2022/08/18 18:00
ClariSが8月11日、東京・LINE CUBE SHIBUYAにて開催した【ClariS HALL CONCERT 2022 ~Twinkle Summer Dreams~】は、彼女たちとファンにとって、本当に様々な想いが詰め込まれたステージだった。
約2年10か月ぶりとなる待望のファンとの時間。今年4月に発売した約3年半ぶりのアルバム『Parfaitone』、2020年秋にメジャー・デビュー10周年を迎えてから初となる有観客コンサート、さらにタイトルの“Twinkle Summer Dreams”=輝く夏の夢の物語。どれかひとつだけでもコンサートの冠を飾れるような要素が、この日のステージには一挙に集約されたわけだ。
そんな今回のコンサートでは、“大切な人への想い”がテーマとされた。物語調で進行したステージは、メンバーのカレンが原案を担当。“天空の世界-天の川-”と地球を舞台に、恋人同士のオーウェンとシャーロットが毎日ひとつずつ、人々の願いを叶えるために天空の世界を離れられないと話し合うところから始まる。彼らが地球の美しさを知るために、自身の“使い”として星座の魂を込めてこの星に送ったのが、まさしくクララとカレンだ。彼女たちは冒険を通して、後述する苦難を乗り越えていくのだが……。
さて、この日の歌唱曲はアンコールを含めて全23曲。『Parfaitone』収録曲もほとんど披露したのだが、なかでもクララとカレンが初めて体験する海の美しさに見惚れ、何も知らぬまま深海へと飛び込んでいくセクションは見どころだった。ここでは順に、TAKURO(GLAY)が作詞作曲を担当した「瞳の中のローレライ」と次曲「Mermaid」で、“海×切なさ”の同テーマながらも、まったく異なる表情で歌い分けをする姿に引き込まれる。
続く「Summer Delay」は、大人びた歌詞とそれを歌うClariSの憂いを帯びた歌声、それらに反するように無邪気で、瑞々しくダイナミックなトラックが、いい意味でのズレとして印象的に映る。過去の恋愛や未熟さを顧みて、逃げ水を追いかけてしまうようなノスタルジックさ。思わず“あの夏”へと時間を巻き戻したくなる。まさにこの時季にこそ聴きたいナンバーだし、パフォーマンスをするClariSと、物語のクララとカレンが交錯するような、不思議な気持ちにさせられる。「Summer Delay」や、この日の3曲目「CLICK」などを含めて、彼女たちの真骨頂たるシンセ・ポップの強度には本当に圧倒された。
そこから「オルゴール」で木漏れ日のような温もりが会場全体を包むと、「ホログラム」ではようやく二人が素のクララとカレンとしてお喋りをしてくれる。ここでは、それぞれのメンバー・カラーであるパステルピンク、パステルグリーンのサイリウムを振ってほしいと客席に求めたのだが、筆者はあまりにステージに没入していたためか、誠に勝手ながらこの一連の流れを見て「よかった、今日のClariSもちゃんと人間だった」と思わず安心してしまったほど。
話は遡って「瞳の中のローレライ」の前には「Fight!!」「新世界ビーナス」も披露。振り返ると、4曲目「Fight!!」から9曲目「オルゴール」までの流れは、すべてアルバムの収録曲順の通りだったのだ。また、物語とアルバムをリンクさせるべく、インタールードSEとして「Entr'acte」を挿入していた点で、大々的にこそ打ち出しはしなかったものの、『Parfaitone』の世界観も漏れなく届けたいという演者側の強い意志を感じられたことも付け加えておきたい。
コンサート後半、クララとカレンの冒険も佳境に。彼女たちが一時、死の瀬戸際を彷徨った際には、来月9月14日発売予定のニューシングル表題曲「Masquerade」など、ゴシック・ワルツ/ロックで雰囲気を演出。そこから再び生命力をみなぎらせる場面では、今年8月に発表したばかりの新曲「ALIVE」や、代表曲「コネクト」をついにドロップ。特に「コネクト」はユニットの活動初期に生まれたマスターピースとして、客席からのクラップもこの日最大の迫力になるなど盛り上がりもひとしお。
本編最後には「これからもずっと、みんなの幸せに寄り添っていけますように」というメッセージを添えながら、お互いの未来を祝福するアッパー・チューン「reunion」とともに、クララとカレンの物語はハッピーエンドを迎えた。
ここまでで何が言いたいかというと、例えば<あぁ 見上げた星空の中には/数え切れない思い出がある/私もう一人じゃないんだね>と歌う19曲目「SHIORI」を筆頭に、場面ごとに異なるシチュエーションに対して、これほど寄り添える楽曲がどれだけあるのかと思わされるほど、ClariSの10年間以上にわたるキャリアと、それに伴う楽曲ストックの豊富さにとにかく驚かされたのだ。
また、映像として投影されたストーリー・ムービーは基本的に、その後の楽曲を披露するいい意味でのきっかけ作りにすぎないものに。クララとカレンが海に飛び込んだ前述のシーンでも、彼女たちがそこで何を見て、何を受け取ったのか、ストーリーの重要な部分までは説明せず、むしろその後の披露曲を受けて、観客側の自由な想像に任せるものだった。それでも、クララとカレンの目撃した景色や抱いた感情は伝わってくる。ClariSの楽曲は、なんて雄弁な作品ばかりなのだろう。
さらに、ClariSはそれぞれ二人のボーカリストでありながら、彼女たちが声を重ねると、ただのハーモニーではなく、二人の歌声なのに“一人”が歌っているように届いてくるのだ。ここまで“ユニットの歌声”が完成している例もなかなか存在しないだろう。クララとカレンは一緒のようで違うし、違うようで一緒なのである。
ところで本稿冒頭、今回のテーマが“大切な人への想い”だと綴ったが、その背景には2020年春に開催予定だった全国ツアーがやむなく中止となり、当たり前が当たり前じゃないことを自覚した想いがあると、アンコールのMCにて明かされた。本当ならばもっと早く再会したかった。それでも、この1日で見せてもらった夏の景色がかけがえないものだったのも事実。何より、最後には今年12月に【ClariS HALL CONCERT 2022 WINTER】を開催することも発表され、街が色めき、空気がすんと澄み切る頃、彼女たちが再び舞い降りてくれるようである。
このコンサートのストーリーには、“人々に幸せを届ける”という要素もあったが、ClariSが劇中の登場人物らのように、誰かの幸せを毎日のように叶えていることは、この日に集まった誰もが知っているはずだろう。ありがとう、ClariS。待ちに待った3年間弱の時間すら、なぜだか愛しく思えてしまった。
Text:一条皓太
Photo:平野タカシ
◎公演情報
【ClariS HALL CONCERT 2022 ~Twinkle Summer Dreams~】
2022年8月11日(木)東京・LINE CUBE SHIBUYA
<セットリスト>
M1. Twinkle Twinkle
M2. アリシア
M3. CLICK
M4. Fight!!
M5. 新世界ビーナス
M6. 瞳の中のローレライ
M7. Mermaid
M8. Summer Delay
M9. オルゴール
M10. アワイ オモイ
M11. ホログラム
M12. Masquerade
M13. シニカルサスペンス
M14. アイデンティティ
M15. missing you
M16. ALIVE
M17. コネクト
M18. Starry
M19. SHIORI
M20. ケアレス
M21. reunion
<ENCORE>
EN1.ナイショの話
EN2.PRECIOUS
◎放送情報
フジテレビのCSにて、ClariSの特番が放送決定
※詳細は後日発表
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