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2022/04/21

<コーチェラ2022現地レポ>アーケイド・ファイア、世界屈指のライブ・バンドの底力を見せつけたサプライズ・セット

 世界的野外音楽フェスティバル【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル】が、新型コロナウイルスの影響による2年連続の中止を経て、米カリフォルニア州インディオにて開催された。

 ヘッドライナーにハリー・スタイルズ、ビリー・アイリッシュ、そして直前で決定したザ・ウィークエンドとスウェディッシュ・ハウス・マフィアを迎えた今年のフェスティバルは、これまで以上に国際的かつ多様性を重視したアーティスト・ラインナップとなった。ここでは、2022年4月15日~17日にかけて実施されたウィークエンド1のBillboard JAPAN特派員によるレポートをお届けする。

 開催前日に発表されたタイムテーブルと共に出演が明らかになったアーケイド・ファイア。もちろん、来月発売されるニュー・アルバム『ウィ』のプロモーションの一環なのだろうが、過去にメイン・ステージのヘッドライナーを務めた彼らが、よりキャパシティの少ないテント・ステージで演奏するとあって、この貴重な機会に胸が高鳴った。

 ”WE”の文字がスクリーンに映し出されると、メンバーが予定時刻の約5分前に登場し、ニュー・シングル「ザ・ライトニング I」でライブは幕を開けた。ステージ前のファンが心配だったのか、フロントマンのウィン・バトラーが気を使って演奏をストップし「大丈夫?」と確認すると、パフォーマンスを再開。レジーヌ・シャサーニュの”When the lighting comes”のシャウトで「ザ・ライトニング II」に流れ、演奏が加速していく様子は、紛れもなくライブ映えした。そして「ネイバーフッド#3(パワー・アウト)」のドラムのリズムが間髪入れずに刻まれ、「リべリオン(ライズ)」へなだれ込んだ。ウィンの「歌って」という掛け声に合わせて観客がコーラスを合唱すると、ヒップホップが主流となった昨今の音楽シーンにおいて、ロックはまだ生きているという安堵を覚えずにはいられなかった。

 ウィンは「みんなに会えて本当にうれしいよ。元気かい?」と挨拶し楽器を持ち替えると、初めて一呼吸をついた。続く「レディ・トゥ・スタート」の演奏後に、彼は「本当にありがとう。ここにいられてファッキン幸せだ!」と喜びをあらわにし、「人生は変わるし、この変化に負けてはいけない。絶対に乗り越えられるから。ウクライナの人たち、ウクライナのパンク・ロック・バンド、しっかりして欲しい」と励ましのメッセージとともに「ザ・サバーブス」を贈った。

 ステージ上の一段高い場所に立ったウィンが、背後のライトに照らされながら悲痛を訴えるように歌った「マイ・ボディ・イズ・ア・ケイジ」、ミラーボールに彩られたダンス・ビートが心地よい「アフターライフ」と続き、レジーヌのボーカルとキーボードの繰り返されるリフが印象的な「スプロール II(マウンテンズ・ビヨンド・マウンテンズ)」では、最後の歌詞“cut the lights(照明を消して)”で真っ暗になる演出で、大いに盛り上がった。

 キーボードの軽やかな音色とともに始まった「エヴリシング・ナウ」では、最後のコーラス部分を観客が大合唱し、テント内は幸福感で満たされた。するとウィンは、約20年前にパール・ジャムがチケットマスターとバトルを繰り広げ、【コーチェラ】の会場となっているエンパイア・ポロ・フィールドでコンサートを開催した歴史が今のフェスティバルに繋がったことに言及し、パール・ジャムに感謝した。新曲「Unconditional I (Lookout Kid)」では、コーラス部分で緑、赤、黄、紫の人形型のバルーンが8体ほど登場し、盛り上がりは最高潮に。最後の曲となった「ウェイク・アップ」での観客を巻き込んだ大合唱は、言うまでもなく鳥肌が立つほど美しかった。

 ステージ上の黒いモニターには「WE」と白文字で書かれており、最新アルバムのプロモーションを入念に行ったアーケイド・ファイア。当初の予定よりも10分も多く演奏したこのサプライズ・ライブで見せつけた熱量、その並々ならぬ気合を考えると、最新作に期待せずにはいられない。この2年間ライブが行えなかったことの辛さ、日常的にライブが行えることがいかに恵まれていることなのか……ウィンがオーディエンスを気遣ったり何度も感謝を述べる姿からは、そんな想いがひしひしと伝わってきたような気がした。

Photo: Courtesy of Coachella / LANCE GERBER

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