2022/07/11 10:00
日本の音楽リスナーの洋楽離れというのは、ずいぶん前から言われ続けている。J-POPが元気なのはもちろん素晴らしいことなのだが、逆にレコード会社の洋楽部門はヒットを作るのかに相当苦心していることだろう。それでも時折小気味よいヒットが生まれることもある。2022年7月6日公開のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”で13位を記録したチャーリー・プースの「レフト・アンド・ライト(feat. JUNG KOOK of BTS)」もそんな一曲だ(【表1】)。
チャーリー・プースは、映画『ワイルド・スピード SKY MISSION』の主題歌「シー・ユー・アゲイン」のヒットで名を挙げた米国のシンガーソングライターだ。日本でも人気が高く、2018年には来日公演も行っている。今回の「レフト・アンド・ライト」は、BTSのJUNG KOOKがフィーチャーされていることもあって話題を呼んでおり、この組み合わせならではの話題のヒットといってもいいだろう。
チャートを見る限りでは、ラジオでのオンエア回数が1位ということもあり、プロモーションが熱いのがわかる。チャーリー・プースくらいのアーティストだと比較的ラジオ・プロモーションはしやすい方だろうが、それでもBTSのメンバーが絡んでいるとなると鬼に金棒。ここはチャンスとばかりオンエアを促進するのは当然の施策だ。また、この曲は配信のみなのでフィジカルでのポイントは稼げない分、ダウンロード数やストリーミング数でしっかりと上位をキープ。特にストリーミング数は、前週の86位から24位まで一気に急上昇している。
今後ロングヒットとするには、いくつかの課題があるだろう。ラジオのオンエア数はプロモーション期間に特化した一過性のものだろうし、J-POPと違ってカラオケでのヒットはかなりハードルが高い。となると、配信や動画再生数をどこまで伸ばせるのかがカギとなる。ストリーミングはある程度持続するだろうしミュージック・ビデオもよくできているので、まだまだ伸びしろはある。あとはこれらを持続させるための話題作りが必要だ。
来日公演やタイアップをはじめ、日本オリジナルのプロモーションにつながれば更なるヒットも狙えるだろう。例えば先日ハリー・スタイルズがYouTubeチャンネル「THE FIRST TAKE」に出演して話題になったが、こういった独自のプロモーションはかなり効果的だ。そうそう簡単なことではないだろうが、BTS人気に頼ることなくもうひとひねりした話題作りができれば、最強のヒット曲になるだろう。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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