2022/12/26
これほどまでタイアップ効果を実感するリバイバル・ヒットはないのではないだろうか。宇多田ヒカルが、1999年に発表したデビュー・アルバム『First Love』のタイトル曲「First Love」が、2022年12月21日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で5位を記録しているのだ(【表1】)。
もちろん大きな要因としては、Netflixで11月24日から世界配信されているドラマ『First Love 初恋』のタイアップがあるからだ。満島ひかりと佐藤健が主演したラブストーリーは大反響となり、ドラマのランキングでは軒並み1位。しかも、台湾や香港といったアジア各国でも大人気らしい。
このタイアップのタイミングで、12月9日には新たにミックスされた「First Love (2022 Mix)」が配信され、7インチのアナログ・レコードもリリースされている。まさに様々な角度でチャート上昇の要素がある。最も大きな影響を与えているのは、やはりストリーミング。強豪がひしめく中で、Official髭男dism、米津玄師に続く再生回数を稼いでいるというのは非常に大きい。ダウンロードも15位に上昇しており、過去のカタログは配信に強いことがよくわかる。加えて、ラジオのオンエア回数が4位と、こちらもメディアの注目度の高さが表れているといえるだろう。さらに忘れてはならないのが、カラオケの歌唱回数だ。こちらも21位と急上昇しており、まだまだ右肩上がりでポイントを伸ばしていく可能性が高い。
「First Love」は、1999年当時も名曲との誉れ高く、『魔女の条件』というドラマ主題歌としてヒットした楽曲だ。23年前とはいえ実績があるだけに、今回の新たなドラマ・タイアップによるリバイバル・ヒットは必然といってもいいだろう。さらに言えば、昨今の宇多田ヒカルは、『BADモード』が海外のメディアで高い評価を得たり、<88rising>と共に【コーチェラ・フェスティバル】に出演して話題を呼んだりと、世界的に大きな追い風が吹いているといってもいい。このタイミングで過去の名曲にスポットが当たることで、楽曲だけでなくアーティストそのものの価値がさらに高まるはずだろうし、次の作品の結果にもつながるだろう。そういった観点で見ても、「First Love」のヒットは大きな意味を持つのだ。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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