2013/05/21
現在開催中の第66回カンヌ国際映画祭コンペティション部門へ、三池崇史監督作品『藁の楯 わらのたて』が、公式に選出され、現地時間の5月20日10時30分にフォトコールと公式記者会見を行った。
日本からは三池崇史監督と、主演の大沢たかお、松嶋菜々子の3人が駆けつけ笑顔で撮影に応じ、世界へアピールした。現地では開幕から雨が降っていたが、『藁の楯 わらのたて』フォトコールの際は爽やかな青空に恵まれ、20台以上のムービー、30台以上のスチールと100人以上の多くの報道陣が駆けつける熱狂ぶり。さらに、Hollywood Reporter日刊誌「SCREEN」の表紙を『藁の楯 わらのたて』が飾るなど、現地での本作品への注目度が伺える。最高賞の【パルムドール】は、26日に発表される。
<『藁の楯わらのたて』記者会見レポート>
Q.監督は“義務”という概念の強い日本社会についていかがですか?
三池監督:生きている人間のテーマとさほど変わらない。人間を描いていれば、警察官と犯罪者という立場ではあるが、そこに人間としての日常がある。それをシンプルに描いた結果、縦社会、日本社会で解決しづらい問題などが自然に浮き彫りになった。
Q.撮影の苦労について
三池監督:大変でしたね(笑)。日本映画のリミットを、作る側から崩していきたくて台湾に行く事になった。慣れていないことをしたストレスでいま頬が腫れています(笑)。
Q.原作とずいぶん変わっている点、とくに松嶋さんのキャラクターを(映画で)シングルマザーに変えた点については如何でしょうか。
松嶋:最初の台本では独身でした。でもその後わたしが演じることになって、監督が子持ちの役に変えてくださいました。原作はもちろん素晴らしい本ですが、映画でまた少し設定を変える事で、観客の方にもフレッシュな気持ちで見て頂けると思います。また私自身、シングルマザーというところで共感できましたし、より白岩の人物設定が作りやすかったです。自分の引き出しのなかから自然に役作りすることができたので、それほど難しいと感じることはありませんでした。
大沢:最終的に深いところに流れているものは原作と変わらないと思い、自分ではとくに(変更点は)意識せず、同じ気持ちで演じました。
Q.日本社会の伝統的な点について
三池監督:緩やかに変化はしていますが、日本人の独特の感覚は変わらないと思う。ただその表現の仕方がちょっと変わって来ているかもしれない。基本は変わらないと思いますね。むしろ失ったものを取り返そう、かつて持っていた日本人らしさをとりかえそう、という流れは逆に起きていると思う。
Q.カンヌに来た感想について三池監督:(カンヌの受け止められ方が変わったと感じるか?とくにこれがコンペに選ばれた点について)自分でも(コンペに選ばれて)本当にびっくりしました。主催者にも(質問を)投げかけてみたが、そんなことはない(*意外ではないという意味)と言われた。だから我々はなんの先入観もなく、作りたいものを作っていけばいいのかな、と。そのままやっていけばいいのかな、と感じさせてもらった。
松嶋:カンヌに来たのは16年ぶりです。そのときも大沢さんと一緒でテレビドラマ『深夜特急』の仕事でした。とても奇遇だと感じています。光栄です
大沢:カンヌに来られて本当によかったと思います。正式上映はこれからで緊張もしていますが。日本で空港を出るときにみなさんから頑張ってください、と言われていまさら頑張りようもないかなと思いましたが(笑)、でも来られてよかったと思います。
Q.ティエリー・フレモーはセレクションの発表のときにこの映画の紹介で、アメリカのクラシックなジャンル映画を彷彿させる素晴らしい映画と形容していました。あなた自身はどうご自身の映画の流れを見ていますか?よりクラシックなフォームになってきたと思いますか。
三池:自分自身が変化するということよりも、出会う作品が変化するという、その環境の変化によることだと思う。これまでやってきたことによって海外での自分の見られ方も変化している。だからクラシックな映画に戻ろうということではない。そもそも自分らしさを追求しないたちで、それをとくに今回は感じました。観客それぞれにそれぞれのやり方で楽しんでもらえばいいと思う。
Q.罪や人を許すことがひとつのテーマだが、それをどう自分のなかで消化して演じたのか。
松嶋:答えのない難しいテーマだと思います。大きなテーマというよりは、白岩のポジションを理解しようとしました。清丸に対して職業として付いている、一番足かせのない立場(個人的感情がないということ)であると思いながら、演じました。それを見ている方それぞれに解釈して頂くのがこの映画の狙いだと思います。
大沢:登場人物全員がそれなりの正義、見方を持っていると思います。それがぶつかりあって、微妙な均衡を保っているのが、社会そのものでもあると。でもその均衡が、事件や刺激によってあっという間に歯車が狂うのが、世の中そのものだというように考えました。そういう意味で、(そういう状況になったらどうなるのか)自分自身も問われているような気持ちで演じていました。
Q.なぜ台湾で撮ったのか、またその経験はどうだったか(台湾のジャーナリストよりの質問)
三池:以前低予算の作品を作っているとき、台湾で自由に撮らせてもらった経験があるので、今回思いついた。日本ではいざ大規模な作品を撮るとなると、安全第一で許可が降りないということがあった。また台湾で日本の新幹線が走っていたこともあり、台湾で撮影することになった。快く引き受けてくれて、またお世話になりました。
松嶋:台湾の方々もとても優しく接して頂き感謝しています。撮影はとてもハードで観光などをしている時間がなかったので、またぜひ今度は観光で行って、おいしいご飯を食べてみたいと思います。
大沢:台湾の方の協力がなかったら本当に撮影できなかったと思います。ぜひ公開の際も訪れたいと思います。
Q.ちょうど30年前に監督の師匠である今村昌平監督が『楢山節考』でパルムドールを撮りましたが、監督の思い出について一言。
三池監督:あれから30年なんですね。ということはある意味残酷さというか、振り返ったときの時間の早さを感じ、それが生きているという感触なのかと。今村さんからは自分の中にあるものをきちっと見つめて撮って行くということを学んだ気がします。映画とは、自分は人と違うのだということや個性を表現するための道具ではなく、自然に自分のなかにあるものから撮っていけばそれは自分の映画になるのだということを教わった気がします
Q.スピルバーグが今年は審査員長ですが、エンターテインメントはとかく評価されにくいという状況のなかで、どんな期待をしているか。
三池:パルムドールは頂けたらもちろん頂きたいと思いますが、自分はなかなかそういうタイプではないかなと(笑)。いろいろな作品があるなかで刺激になってくれればと。こういう場で上映される事、それ自体でもう十分満足しています。
◎『藁の楯 わらのたて』フォトコール&公式記者会見
日にち:5月20日(月) ※現地時間
時間:フォトコール 10:30~(日本時間5/20(月)15:00)
公式記者会見 11:00~(日本時間5/20(月)18:00)
場所:パレ・デ・フェスティバル
出席者:大沢たかお、松嶋菜々子、三池崇史監督
配給:ワーナー・ブラザース映画
公式HP:http://www.waranotate.jp
©木内一裕/講談社
©2013映画「藁の楯」製作委員会
関連記事
最新News
アクセスランキング
インタビュー・タイムマシン
注目の画像