2022/05/21
湘南乃風のボーカリストで、ソロでも筋金入りのREGGAE MANとしてレゲエの魅力を日本中に届け続けているHAN-KUN。レゲエアレンジのカバーアルバム第2弾『Musical Ambassador II ~Juke Box Man~』が注目を集める中、本作を携えたワンマンライブ【HAN-KUN Special Live『Musical Ambassador II~Juke Box Man~』】を2月26日にTOKYO DOME CITY HALLにて開催した。
<その言動のすべてがREGGAE MANとして絵になる男>
2019年「レゲエってカバー文化でもあるし、カバーアルバムにはいろんな角度でレゲエを知ってもらえる可能性がある。レゲエの文化や背景もこの作品にはすごく詰まっているので、そこも含めて楽しんでもらいたい(HAN-KUN『Musical Ambassador』インタビュー参照⇒ https://bit.ly/3tUbzNd)という想いから自身が触れてきたJ-POPへのリスペクトを込めてカバーアルバム『Musical Ambassador』をリリースし、2021年発表の『Musical Ambassador II』では、初めて女性シンガーの楽曲カバーにも挑戦するなど表現者としての幅を広げてみせたHAN-KUN。今回のワンマンライブでは、そのふたつの作品を中心に実にホープフルなレゲエアクトを繰り広げてみせた。
超豪華な大所帯レゲエバンド=敬愛する音楽仲間たちが生み出すリズムとグルーヴ。そのゴキゲンな演奏と共に登場したHAN-KUNは、Official髭男dismの「I LOVE...」に杏里の「オリビアを聴きながら」、MISIAの「つつみ込むように・・・」とJ-POPの新旧スタンダードナンバーを完全に自分の歌へと昇華しながら熱唱し、冒頭から眼前にレゲエパーティー然とした光景を生み出すと、満員の愛すべきファンに向けて「湘南から風に乗ってやってきたHAN-KUNです! 最高な仲間と最高なみんなを迎えて、こんなご時勢にも関わらず、今日という最高な日を選んで、一緒にライブを創ってくれる全員に心からありがとぉー! 自分自身に大きな拍手を!」とご挨拶。その言動のすべてがREGGAE MANとして絵になる男である。
<J-POPとレゲエの有機的なミクスチャーが生み出した世界>
「こうやってワンマンやるの、2019年の終わりの頃以来かな。こういうご時勢だから、湘南乃風としてはなんとかツアーまわらせてもらったけど、ソロとしては2年ぶりぐらいで。めちゃくちゃ言いたいこともあるし、やりたいこともあったし……でもさ、こんなに最高な景色を見ていたら、マジで全部忘れちゃったよ(笑)。だからね、もう思い付いたことだけ言うし、伝えたいことだけ伝えるよ。音楽を好きでよかった。そして、レゲエを好きでよかった。レゲエのおかげでこのマイクと出逢えた。みんなとも出逢えた。そして、家族。そして、仲間を好きでよかった。支えられているし、今も生きているのはそのおかげ。そして、そして、何よりも言いたいことがある。今日、ここにいる……
というMCから「イェーイ! 君を好きでよかった♪」とウルフルズの「バンザイ ~好きでよかった~」を歌い出す流れは鳥肌モノで、そこからスカビートに乗せて大好きな「君」たちと踊り出すのだが、これほどまでにJ-POPとレゲエの有機的なミクスチャーが存在するだろうかと笑みがこぼれてしまった。誰もが知るJ-POPのフレーズにHAN-KUNとそのファンの絆や人生を重ね、そこで溢れる想いをレゲエサウンドで軽快に倍増させながら、多幸感まで味わわせてくれる。なるほど、HAN-KUNが『Musical Ambassador』シリーズを通して生み出したかった世界はこれだったのか。世の中にカバーは星の数ほどあれど、ここまで音楽的価値の高い次元へと到達できたカバープロジェクトは他にないだろう。
<俺はカバーしている楽曲たちが大好きなんで──>
そんなJ-POPとレゲエの有機的なミクスチャーは、一青窈の「ハナミズキ」、スキマスイッチの「奏(かなで)」、宇多田ヒカルの「あなた」、久保田利伸の「LA・LA・LA LOVE SONG」、竹内まりやの「元気を出して」と多種多様な名曲を通して体現されていくのだが、そのひとつひとつにこんな世界が生まれていくのかと感銘を受けながら、HAN-KUNが以前インタビューで語ってくれた言葉をふと思い出す。「俺はカバーしている楽曲たちが大好きなんで、イチファンとして歌いたくて。そのイチファンが自分のフィールドを通してリスペクトを返したらこうなるんですよね。」──どうしても軽薄な印象になりがちなカバーという表現がHAN-KUNを通すと有意義な印象になる要因は、この発想があってこそなのだろう。
彼はレゲエと同等の敬意をJ-POPに表している。ゆえにどのカバー曲に対しても愛情を溢れさせることができるし、自分の人生を重ねて情熱的に歌唱することができるのだ。それは「良い曲だね。全部、良い曲」とステージ上でしみじみ語るHAN-KUNを見ても明らかだった。
<愛と平和を願うメッセージ「ワン・ラブ」と連帯の光>
そんなMusical Ambassadorの称号に相応しいカバーを次々と披露してくれたHAN-KUNだが、ライブが終盤に差し掛かった頃、セットリストに記載されていない楽曲を急遽歌い出す場面があった。「どうあっても、何があっても理解できないことがある。何の罪もない人たちが涙と血を流している。それを目の当たりにして何にもできない自分の無力さ……。でも、絶対に、どんな理由があったって、戦争だけはよくねぇ!って知ってる。俺の兄妹、光を見せてくれよ。それが愛の光だろう。届かないかもしれないけど、この場所から届けようよ」と、かつてボブ・マーリーが愛と平和を願って世界中に広めたメッセージソング「ワン・ラブ」を歌い、その想いに呼応したオーディエンスは(コロナ禍で共にシンガロングできない代わりに)ピースサインやスマホのライトで連帯の光を生んでいく。
「繋がってるじゃん。これが平和の灯だよ」
<HAN-KUNとファンの相思相愛ぶりが爆発した夜>
その後、共に光を生み出してくれたファンのみんなへ、AIの「Story」を通して胸いっぱいの愛を届けると、本編最後は今回のセットリストの中でも抜群の相性の良さを感じさせた「WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~」をHAN-KUN独自のメッセージも交えながら熱唱し、会場中に凄まじいエネルギーを生み出していく。その熱量はアンコールを迎えても冷めることなく、満を持してのオリジナル曲の披露となった「Positive メドレー」でもって更なる大スパーク。ステージも客席も一丸となって飛び跳ねながら、レゲエの際限ない魅力を骨の髄まで味わう。
さらには『Musical Ambassador』にも『Musical Ambassador II』にも収録されていないJ-POPカバーとして優里の「ドライフラワー」まで歌い出し、ファンの涙を誘うと、サプライズゲストとして登場したTEEとふたりで「SPICY CHOCOLATE - ずっと feat. HAN-KUN & TEE」もお届け。HAN-KUNも「俺のライブはアンコールからが本番!」と話していたが、あまりにも贅沢でハートフルなアクトが畳み掛けられていった。
「駆け付けてくれる仲間がいるって本当に良いよね。俺たちはステージの上に立たせてもらっているけど、もしもみんなに何かツラいことがあったりとか、面倒くさいことにぶつかったりしたら、音さえかけてくれれば、その音に乗っていつでもみんなの心の中へ行けるから。またライブも近いうちにやりたいし、もちろん湘南乃風としてもやりたいし、このバンドとも絶対にやりたいし、そのときも「遊びに来てやってもいいぜ!」っていう仲間! もう1回手を挙げてみせてよ!(当然、誰もがその手を振り上げる)……ひとりでもそういう人がいてくれる限り、俺たちは必ず帰ってくるから。今日は本当にありがとう──」
そう告げて、HAN-KUNがオーラスに披露した曲は「あなたに」。今から3年前「その楽曲を本人がいないところで披露して、全く違うジャンルのお客さんが大合唱してるって、これ以上ないリスペクトだし、これ以上ない楽しみだし、この為に俺はカバーをやらせてもらえたのかなって。この気持ちを感じる為に降りてきたモノなのかなって感じました」とHAN-KUNにカバーの面白さを実感させてくれたMONGOL800の名曲を歌い出し、純度200%のレゲエアンセムへと昇華されたそれは、HAN-KUNとファンの相思相愛ぶりを爆発的に表面化させていく。あなたへの愛を全身全霊で体現し合う、その光景こそ平和の象徴であり、この瞬間の為にレゲエもJ-POPもどんな音楽も存在しているのではないかと思わせた【Musical Ambassador II~Juke Box Man~】は、最高にホープフルな世界を生んで幕を閉じた。
「今日は本当にありがとうございました! また会いましょう!」
取材&テキスト:平賀哲雄
◎ライブ【HAN-KUN Special Live『Musical Ambassador II~Juke Box Man~』】
2022年2月26日(土) 東京・TOKYO DOME CITY HALL セットリスト:
01.I LOVE…
02.オリビアを聴きながら
03.つつみ込むように・・・
04.バンザイ ~好きでよかった~
05.ハナミズキ
06.奏(かなで)
07.あなた
08.LA・LA・LA LOVE SONG
09.元気を出して
10.Story
11.WOW WAR TONIGHT ~時には起こせよムーヴメント~
En1.Positive メドレー
En2.ドライフラワー
En3.ずっと
En4.あなたに
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