2023/06/02
ClariSが5月6日と7日、東京・Zepp Hanedaにて【ClariS SPRING LIVE 2023 ~Neo Sparkle~】を開催した。
2022年12月の【ClariS HALL CONCERT 2022 ~ Let’s Snow Parade ! ~】から短期スパンで開催された今回のライブ。この期間に新曲こそ発表されていないまでも、ClariSが新たな輝きの可能性(=Neo Sparkle)を掴むためには必ず通っておきたいステージだった。本稿では初日公演の模様を振り返りたい。
今回のステージで特徴的だったのが、キャリア初となるライブ全編を通したバンドスタイルでの楽曲披露。格好よいClariSを届けるべく、“ファンの期待に応える”強靭なセットリストを作り上げてきたという。また、このタイミングで“声出し解禁”に。カレンがライブ中のMCにて語っていた通り、今年2月開催の【オダイバ!!超次元音楽祭】にてすでに“声出し”の楽しさを再確認しているからこそ、今回のワンマンライブで歓声を浴びれることが待ち遠しかったとのこと。そして会場は、約3年8か月ぶりにもなるライブハウス。“勝ち確”な手札はすべて揃えてきた。あとはすべてを忘れて盛り上がるだけである。
ライブは「ALIVE」から幕開け。前述の【Let’s Snow Parade !】でラストを締めくくった楽曲なだけに、昨年からの繋がりや“次の輝きの可能性”を掴む上でなんとも勢いづく選曲だ。そこからバンドサウンドの爆風といえる追い風を受けて、特に歓声を引き出した「again」。続く「ユニゾン」では、原曲に比べてギターのメロディを全面に押し出しつつ、曲中には< (Are you OK?) 「It's OK!!」>と、この数年間、やりたくて仕方がなかったステージとフロアの掛け合いがようやく決まる。楽曲終盤には会場全体でジャンプするなど、最初からクライマックスなステージに、クララも感極まる一歩手前だったとのこと。
そんな今回のライブについて、ClariSの“守備範囲の広さ”をテーマに見ていきたい。ここまでの3曲が導火線に着火する作業だったとすると、4曲目「border」から一気に駆け抜けたライブ前半パートは、大きな爆発を迎える内容として、1曲ごとになんとも意味のあるブロックだった。
まずは、ClariSの“セツナ清涼感”とも呼べる、歌声のおいしい部分をサビで存分に聴かせてくれる「border」。2番Aメロにある<鼻先を くすぐってく 春の匂い>で、今回のライブタイトルを回収しつつ、歌い出しの<いつも通りの あたりまえの日々を いつまで こんな風に過ごせるんだろ?>には、この数年間を振り返り、誰もが感じるところがあったに違いない。さらに、サビの歌い終わりでキーを低くするところで大人っぽさを提示しつつ、全体としては脳内に高い解像度で青春成分を注入してくる楽曲。ここでもまたイントロのギターに泣かされてしまうなど、この日に披露せずしていつするのかと思わされる選曲だった。
続くは、バンドでもダンスナンバーをアレンジできると示した「パラレルワープ」と、コールのハマり具合が気持ちよすぎる「シニカルサスペンス」。ここでは、3年前に0として失った声を、0.8や1の度合いに引き戻すのではなく、むしろ100にしてしまおうくらいの気概をパフォーマンスから見せつけられる。
さらに、これからの夏にぴったりなスカチューン「新世界ビーナス」では、ふたりが指揮者としてサイリウムで4拍子を振り、その動きの大小2段階でフロアのボルテージを思いのままにしていたのだが、最後にはカレンが4拍子など関係なしに、思う存分に腕を振り回して幻の3段階目を飛び出させる。そのままライブ前半は「SHIORI」と「nexus」でフィニッシュをした。
ユニットの成り立ちを踏まえても、「irony」やこの日も披露された「reunion」などを制作したkz(livetune)プロデュースの「nexus」でこの重要なブロックを締めくくっていたのは、あまりにも綺麗な総決算感があった。また、コロナ禍のライブでは重要なメッセージソングの立ち位置で披露されていた「SHIORI」がその直前に置かれていたのも不思議な感覚だったが、これまでの日々に対して、このライブ前半である程度の区切りをつけ、パフォーマンスとして見せ切るという意味では、至極納得のいく曲順だったと思う。そして言い換えれば、ライブ後半には別の趣向が用意されており……。
ここから始まるは「あなたの声を聞かせて! ClariSong Ranking!!」の上位5曲の結果発表と楽曲披露。今回は“ファンが作るライブ”を目指し、これまでのシングルカップリング曲、ならびにアルバムオリジナル楽曲に絞り、当日に先駆けてファンからのリクエスト投票企画を実施していたのだ。
順に紹介すると、第5位は季節を先取りして会場をオレンジ一色に染め上げた「with you」。投票終了まで5~7位のギリギリを競いながらも、ラストスパートが凄まじかったという。そこから、祭りロックの第4位「恋待かぐや」、散りゆく桜吹雪を琴の音色とともに奥ゆかしく届けるミドルバラードの第3位「ひらひら ひらら」と、偶然ながらも2曲連続で和テイストに。特に後者の楽曲は、この季節にぴったりだからこそ、たとえランクインせずとも歌唱したいと、ClariS自身も作戦会議をしていたという。本人たちの言葉を借りれば、まさにファンと「両想い」だったわけである。
第2位は、青春セツナポップの「surely」。栄えある第1位には、アコースティックポップの「ミントガム」が選ばれた。特に「ミントガム」は落ちサビに象徴されるのだが、ゆるやかさと爽やかさをもってして、楽曲の世界に引き込んでいく。力強いインパクトはないが、それでも楽曲の持つ力は大きいところ。彼女たちのパフォーマンスを見て、現在のClariSに繋がる原型のような表現も多く見られ、なるほどたしかに第1位に相応しい楽曲だと思わされた。
先ほど“原型”という言葉を用いたが、その理由は「ミントガム」が2013年春発売の3rdシングル「reunion」カップリング曲であることに由来する。最新シングル「Masquerade」が25枚目を数えるあたり、ユニット結成初期の楽曲がランクインしたことに、本人たちとしてはかなり衝撃的だったとのこと(そして同時に満を持しての披露で恥ずかしかったとも)。
とはいえ「ミントガム」は、第2位の「surely」とは倍の得票数で、票数の桁もひとつ繰り上がったというほか、「ミントガム」と「恋待かぐや」は初披露。そのほかもレア曲揃いだったあたり、この機会を絶対に逃してはならない。これらの楽曲を回収せずして死せず、というファンの執念を若干ながら感じられるところが面白い投票結果となった。
「reunion」「コネクト」と人気曲を披露したアンコールでは、ClariSとの“次の約束”も。今回に続き、今年11月にZepp DiverCity(TOKYO)にてライブハウス公演を開催することが発表された。同時に、6月21日にコンセプトEPとして、あのWinkの代表曲カバーに挑戦した『淋しい熱帯魚』を発売することも明らかに。ここではライブ当日にMVが公開される情報が告知されたのだが、正直なところファンには別の期待感もあったことだろう。「発売が来月じゃないですか……」「早くみんなに観てほしい……」というMCが“前フリ”のように、この流れで楽曲披露もされるという期待が。だが、ファンは大歓声を上げつつも、アンコールでは“お預け”に。
そう、Wアンコールにて、ふたりがWinkの再現衣装を身に纏ってサプライズ登場したのだ。豪華絢爛なドレスと珍しいハイヒール。Winkのふたりの身長差を考えて、ClariSも普段とは逆の立ち位置に。少し控えめなダンスで、リバーブを強く掛けた歌声で。なかでも<ユラユラSwimmin' ユラユラDreamin' 愛が揺れる>のフレーズは、ClariSの水面をたゆたうような質感の歌声とも親和性が高く、そもそも10年以上の活動を経て今回初めて明かされたのだが、結成当時の彼女たちのコンセプトは“21世紀のWink”だったとのこと。物語は活動当初からすでに始まっていたのだ。
バンドスタイルや「ClariSong Ranking!!」はもとより、ClariSはこのWinkカバーを披露したくて、このライブを開催したところが大きいのだろう。羽田の夜、ClariSの新たな可能性――Neo Sparkleを観た。
Text:一条 皓太
Photo:平野タカシ
◎セットリスト(5月6日公演)
M01. ALIVE
M02. again
M03. ユニゾン
M04. border
M05. パラレルワープ
M06. シニカルサスペンス
M07. 新世界ビーナス
M08. SHIORI
M09. nexus
M10. with you
M11. 恋待かぐや
M12. ひらひら ひらら
M13. Surely
M14. ミントガム
M15. ヒトリゴト
M16. CLICK
M17. ナイショの話
―ENCORE―
EN01. reunion
EN02. コネクト
―W ENCORE―
WE01. 淋しい熱帯魚
◎公演情報
【ClariS SPRING LIVE 2023~Neo Sparkle~】
2023年5月6日(土)、7日(日) 東京・Zepp Haneda
【ClariS Autumn Live 2023 in Zepp DiverCity】
2023年11月24日(金)、25日(土) 東京・Zepp DiverCity
◎リリース情報
EP『淋しい熱帯魚』
2023/6/21 RELEASE
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