2023/07/21 18:00
SUGIZO(LUNA SEA、X JAPAN、THE LAST ROCKSTARS、SHAG)が、自身5年ぶりとなるソロツアー【SUGIZO TOUR 2023 Rest in Peace & Fly Away~And The New Chaos in Saving You~】を開催した。7月10日、東京・Zepp DiverCityにて行なったそのファイナル公演をレポートする。
この日のライブは、大まかにいうと4つのパートに分かれていた。最初に、オープニングアクトとしてステージに登場したのは、SUGIZOの「COSMIC DANCE SEXTET」にも参加しているMaZDAのサイケデリックトランス・プロジェクトであるUNI。トライバルなビートと叙情感を感じさせるドラマティックな展開でフロアの熱気をどんどん高め、トランシーな状態へと導いていったあとは、本日のトップバッターであるKAZKAへとバトンタッチした。
KAZKAはウクライナにおいて国民的人気を誇るバンドで、SUGIZO自身が以前からKAZKAの音楽のファンだったこと、さらには、KAZKA自身が軍事侵攻が続いているいまも、国内はもとより海外にも渡り、平和と共存を人々の心に訴える音楽活動を継続して行なっていたたこともあって、本ツアーでこのような奇跡のコラボレーションが実現した。
今回、ボーカルのサーシャ(オレクサンドラ・ザリツカ)と(たて笛のような)ソピルカ奏者のデイマ(ドミトロ・コズリアツ)の2人での来日となったKAZKAは、クールビューティーな女性コーラス2人を加えてパフォーマンス。ウクライナのトラディショナルで牧歌的なサウンドが流れてくるのかなと想像していたら、ライブでは冒頭からその想像は大きく裏切られた。「KARMA」から始まったライブは「SVYATA」、「PALALA」、「acapella Gizls」とサーシャが力強いパフォーマンスで次々と歌う。デイマがその主旋律をなんともいえない哀愁とその奥にノスタルジーを感じさせる笛で、ループさせていくサウンドは最新鋭のエレクトロなダンスミュージックが基盤となっている。そこに、自分たちのカラーをミックスさせた音楽だったのだ。黒いサングラスに黒い衣装、双子コーデできめたコーラスの女性たちが、時折そこにロボットダンスでアクセントを入れていくパフォーマンスもエッジが効いていてじつにクール。SUGIZOサウンドと親和性が高いのも、音楽を体感しているだけで想像できてしまう。と思っていたら、なんと次の曲ではサーシャがSUGIZOを呼び込み、自分たちの代表曲でもある「CRY」をSUGIZOの弾くギターとSUGIZO COSMIC DANCE SEXTETのドラマーkomakiが叩く生のビートとコラボレーション。オーディエンスも歓声を上げながら、サーシャとともに手を左右に振って、身体中で音楽を楽しむ。komakiを残してSUGIZOがステージを去ったあとは「tvogei kzovi 」、超ダンサブルな「PSD」を連発。曲中「トーキョー」、「アリガトウゴザイマス」と何度も日本語でメッセージを伝えながら、ステージを移動して歌い踊るサーシャ。彼女が放つアクティブなパワーと、笛を演奏しながら踊るデイマのエキサイティングなパフォーマンスに魅了された観客は、クラップを入れながら体を揺らして踊りまくる。こうして、フロアを大熱狂へと導いたところで彼らのライブは終了。ステージにはコーラスの2人だけが残り、アカペラでウクライナのトラディショナルな民謡を歌唱し、最後はしっかりとウクライナの匂いをみんなの心の奥に残して、しめやかにライブを締めくくった。
続いては、いよいよライブのメインディッシュとなるSUGIZOのステージパートへ。まずは、本日ゲストとして迎えたピアニストのMAIKOとともに、SUGIZOはヴァイオリンを手に登場。KAZKAのエンディングのムードに合わせて、厳かな雰囲気のなか、バラード「Rest in Peace & Fly Away」の前半パートを静かにプレイ。そうして「最後までアゲアゲで昇天しましょう」と挨拶をしたSUGIZOがヴァイオリンをギターに持ち替え、MaZDA(マニピュレータ、シンセサイザー)、よしうらけんじ(パーカッション)、komaki(ドラム)、Chloe(ボーカル)、ZAKROCK(VJ)に加え、SHAGのバンドメンバーでもあるトランペッターの類家心平とともに「DO-FUNK DANCE」を華麗にアクト。すぐさまフロアの天井では、3機の巨大ミラーボールがきらめきだし、ダンスビートとロックなギターリフが生み出す高揚感に、場内はすっかりアゲアゲのクラブ状態に。「NEO COSMOSCAPE」では曲中SUGIZOがギターを背中に回してパーカッションをプレイ。ここでは、フロントに出てきたよしうらけんじのシャンべ、komakiが叩き出すドラムが生み出す熱いトライバルなビートが、集まった人々の心臓をダイレクトに刺激する。ステージが真っ赤になり、ジャズとファンクが入り混じった「Rebellmusik」では、リアルな戦場をモノクロの映像で映し出しながら“STOP THE WAR”の強いメッセージを投げかけていく。サウンドが融合していくとともに、映像には青空の下ではためくウクライナの国旗が映し出され、そこからさらに曲は展開。トランペットのソロとSUGIZOのカッティングが絡み合いながら溶け合っていったとき、美しい夕焼けがスクリーンいっぱいに広がった場面はなんとも感動的だった。
インストパートが終わると、Chloeの登場で空気がガラリと変わる。彼女の歌声に共鳴するように、SUGIZOのギターが幻想的な空間を作り出し、海と月が音楽、映像で一体化していった「ARC MOON」。ギターをヴァイオリンに持ち替えてプレイした「FATIMA」では天空に目がくらむほどのレーザービームが無限に広がり、女性ダンサーが踊る映像とともに白昼夢を見ているような世界へと観客たちを引き連れ、トリップさせていったSUGIZO。このあとは、ここまで着ていた沖縄の花と美しい自然メッセージをプリントしたコートを脱ぎ、黒い衣装になって「3月にあの世の中に旅立った人生の恩師、憧れのミュージシャン、坂本龍一さんに捧げる曲を」と静かに告げて、YMOの「PERSPECTIVE」をカバー。“1、2、3、4”というSUGIZOの生声のカウントからピアノとSUGIZOのヴァイオリンが呼吸を合わせ、ユニゾンでメロディーを奏でていく音に、場内のオーディエンスはただただ静かに耳を傾け、SUGIZOの想いを感じ取ろうと、曲に聴き入っていた。
「次は再び新しいミューズをお呼びして、この曲を贈りしましょう」といって再びChloeを呼び込み、SUGIZOはギターを持ってスタンドマイクの前に立ち、Chloeと織りなす男女ツインボーカルで、ボッサフレーバーを効かせた「DELIVER...」、さらにSUGIZOなりのインダストリアルなソウルフレーバーで「KANON」を続けてパフォーマンスした。この2曲で、新しい大人の、ムーディーなサイケデリックワールドを作り出してみせたあとは、「FINAL OF THE MESSIAH」を合図にステージとフロアは快楽のカオス目掛けて急激にヒートアップ。エレクトロなリズムと和楽器が入り乱れ、SUGIZOとよしうらが激しいセッションを繰り広げたあと、変則的なギターリフを4つ打ちのビートに突き刺していくところがたまらない「禊」へ。これでフロアに火をつけたあとは、本編ラストの「TELL ME WHY?」でSUGIZOが渾身のシャウトでメッセージを投げかけ、ステージ、フロア一体となって大昇天したところでライブは終了した。
そうして、アンコール。この日はSUGIZOとKAZKAによる特別なコラボステージが用意されていた。SUGIZOからは、まだウクライナで紛争が続いているため「KAZKAはキーウから陸路で命がけでポーランドに渡り、日本に着てくれた」ことを明かし、「それをこのステージでお届けできて光栄に思ってます」と続けた。さらに、この日は「日本在住のウクライナの難民の方々もたくさんいらしてくれてます」と紹介すると、その方々がフロアで歓声をあげながら笑顔で手を振る。そうしてSUGIZOはウクライナだけではなく「いまもあらゆる国で苦境に立たされている人がいます」とシリアやスーダンなどにも思いを馳せ「もっともっとこの感動を世界に伝えたいと思います」と宣言。そうして、このあとはウクライナの国旗を手にしたサーシャが登場した。「世界中が平和になって欲しいとお祈りしてます」と伝えて、KAZKAの「I AM NOT OK」をSUGIZOとChloeとともにパフォーマンス。ウクライナのいまをとらえたMVは、報道で見るニュースよりも現実味があって、胸が締め付けられる思いがした。そうして、続けてSUGIZOとKAZKAが共作して作り上げたという「ONLY LOVE, PEACE & LOVE」を初披露。曲を通じて、平和への祈りを届けたあとは、最後は「Rest in Peace & Fly Away」の後半部分をヴァイオリンとMAIKOのピアノとともに演奏。演奏が終わると、7月8日に誕生日を迎えたばかりのSUGIZOに対して、KAZKAからサプライズで大きな花束とウクライナのバースデーソングが贈られた。人と人との愛。それが、きっと世の中の平和につながっていく。そんな気持ちにさせられたところでライブは幕を閉じた。
SUGIZOはこの後も8月11日、神奈川・YOKOHAMA BAY HALLにてSHAG主催イベント【WHAT IS JAM?】に出演。10月からはLUNA SEAとして【LUNA SEA DUAL ARENA TOUR 2023】を開催し、年末までライブ活動が続いていく。THE LAST ROCKSTARSとしての活動も含め、今後も音楽活動、さらには様々な社会活動を通して、SUGIZOは世界平和のメッセージを伝え続けていく。
Text by 東條祥恵
Photo by Keiko Tanabe
◎公演情報
【SUGIZO TOUR 2023 Rest in Peace & Fly Away~And The New Chaos in Saving You~】
2023年7月10日(月)
東京・Zepp DiverCity
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