2023/04/06 12:15
結成20周年を迎えたシドが、2022年3月にリリースしたアルバム『海辺』を引っ提げた全国ツアー【SID 20th Anniversary TOUR 2023 「海辺」】を、4月1日KT Zepp Yokohamaよりスタートさせた。
3年ぶりに声出しが解禁された本公演は、ゆっくりと潮が満ちていくように、愛が満ちていった空間だった。──と、こんなふうにライブレポートというミッションを受け、至って冷静に客観的に観ることが常なのだが、この日集まった観客の大歓声やメンバーの名前を呼ぶ声、その大歓声を浴びて嬉しそうな表情を浮かべ、結成20周年というキャリアをもちながらも随所で笑顔のアイコンタクトを取り合うメンバーを観るにつけ、“仕事モード”はどこへやら、気がつけば一緒に笑ったり一緒に泣いたりと、ただ無防備に感情をだだ漏れさせている我が身があった。
3年ぶりの声出し解禁に始まりはどこか遠慮がちだった歓声も、ライブが進むにつれてどんどん大きくなっていく。それに対して、「久しぶりに“マオ”って呼ばれたな。気持ちいいね」(マオ)、「みんなと声を出して、そして俺たちの音で思いが伝わって最高の1日になってくれたら嬉しいです」(明希)、「みんなお帰りー!!」(Shinji)、「気持ちいい! これだよね!」(ゆうや)と、喜びを隠しきれないメンバー。演奏中もコロナ以前のような手応えをつかむと、水を得た魚のようにパフォーマンスにも熱がこもり、その相乗効果で会場のボルテージは徐々に高まっていった。
リリースから約1年を経て、“令和歌謡”と謳ったアルバム『海辺』の世界観を具現化することになった彼らは、歌詞の物語をより深めるようなステージ演出と、それに寄り添う歌とアンサンブルで一曲一曲を丁寧に紡いでいく。たとえば「軽蔑」では変拍子でありながらメロディアスなサウンドとシリアスなヴォーカルが、ゆらりと立ち上る愛憎を感じさせたし、イントロのサックスの音色が印象的な「13月」では、一粒一粒の音の間合いにまでも切なさが感じ取れた。ツアーが始まったばかりなので詳細は避けるが、スクリーンによるステージ演出の中で、曲終わりに会場が思わずざわついた楽曲も。アルバム『海辺』のラストナンバーであり、“ID-S”会員限定公演の一曲目を飾った「海辺」は、マオにとって特別思い入れのある曲で、「みんなのことをずっと思っていました。そんな気持ちがたくさん詰まった曲です」と紹介。スケール感のあるこの曲をじっくりと歌い上げた後、「渋公(“ID-S”会員限定公演)では恐怖と戦いながらこの「海辺」を歌いましたが、今日は恐怖心が一つもなく歌えました」と語っていた。
「俺たちの20年、最高の年にするのでみんなついてきてください!」(明希)
「シドって最高だな! お前らも最高だぞ! いいツアーの始まりになりました、ありがとう」(Shinji)
「俺たちのライブってこれよ! 改めて再認識させてもらえたからもういいよね。乗り越えて俺らは強くなった!」(ゆうや)
明希、Shinji、ゆうやがツアーに向けたそれぞれの思いを語ってステージを降りた後、一人残ったマオは「みんなに一つ言いたかったことがあって。今日はみんなに“ただいま”を伝えたくて」と声を詰まらせた。「3年間声出しができなかったりとか、コロナの影響もあったんだけど、個人的にはめちゃくちゃ長かったんですよね。トンネルが長くて。渋公でスパッとカッコよくそのトンネルを抜けるつもりだったんですけど全然まだダメで、今日のライブもすごく怖かったんですけど、積み上げてきた努力は絶対俺を裏切らないと思っていたので、それだけは信じて頑張ってきたので、みなさんのおかげで最高のライブができました。本当にありがとう」と感謝を伝えると、「俺ここからまだまだいくから。こんなもんじゃないから。新しい自分として生まれ変わってどんどんかっこいい俺になってシドを引っ張っていくので、これからもよろしく!」と力強い笑顔を見せた。
様々な困難を乗り越えて結成20周年を迎えたシドは、より強靭になっていた。ライブ活動の休止を発表する前、最後の公演となった2021年10月のZepp Fukuoka公演でマオは約束したのだ。「必ず最強のヴォーカリストとしてまた帰ってくる」と。その約束どおり最強になって帰ってきたシドが、ファンの歓声というカンフルを再び手に入れ、このツアーを経てどこまでパワーアップしていくのか、その進化の果てを楽しみにしている。
TEXT:大窪 由香
PHOTO:今元 秀明
◎公演情報
【SID 20th Anniversary TOUR 2023 「海辺」】
4月01日(土)横浜・KT Zepp Yokohama
4月09日(日)福岡・Zepp Fukuoka
4月14日(金)名古屋・Zepp Nagoya
4月16日(日)大阪・ Zepp Osaka Bayside
5月04日(木・祝)札幌・Zepp Sapporo
5月06日(土)仙台・SENDAI GIGS
5月13日(土)東京・Zepp DiverCity TOKYO
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