお願いします」(岡本)というMCに導かれた「CAUTION」から、ライブは再び熱を帯び始める。岡本はテレキャスターをかき鳴らしながら、観客に語り掛けた。バンドを結成して5年経ったこと。コロナ禍でインディーズレーベル“Orange Owl Records”に入り、壁や目標を超えて、ここに立っていることーー。
「約束するよ。俺はZeppをゴールなんかにしねえ! 俺たちの始まりの唄を聴いてくれ」と叫び「フロントライン」を放つと、フロアの熱狂は一気にピークへ。思春期の狂おしいまでの恋愛の光景を描いた「突風」、“あなた”の不在を抒情的に歌い上げる「星とオレンジ」、キスマークをテーマにした歌詞と狂騒的なバンドサウンドが響き合う「これっきり」。オーディエンスとバンドが互いを高め合う、ライブハウスの理想の姿がそこにあった。未発表の新曲からライブはクライマックスへ。「歌種」「包まれる」、そして、「好きになってごめんなさい」といったライブの現場で鍛え上げられたアンセムを続け、すべての観客を圧倒的な興奮へと導いてみせた。
“ammo!”という観客の声に導かれ、再びステージに登場した3人。演奏中のテンションとはまったく違い、何を話したらいいかわからない様子のメンバーに対し、客席から「ファンへの気持ちを話して」と声が飛ぶ。こういう親密な雰囲気もまた、このバンドの良さなのだろう。
最後に「初恋病」と「後日談」を演奏し、ライブは終了。感情と身体を激しく揺さぶられながら、ロックバンドの初期衝動を存分に体感することができた。
2024年1月17日には、メジャー1st EP『re:想-EP』(CD/新曲5曲)、『re:奏-EP』(配信/新曲1曲/インディーズ再録4曲)をリリース。3月3日には東京・Zepp DiverCityで単独公演【reALITY】の開催も決定している。オーディエンスと圧倒的な信頼、そして、1ミリも嘘がない楽曲を武器に、ammoの新たな快進撃がはじまる。
Text by 森朋之
photo by toya / 山川 哲矢
◎リリース情報
EP『re:想-EP』
2024/1/17 Release
<初回生産限定盤(CD+Blu-ray)>
TFCC-81047~81048 3,000円(tax in.)
<通常盤(CD only)>
TFCC-81049 1,500円(tax in.)
EP『re:奏-EP』
2024/1/17 Digital Release
◎公演情報
【reALITY】
2024年3月3日(日)東京・Zepp DiverCity
関連記事
最新News
関連商品
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像