2023/03/20
今も昔も、テレビドラマの主題歌は大型タイアップとして非常に効果的だ。90年代のトレンディドラマの時代ほどではないかもしれないが、そこから生まれるヒットや注目されるアーティストは数多い。1月クールのドラマ主題歌の場合、際立ったチャートアクションが見られるのが、由薫の「星月夜」だ。テレビ朝日系の『星降る夜に』の主題歌として使用されており、2023年3月15日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”では9位を記録している(【表1】)。
由薫はインディーズでの活動を経て、昨年6月にONE OK ROCKのToruのプロデュースによりデビューしたニューカマーのシンガーだ。デビュー曲「lullaby」が、いきなり映画『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』の主題歌という大型タイアップを獲得。その後も「No Stars」、「gold」と発表する楽曲はいずれも話題となり、今回のドラマ主題歌「星月夜」で一気に勝負をかけたといっていいだろう。ドラマティックでエモーショナルなこの楽曲は、配信解禁直後の2月15日公開のJAPAN HOT 100で一気に9位で登場し、その後は7位、9位、5位と推移しながら5週連続トップ10をキープしているのだ。
ただ、トップ10入りが続いているとはいえ「星月夜」の本当の勝負はこれからだ。ドラマはすでに最終回を迎えており、あとはいかにアーティストパワーを発揮し、楽曲そのものが独り歩きできるかどうかにかかっている。注目すべきは、ダウンロード数が安定して5位以内に入り続けていること、そしてストリーミング数がじわじわと右肩上がりで上昇していることだ。動画再生数も安定していることもあり、ロングヒットとなる可能性は十分ある。
あとは、楽曲が今後も聴かれ続けていくためには、アーティストがどう展開していくかによっても変わってくるだろう。由薫自身の話題性や露出も大きく関わってくるのは確かだ。幸い初のツアーが決まったり、米国テキサスの音楽イベント【2023 SXSW Music Festival】への出演も決定したりと話題は尽きない。もともとバイリンガルでもある彼女だけに、ONE OK ROCKとのつながりも含めて海外で注目を集めてグローバルな展開を進めていってもおかしくはないだろう。そういった意味においても「星月夜」は、ドラマ主題歌という枠にとどまらず、様々な可能性をはらんだ一曲といってもいいのかもしれない。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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