2022/10/28
クリーン・バンディットとの「ロッカバイ」やマシュメロとの「フレンズ」など、数々のヒットを放ってきた、英エセックス出身のシンガーソングライター、アン・マリーが約3年ぶりの来日を果たした。最新アルバム『セラピー』を引っさげた今回のジャパン・ツアーは東京、大阪公演ともにソールドアウトとなり、多幸感溢れるポップなステージで集まった大勢のファンを魅了した。
そんな彼女を東京公演の直前にキャッチ。今回のツアー、Aitchとの最新シングル「サイコ」やSEVENTEENとのコラボ、限りなくリアルな表現を目指す理由、さらには待望のニュー・アルバムについても少しだけ話してくれた。
――3年ぶりに日本に戻ってきた感想はいかがですか?前回の来日はフジロックでしたね。
本当に久しぶりの来日です。パンデミック後、絶対にアジアに行きたいと思っていたので、可能な限り早く戻って来ることができて嬉しいです。
――東京を観光する時間はありましたか?
台湾での公演が叶わなかったので、数日前に東京入りしました。何年か前にライブのために来日した時は時間がなくて、日本に来たと実感することがあまりできなかったけれど、今回は色々楽しんでいます。買い物をしたり、美味しいご飯を食べたり、ドッグ・カフェにも行きました。カラオケをすることも楽しみにしてます。たくさん予定を入れていて、とっても楽しく過ごしています。
――今夜のライブ会場である豊洲PITの目の前にあるチーム・ラボにも行きましたか?
もちろん、自分の家があんな感じだったらいいなと思いました! たくさん写真も撮りましたよ。
――パンデミックを経て、やっと世界を周るツアーができるのは、多くのアーティストにとって喜ばしいことだと思います。
本当にそう。みんなと繋がるという感覚が、ここまで恋しくなるとは思ってもみなかった。パンデミック後に行っているライブで、再びみんなが一緒にいるのを見られるのは素敵なことで、私にとって最も美しいのはステージから観客が一つになっているのを見ることなんです。今夜もそうやって、みんなが一緒にいる光景を見れるのを楽しみにしています。
――今回のツアーは、不適応などを意味する【Dysfunctional Tour】と題されています。
なんというか、ぴったりなタイトルですよね(笑)。でも、すごく順調に進んでいます。またツアーを行って、ライブをして、歌えることができて最高だし、ツアーが大好きなんだと再確認しました。そういう感覚が必要なタイプなので、できるだけたくさんツアーをすることは、自分の性に合っているんだと思います。
――あなたにとってのセラピーという感じでしょうか?
私が書く曲はすべて実話なので、それらを歌うことはセラピーのようなものです。自分が経験してきたことや学んできたことを思い出し、曲を書いたときの自分と今の自分を比べてみるんです。なかなかすごい経験だと思います。特に今日のように1時間半のショーだと、昔の曲から新しい曲まで演奏するので、自分がどれだけ成長し、どこへ向かおうとしているのかが明確になります。とてつもない経験であることは間違いないですね。
――最新アルバムも『セラピー』というタイトルですが、リリースから1年を経て作品を振り返ってみていかがですか?
今でもとても気に入っています。アルバムというフォーマットが大好きなのは、ある瞬間を捉えているからで、特にパンデミック中、自分にとってセラピーは大きな意味を成しました。たくさんのセラピーを行い、そのおかげでロックダウンを乗り越えることができた。私は、より良い人間になり、それを音楽に注ぎ込むために人生を捧げてきました。歳を重ねてアルバムを聴き返したとき、セラピーのおかげで何を目指し、その結果どのような人間になったかを振り返ることができると思うんです。なので、自分にとっては重要な作品です。
――今作には、様々なタイプのアーティストが参加していますが、コラボに惹かれる理由を教えてください。
理由は本当に様々です。コラボレーションを実現させる方法はいくつかあります。私が相手に曲を送ることもできるし、一緒にスタジオに入ることもできます。逆に、相手から曲が届くこともあります。他の人の視点や考え方を曲に取り入れることが好きで、そこがコラボに惹かれる理由でもあります。自分で書いた曲には、自分なりの視点があり、それが伝えたいことなんです。でも、そこに誰かが参加することで、1つの曲なのに2つの脳みそを持つことが可能になりますよね。なぜかわからないけど、そこがワクワクするポイントなんです。
――異なる視点が加わることで、より共感性も高くなるような気がしますしね。
その通り。自分の意見を人に押し付けるのは嫌ですし、そんな気は全くないです。
――コラボといえば、ラッパーのAitchとの最新シングル「サイコ」がUKチャートを急上昇中です。
そう、とてもエキサイティングです!
――先程おっしゃっていたように、この曲も実際に起こったことにインスパイアされているんですよね?
どの曲もそうです。ご存知の通り、元カレについての曲もたくさんありますし、自分を愛すること、ひとり親のこと、色々なテーマの曲があるけど、やっぱりひどい元カレのことが中心ですね(笑)。多くの人が共感できるトピックですし、みんなパートナーに対する怒りを表現した歌を求めているんじゃないでしょうか。私は、そういった経験を曲にして、毎日ステージで感情を発散させることができますが、自分自身が体験したことなので、悲しくもあります。誰かと別れたり、何かに怒っているときに、「あの人のあの曲を今すぐ聴いて、怒りを吐き出したい、叫びたい」と思ってもらえるようなアーティストになりたいんです。そのために、できるだけリアルな表現を目指しているんです。
――逆に、ここ最近あなたが「怒りを吐き出したい、叫びたい」と思った時に聴いた曲はありますか?
最近ではないですが、私はアラニス・モリセットやクリスティーナ・アギレラなどを聴いて育ちましたし、ピンク(P!nk)は本当に大切な存在で、エミネムもそうでした。どのようなアーティストであっても、曲がリアルでエモーショナルなものであれば助けになってくれ、私はそういった人々からインスピレーションを得てきました。これまでの人生でよく聴いてきた曲について考えてみると、自分がハードルを乗り越えるためにその時々に必要な曲でした。だから、私はできる限りリアルでいたいですし、みんなも同じように行動してくれることを願っています。
――そして「Psycho」の少し前には、あなたが参加しているSEVENTEENの「_World」の新バージョンもリリースされました。このコラボは、どのように実現したのでしょうか?
私の元には、様々なアーティストから日々たくさん曲が届くのですが、この曲はマネージャー宛に送られてきました。普段はオファーをそのまま受けることはあまりしないんです。相手のアーティストについて知りたいですし、スタジオにも一緒に入りたいので。SEVENTEENは大好きなアーティストで、曲もとても気に入ったので引き受けました。私が自分の歌詞を書けるスペースを与えてくれたので、速攻スタジオに入ってレコーディングを行いました。完成した曲にはとても満足しています。
――あなたが歌詞を書けるスペースを与えてくれたのは素敵ですね。
本当に大切なことだと思います。私はコラボレーションする時に、いつも相手が感じたことを何でも書けるようなスペースを与えています。そうすると本当の意味でのコラボレーションになりますよね。
――今後も多言語の曲を作ったり、アジアのアーティストと一緒に仕事をすることに興味はありますか?
世界中のアーティストとコラボがしたいと思っています。私はあらゆる種類の音楽や言語、様々な言語で歌われた音楽が大好きです。英語の楽曲だと歌詞に集中しがちで、音楽をあまり聞いていない時がたまにあります。でも、自分が理解できない言語の楽曲だと曲全体を感じることができて、自分にとって普段とは全く異なる体験になるんです。なので、様々な国のアーティストと色々な言語でコラボレーションしたいですね。
――人気オーディション番組『ザ・ヴォイス』UK版でコーチも務めていますが、あなたがキャリア初期の自分に贈りたいアドバイスはありますか?
アーティストとしての自分を理解する前に、まず自分自身を理解することでしょうか。私はこの二つを同時に行わなければなりませんでした。自分が何者で、何者になりたいのか、よく分かっていなかったんです。今だったら、「これが私で、これが私の作りたい音楽だからこうする」と、もっとはっきり言えると思うんですが、以前は少し迷いがありました。経験上、学びながらやるということが多くて、それはそれでクールですが、事前に答えが分かっていたらもっと楽だっただろうと思います。でも、わからないものなんですよね。そうでなければ、生まれながらにしてすべての知識を持っていることになります。それも悪くないですけどね(笑)。
――では最後に今後の予定を教えてください。ニュー・アルバムの制作には取り掛かっているのでしょうか?
はい、3枚目のアルバムはほぼ完成していて、「Psycho」がアルバムからの1stシングルになっています。今後さらに収録曲を発表していって、来年にはアルバムをリリースできたらと思っています。
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