2023/01/10 20:00
ClariSが2022年12月16日と17日、TOKYO DOME CITY HALLにて【ClariS HALL CONCERT 2022 ~ Let’s Snow Parade ! ~】を開催した。
同公演に先駆けて、12月7日にミニアルバム『WINTER TRACKS ー冬のうたー』を発売したClariS。同作は、ClariSが四季を彩るミニアルバム・シリーズの最新作として、2016年3月の“春のうた”、2019年8月の“夏のうた”に続き、約3年ぶりのリリースとなったもの。収録曲は往年の名曲カバーを中心に、オリジナル曲も含まれており、メンバー自身が選曲するなど思い入れもたっぷり。今回のライブでも、中盤の目玉のひとつであるカバー・コーナーとして「ORION」(中島美嘉)や「White Love」(SPEED)などを披露したわけだが、同じくらいに感慨深くさせられたのが、ClariSの楽曲ストックの豊富さだ。
幅広い楽曲ストックは、幅広い“選択肢”となる。今年、デビュー13周年目を迎えるユニットのそれは伊達じゃない。歌詞やトラック、何パターンにもわたる衣装、照明などのステージ演出、さらには楽曲を披露する季節やシチュエーションまで。ClariSが作り上げる“だからこそ”なこだわりが詰まったステージを、12月17日夜公演の模様を綴った本稿を通じて、ほんの少しだけ覗いてみてほしい。
クララとカレンが最初に登場したとき、スカーレットのドレスにウエストベルトとヒール、左手のみ身につけたグローブのブラックがスタイルを引き締める大人な装いだった。この日のスタート・ナンバーは「It's showtime!!」。スウィング・ジャズに心躍る一曲だが、まだサビ前の段階では二人がセンター・ステージで歌うのみ。後方にあるステージの全貌は明かされない。
すると、サビで後方の幕がゆっくりと開き、白い光の眩さに一気に引き込まれる。ClariSが従えるのは、8名のダンサーとシスター姿の3名のコーラス。ブロードウェイをリスペクトしたかのようなミュージカルの光景。ヒールタップをするエレガントでキュートな振り付け。曲中に飛び交う<Shall we dance?><Are you ready?>といったフレーズがすべてを告げてくれる。【ClariS HALL CONCERT 2022 ~ Let’s Snow Parade ! ~】の開幕だ。
ライブ1曲目のこの位置、しかもこの楽曲、そしてこの衣装と、早くも“だからこそ”ばかりな価値を届けてくれた「It's showtime!!」。筆者もライターとして多くのアーティストのライブを見てきたわけだが、ここまで“開幕感”のあるステージはなかなかないと言いきれる。「“ショータイム”という言葉の語源は、このパフォーマンスを観た誰かが考えたのでは?」と思わされるほど最高のスターターだった。
そこからミュージカルの世界観を引き継いだ「Fairy Party」を経て、4曲目には名曲「ヒトリゴト」を披露。ClariSの持ち味である“ナチュラルかわいい”ポップスで、会場全体に笑顔を振りまいていく。先ほどまで“だからこその価値”などと難しいことを考えていたわけだが、そんなことはもう考えなくていい。一瞬で「最高!」といい意味での手のひら返し、ならびにこの日の水道橋で誰よりも笑顔にさせられてしまった。
ちなみに、2022年は「ヒトリゴト」がオープニング・テーマに起用されたTVアニメ『エロマンガ先生』放送5周年をはじめ、2022年12月までの再放送、さらには原作ノベルの完結、2023年1月25日には『エロマンガ先生 Blu-ray Disc BOX 』発売が発表された1年でもある。同作周辺でなにかと話題の多い1年だっただけに、「ヒトリゴト」をやらないはずがなかったわけだ。
その後は、最新ミニアルバムになぞらえた“冬曲”パートに。8曲目「ひとつだけ」では、悴んだ心をそっとときほぐす、あるいは街に音の雪を降らせるように、歌声を通してじっくりと情景を紡いでいく。終盤のコーラスの掛け合いも微笑ましい。よく、いい曲はどんな季節に聴いても素晴らしいと言うが、楽曲で歌われるのと同じ季節に聴く“特別感”や、心への沁み具合にはやはり代えがたいものもある。<雪の夜に 書き残した 想いはただひとつ>と歌うこの楽曲もまた同様。そんな冬“だからこそ”のパフォーマンスの素晴らしさは、歌い終わりに客席から食い気味で拍手が起きていたことが何よりの証拠となるに違いない。
また、最新ミニアルバムでは、寒さのなかで感じる“温かさ”を表現したいとも語られていたが、それを象徴していたのが同作収録のオリジナル曲「スノーライト」。Bメロのアカペラや、全体を通して“刹那かわいい”と思わせる譜割など、これぞClariSが放つ最新モードの“冬うた”なのだと実感させられた。36℃の歌声がまた冬のうれしさを教えてくれる。
そこから前述のカバー・コーナーを終えてライブ終盤に。少し話は飛ぶのだが、この日のラスト・ナンバーには「ALIVE」が歌唱された。2022年を語るうえで欠かせない大人気TVアニメ『リコリス・リコイル』オープニング・テーマ、そしてYouTubeチャンネル『THE FIRST TAKE』では、本稿執筆時点で230万回再生を記録するなど、ClariSの存在をさらに世界に広めた同楽曲(2023年1月4日時点)。それをなんと、千秋楽公演でのみ『THE FIRST TAKE』で披露したニューアレンジ・バージョンでパフォーマンスするというのだ。歌唱前には「すっごいドキドキしてきた」「"ファーストテイク”だもんね」と、ライブの場もまた“一発勝負”だというMCで笑いをさらう。
そんな特別バージョンは、しっとりとしたアレンジが冬らしいとも感じられた。原曲よりも二人のハーモニーをじっくりと味わわせてくれたほか、ステージへの照明演出も白色のスポットライトのみ。まさに身ひとつ、歌の力だけでシンプルに客席を圧倒していく。お互いにときどき顔を向けあい、最後は誇張抜きで、歌声を止ませるタイミングまで寸分のズレもなかった。単純にアッパー・チューンで場を盛り上げるアンコールももちろん最高なものだが、今回は歌の力だけで2022年の存在証明に代えたClariS。二人の確かな足取りを感じられるパフォーマンスだった。
話を巻き戻して、本編終盤には「STEP」を披露。同楽曲は「irony」「nexus」など、ClariSの原点といえる楽曲を生んできたkz(livetune)によるもので、曲中には<大事な今を 手放すのは怖いよね でも待ち望んだ全ては そこにあるの>というフレーズも。まさにこの数年間の総決算のような歌詞であり、メンバー本人らを含めて誰しもが各々の解釈を大切にできるスーパー・メッセージ・ソングなわけだが……。
思えば、アンコールでも語られた通り、前回の【ClariS HALL CONCERT 2022 ~Twinkle Summer Dreams~】にて3年10か月ぶりのファンとの対面を果たし、いわばコロナ禍での清算をできていたからこそ、今回は2022年を締めくくり、かつClariSらしさを存分に伝えられるステージを目指せたのだろう。つまりは、あのライブがあったから、今回のように純粋に“好き”や“やりたい”想いを詰め込んだステージが届けられたのだ。本稿の冒頭に記したように、ClariSの想いは"だからこそ”なこだわりが余すところなく感じられた。そんな他の誰でもない、ClariS“だからこそ”、我々も好きにさせられてしまうのだ。
Text:一条皓太
◎公演情報
【ClariS HALL CONCERT 2022 ~ Let’s Snow Parade ! ~】
2022年12月16日・17日
東京・TOKYO DOME CITY HALL
<セットリスト>
1. It's showtime!!
2. Fairy Party
3. Sweet Holic
4. ヒトリゴト
5. Prism
6. ウソツキ
7. eternally
8. ひとつだけ
9. グラスプ
10. スノーライト
11. WHITE BREATH
12. White Love
13. ORION
14. サイレント・イヴ
15. Butterfly Regret
16. Brave (※17日昼公演のみ「blossom」)
17. border
18. again
19. STEP(※17日昼公演のみ「irony」)
20. コネクト
21. カラフル
<ENCORE>
22. 仮面ジュブナイル
23. ALIVE
◎公演情報
【ClariS Spring LIVE 2023 in Zepp Haneda】
2023年5月6日(土)・ 7日(日)
開場 16:00 / 開演 17:00 (予定)
東京・Zepp Haneda
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