2023/05/30 21:00
5月19日、Zepp DiverCity。マカロニえんぴつが、今年4月より6か所12公演をまわってきたツアー【マカロックツアーvol.15 ~あやかりたい!煌めきビューチフルセッション編~】のツアーファイナル公演を開催した。各地でワンマンと対バンの2デイズ形式をとってきたこのツアー。対バン相手には、神奈川公演にVaundy、北海道公演にくるり、愛知公演にサンボマスター、福岡公演にウルフルズ、大阪公演にMy Hair is Badと、各地で豪華なアーティストが迎えられてきた。そして、東京ファイナル公演の対バン相手に迎えられたのは、ユニコーン。マカロニえんぴつにとって、大きな意味を持つ相手が対バンとして登場した。
フロントマンのはっとり(Gt./Vo.)の芸名がユニコーンの1989年のアルバム『服部』からとられているというエピソードは有名だが、他にも例えば、彼らの最新レパートリーのひとつ「リンジュー・ラヴ」でも、「臨終」ではなく「リンジュー」と表記したことに、ユニコーンの「リンジューマーチ」からの影響を感じることができる。マカロニえんぴつにとって、ユニコーンは最も大きな影響源のひとつなのだ。
結論から書いてしまうと、とても幸福な対バンライブだった。余計な謙遜も気づかいもお涙頂戴もなく、2組のロックバンドが誇り高く、横並びでライブをしていた。そのシンプルさが素晴らしい夜だった。ユニコーンはユニコーンであることを謳歌し、マカロニえんぴつはマカロニえんぴつであることを謳歌していた。はっとりがMCでユニコーンへの想いを語る場面はあったが、そこでも、殊更重く語ることはなかった。音を聴いてもらえば伝わると思ったのだろうし、その潔さが心地よかった。
先に登場したユニコーンは1曲目に「すばらしい日々」を持ってくるという初っ端からフルスロットルな演出で会場を驚きと興奮に満たした。その後も「ぐでたま」のぬいぐるみが鏡餅のように重ねられて鎮座し(奥田民生に蹴られたり投げられたりしていた)、「OH! MY RADIO」の冒頭で鳴る鳩時計も置かれた不思議なステージから繰り広げられる、多彩な音楽性と見事なハーモニーによる楽曲の数々。奥田民生が「エコー」で雄大な歌唱を響かせたかと思えば、「西の外れの物語」ではEBIがフロントに躍り出て華やかな存在感を放ち、かと思えば、流行りのマラソンシューズを履いたABEDONが「Boys & Girls」で力強いロックンローラーっぷりを見せつける。「この曲はもうあの人にあげました」という奥田の言葉に続き始まった「服部」では、マカロニえんぴつのはっとりがアフロのかつらと眼鏡を装着して登場し、奥田と共にメインボーカルをとるサプライズも。ラスト「HELLO」の壮絶さすら感じさせる名演に至るまで、圧倒的に、そして縦横無尽に、かつユーモラスに展開される「ユニコーン」という名の奇跡。それを目撃した。
ユニコーンに続いて登場したマカロニえんぴつは、前日に同会場で開催されたワンマンと同じく1曲目に「PLAY.」を高らかに響かせ、ライブをスタートさせた。MCでは、はっとりがこの会場に集まった自分たちのファンとユニコーンのファンに向けて「年齢や性別関係なく、同じ青春をしている音楽好き、ロック好きです」と語り掛ける。彼の「僕は今日死んでもいい、死んでもいいと思ったけど……まだ死ねない」という言葉に続いて始まった「リンジュー・ラヴ」。続く「幸せやそれに似たもの」の演奏が終わると、彼らはなだれ込むように立て続けにユニコーン「Maybe Blue」の一部分をカバーして会場を沸かせた(このカバー映像ははっとりがSNSに上げている)。思い起こせば昨年、マカロニえんぴつがスピッツの主催イベントに出演した際、その時もスピッツの曲をフルでカバーするのではなく、あくまでも一部分のカバーに留めていた。これが彼らの美学であり、リスペクトの在り方なのだろう。
本編のラストに「ヤングアダルト」を演奏すると、アンコールに応えて「なんでもないよ、」を披露。そして最後の最後に、ユニコーンの5人をステージ上に再び招き入れ、「演奏:マカロニえんぴつ、歌唱:ユニコーン+はっとり」の編成で、はっとり曰く「ユニコーンで特に好きな曲」だという「開店休業」を披露した。マカロニえんぴつがユニコーンという存在を祝福しているような、素晴らしい演奏だった。後輩の演奏に身を委ねながらハンドマイクで歌い繋ぐユニコーンの5人。その姿が、楽器を持った姿に勝るとも劣らないくらい奇跡的で、ユニコーンでしかなくて、本当に、本当に、眩しかった。
マカロニえんぴつには、「あこがれ」というタイトルの初期楽曲がある。昨年再録され、最新EP『wheel of life』にも収録されている。この「あこがれ」の中に、〈追いかけてるんじゃない 探してるんだ〉という歌詞がある。追いかけるのではなく、探し続けたから辿り着いた。この夜はまさに、そんな気高い対バンライブだった。
Text:天野史彬
Photo:酒井ダイスケ(マカロニえんぴつ/コラボ)、Kenji Miura(ユニコーン)
◎ライブ情報
【マカロックツアーvol.15 ~あやかりたい!煌めきビューチフルセッション編~】
2023年5月19日(金)
東京・Zepp DiverCity
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