2022/08/13 18:00
Adoが、8月11日に埼玉・さいたまスーパーアリーナにて2ndライブ【カムパネルラ】を開催した。
同公演は、今年4月4日に自身初のライブ【喜劇】をZepp DiverCity (TOKYO)で開催したAdoの2度目のライブ。そして、この日のMCでも「私の一番の夢でした」と語っていたように、さいたまスーパーアリーナは、Adoが歌い手としてずっと憧れてきたステージだ。チケットは即完で、そんな記念すべき場所で見せてくれたのは、Adoの唯一無二の歌声と圧倒的な歌唱力。息を呑むような瞬間、胸に迫る瞬間が沢山あるライブだった。
開演時間を少し過ぎ、暗転すると、荘厳なSEを経て「夜のピエロ」からライブはスタート。客席に広がる青いペンライトの光に迎えられ、ステージ中央、白いベールに囲まれた大きなボックスの中にAdoが登場する。華やかな照明とレーザーの光が会場を照らし、ステージにAdoのシルエットだけが見える。続く「ラッキー・ブルート」「ラブカ?」と、序盤からダークで挑戦的な楽曲を畳み掛ける展開。Adoは、しなやかに身体を揺らし、くるくると回り、まるでバレリーナのように舞い踊りながら歌う。ときにステージに寝そべったり、のけぞったりと、かなりダイナミックな動きも見せる。「ドメスティックでバイオレンス」では妖艶な歌声を聴かせる。変幻自在のヴォーカルだけでなく、これだけの華麗な身のこなしを見せながら全く声がブレないパフォーマンスにも目を見張る。
続くは、リリースされたばかりのアルバム『ウタの歌 ONE PIECE FILM RED』からVaundyの楽曲提供による劇中歌「逆光」だ。ここからはステージが転換し、ドラム・ベース・ギター・キーボードの編成による生バンドが登場。ヘヴィなギターサウンドと迫力たっぷりのパワフルなヴォーカルの相性は抜群だ。さらにMrs. GREEN APPLEの楽曲提供による「私は最強」と、映画『ONE PIECE FILM RED』の劇中歌からライブ映えするロックナンバーを続けて披露する。
中盤から後半にかけては、華やかでアッパーな「レディメイド」から、特効の炎が上がった「阿修羅ちゃん」、エモーショナルで軽快な「花火」、迫真のパワーバラードの「会いたくて」など、1stアルバム『狂言』の収録曲を中心にした構成。そこに、「金木犀」などAdoをフィーチャーした曲や、「ダーリンダンス」などAdoが“歌ってみた”を投稿したボーカロイド楽曲を織り交ぜたセットだ。すべてバンド編成でアレンジされ、アリーナの広い会場にも音圧たっぷりのサウンドで響く。特に印象的だったのは、オープニングから一切MCを挟まず、歌い終えると、ほぼ休みなく次の曲にいくという展開。ひたすら歌い続けるパフォーマンスにどんどん惹き込まれていく。「過学習」のテクニカルなフレーズや「ダーリンダンス」のキュートな歌いっぷりにも目を奪われる。何より、休憩も挟まず、これだけ変幻自在の歌声を響かせながらパーフェクトに楽曲を歌いこなすAdoの歌の表現力には感服させられる。
再びの転換を経て、「FREEDOM」からは、ステージ中央にあったボックスが取り払われ、Adoが巨大なLEDヴィジョンの前に姿を表す。背後からの光に照らされているので見えるのは黒いシルエットだけなのだが、確かな存在感が伝わってくる。力強いグルーヴに乗せて歌った「シカバネーゼ」からドラマティックな「永遠のあくる日」、背景の映像も含めてどこか神々しい印象さえ残した「ギラギラ」、ディープな「マザーランド」から巨大な月をバックにした「ザネリ」と、終盤はどんどん深い場所へと誘っていくような展開だ。
計19曲を歌い終えたところで、「次が最後の曲です」と、ようやくのMC。「今日はここに立てて幸せでした。また私と列車に乗ってください」と一言だけ告げ、本編ラストの「心という名の不可解」へ。全身の力を振り絞るような力強い歌で、クライマックスの熱狂を生み出した。
アンコールを求める大きな拍手に迎えられて再びステージに姿を表したAdoは、映画『ONE PIECE FILM RED』の主題歌「新時代」を披露。アカペラでの歌い出しから一気に胸を掴む。背後のLEDヴィジョンには映画に登場する歌姫・ウタの姿が映し出され、その前にシルエットで見えるAdoは、本編から衣装を少し変えてドレス姿だ。続いて披露した椎名林檎のカバー「罪と罰」もインパクト抜群。特に曲後半の切迫感に満ちたがなり声のシャウトには、思わず鳥肌が立つような響きが宿っていた。
そして、ここからMC。「みなさん、こんばんは、はじめまして」と観客に挨拶したAdoは、客席を見渡して「こんな光景を見られて私は本当に幸せです」と告げる。続けて、さいたまスーパーアリーナでライブをやることが大きな夢だったこと、どんなに絶望や苦しいことがあってもその未来を信じてやってきたということを語り、「これが夢だったら、どうか覚めないでほしいと、強く思います」と、震える声で言う。「私は今、Adoとしてここに立っている姿を見られないですけど、ここにいる全てのみなさんが私の目です。私がここでAdoとしてステージに立っていて、それを最後まで焼き付けてくれれば、私はちゃんとAdoだったんだって思います。私の未来を信じてきてよかったと心から思います。なので、最後までどうか私を焼き付けてください」と、感極まった様子で思いの丈を告げた。
そして最後に披露したのは「人生を大きく変えてくれた大事な曲です」と告げた、「うっせぇわ」と「踊」の2曲。生々しい迫力に満ちたバンドの演奏に乗せて迫真のシャウトを響かせた「うっせぇわ」から、オーディエンスの手拍子と共に飛び跳ねながら歌った「踊」へと最大の熱狂を作り出し、Adoは深々と頭を下げ、ライブは終了した。
この日のステージは、抜群の歌唱力と圧巻のパフォーマンスを見せたライブであると同時に、Adoが昔からの大きな夢を叶えた瞬間を集まったファンと共有する感動的なドキュメントでもあった。おそらく、この日、“実在する”Adoを初めて目の当たりにした人も多かっただろう。そして、その繊細で誠実な人となりに心を奪われた人も沢山いたはずだ。
夢が叶った嬉しさの一方で、正直、この先への怖さや不安もあるとも吐露していたAdo。最後には「これから先の未来、また一緒に叶えてほしいです」と告げていた。
この先も目が離せない。そう強く感じるライブだった。
Text by 柴那典
Photo by Viola Kam
◎セットリスト
1. 夜のピエロ
2. ラッキー・ブルート
3. ラブカ?
4. ドメスティックでバイオレンス
5. 逆光
6. 私は最強
7. レディメイド
8. 阿修羅ちゃん
9. 金木犀
10. 花火
11. 会いたくて
12. 過学習
13. ダーリンダンス
14. FREEDOM
15. シカバネーゼ
16. 永遠のあくる日
17. ギラギラ
18. マザーランド
19. ザネリ
20. 心という名の不可解
ENCORE
21. 新時代
22. 罪と罰
23. うっせぇわ
24. 踊
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