Billboard JAPAN


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2023/04/07

ビルボードジャパン×ビルボードライブ企画 観覧者から募集したタキシードのライブレポートを公開

 2022年10月より、ビルボードジャパンとビルボードライブによるライブレポート特別企画がスタートした。

 こちらはビルボードライブで行われる公演を対象に、観覧者からライブレポートを募集してビルボードジャパンに掲載する企画となっている。

 タキシードは2月27日にビルボードライブ大阪、3月1日にビルボードライブ東京、3月2日にビルボードライブ横浜で公演を開催。今回、Club BBL会員を対象にライブレポートを募集した。

 なお今後、本企画は一定の参加条件を満たしたClub BBL会員を対象として実施することが決定している。次回対象アーティストや企画の詳細は、随時発表する予定だ。


<ライブレポート1>

 2023年3月2日、ビルボードライブ横浜にて、ディスコ&ファンクユニット、タキシードのライブが開催された。

 タキシードは、カルフォルニアを中心に活動するシンガーソングライター兼プロデューサーのメイヤー・ホーソーンと、シアトルを拠点とするヒップホップ・プロデューサー、ジェイク・ワンのユニットである。共に【グラミー賞】にノミネートされた経験がある実力者のユニットの生み出す80'sへのオマージュあふれるエモーショナルなサウンドが、日本でも静かなブームを呼んでおり、来日公演が実現した。ギャビン・テーリック(Vo.)、クリフトン・マキシー・ジュニア(Key.)、ノエ・ロドリゲス(Ba.)、ベンジャミン・デンプス(Dr.)も加わり、80'sを彷彿とさせながら、それを現代の音楽シーンに結びつけた新しい世界を観客に余すところなく聴かせてくれた。

 トップがブラウンでボトムがホワイト、ジェイクはそれを逆にしたそろいのスーツという、スタイリッシュなファッションで登場したメイヤー。激しいベース音がおもむろに始まり、ドラムが繰り出すファンクビートが甲高く鳴り響くと、会場はネオンピンクのライトで照らされ、会場はあっという間に80'sのディスコクラブに変身した。たたみかけるようにプレイされるダンサブルなナンバーに観客も立ち上がらんばかりの熱狂ぶりだ。メイヤーのクールな歌声を彩るジェイクのコーラスやキーボードのインプロヴィゼーション、女性ボーカルギャビンとのコール&レスポンスも絶品で、曲の最後に決めポーズをとるスタイルも懐かしさを感じさせながら盛り上がる。ステージ中央に設置されたサイレンのような音が出る装置も、雰囲気をつくっていた。70's、80's世代の観客は当時にタイムスリップしたかのような気分になり、それ以降の世代はテレビのアーカイブ番組で観た当時の音楽シーンを回想したことだろう。

 そうした過去へのリスペクトだけで終わっているわけではないのが、タキシードの大きな魅力だ。パフォーマンスが終わると、英語で楽しそうにトークを繰り広げる。そこから、メイヤーの「さあ、行こう」と言わんばかりのジャスチャーから、ベンジャミンのドラムが繰り出すのは現代のヒップホップシーンのビートだ。そこに、ジェイクのしなやかで爽快なキーボード、さらにメイヤーの歌声が加わっていく。二人の軽快なダンスが入ったところで、80'sのエッセンスが散りばめられた新しい音楽が産まれてくる。互いにヒップホップをルーツに持つという2人が、ヒップホップの上に80'sのクリスタルなサウンドを落とし込みながら、さらに自分たちのオリジナリティで楽曲を染め上げた。

 懐かしさを感じさせるメロディックで縦ノリなサウンドだけではなく、大胆にヒップホップの要素も取り入れながら、古き良き時代のソウルと、現代の音楽を絶妙なバランスで融合させているところがこの上なく魅力的だ。タキシードの音楽に、「ニューモダン」「レトロモダン」という言葉は近いようで当てはまらない。これからの音楽シーンをぐいぐいと牽引していきそうな、レガシーとリアリティを見事にマッチさせた新しい音楽が今、ここで産まれている、そんな思いにふけりながら会場の盛り上がりに身を委ねた。

2023年3月2日 ビルボードライブ横浜

Text by komachiya


<ライブレポート2>

 期待に膨らむ場内の電気が暗くなると、先に登場したのはサポートメンバーの3人。ドラムスのベンジャミン・テンプスとベースのノエ・ロドリゲスが中央となって最初の一音から場内の空気を一変させる。グルーヴ感溢れるビートのなか、大歓声と拍手に迎えられながらメイヤー・ホーソーンとジェイク・ワンが登場。二人はパーティーに対する礼服さながらフォーマル感のあるライトブラウンとホワイトのジャケットとパンツに身を包んで颯爽と登場した。「THIS IS 4 YOU」「The Tuxedo Way 」「YOU & ME」「SO GOOD」と畳みかけるようにナンバーが続いていく。モダン・ファンク・ユニットたる彼らの音は、往年のディスコを彷彿とさせながらも、懐かしさだけでは終わらない新しい現代の音がうまくミックスされていて実にクールだ。

 メイヤーのソウルフルかつパワフルなボーカルでほぼノンストップでショーは進んでいった。身のこなしがまさにアメリカン・ショータイム感に溢れ、無駄がないのに躍動的でじつに垢抜けている。ところどころでタイミングを合わせてターンを決めるのが実にかっこいい。観客たちは着席ではあるものの、ハッピーな音のうねりに知らずに身体が動き出してしまう。ところどころでメイヤーが観客とアイコンタクトをとったり、指先でタッチを交わしたり、コールアンドレスポンスを仕掛けながらどんどん場内を盛り上げていく。

 途中、ジェイクのショルダーキーボードの機材故障と、メイヤーがキメの場面で押す「Ho!ボタン」の不調とアクシデントに見舞われたが、「参っちゃうね、でもこんなことはたいしたことではないさ!」とばかりにマイヤーが笑い転げて何事もなかったかのように演奏は続行。さすが【グラミー賞】候補にもなったプロデューサーでもあり数々のステージを踏んできた実力者達だ。サポートキーボードのクリフトン・マキシー・ジュニアの見事なバックアップがジェイクをカバーし、全体のサウンドのバランスをうまく保っていた。機材トラブルで不覚にも見せ場が少なくなってしまったジェイクであるが、無事だったモーグシンセで健闘し、要所要所で特徴的なダンスを見せ、メイヤーとポーズを決めて観客を盛り上げていった。

 出色だったのは女性ボーカリストのギャビン・テューレック。カーヴィーなボディをホワイトのスパンコールいっぱいのドレスで包みこんでいる。ステージ上を動き回りながら、伸びやかに、時に蠱惑的に自由自在でスパイスの効いたボーカルで楽曲に華を添えた。メイヤーとの息もピッタリだ。

 あっという間にラストの「Do IT!」で客席のボルテージはマックスに。演奏後、笑顔で観客とタッチを交わしながら彼らは花道を退場していった。

 まだまだ感染予防の観点からコロナ禍による規制が完全にはなくならない中、思い切り声を上げたり、立ち上がって踊ったりすることはかなわなかったが、それでも最高にハッピーで楽しい圧巻のステージだった。コロナ禍が完全に落ち着くころ、なんの制約もなしに今度こそ完全燃焼で参加したい。どうか遠からぬうちにタキシードの2人とサポートメンバーの4人にはぜひまた横浜の地を訪れてほしい。

2023年3月2日 ビルボードライブ横浜

Text by May SAIKAI

Photo by MasanoriNaruse


◎公演情報
2023年2月27日(月)大阪・ビルボードライブ大阪
2023年3月1日(水)東京・ビルボードライブ東京
2023年3月2日(木)神奈川・ビルボードライブ横浜

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