2022/04/19
世界的野外音楽フェスティバル【コーチェラ・バレー・ミュージック&アート・フェスティバル】が、新型コロナウイルスの影響による2年連続の中止を経て、米カリフォルニア州インディオにて開催された。
ヘッドライナーにハリー・スタイルズ、ビリー・アイリッシュ、そして直前で決定したザ・ウィークエンドとスウェディッシュ・ハウス・マフィアを迎えた今年のフェスティバルは、これまで以上に国際的かつ多様性を重視したアーティスト・ラインナップとなった。ここでは、2022年4月15日~17日にかけて実施されたウィークエンド1のBillboard JAPAN特派員によるレポートをお届けする。
2021年11月に閉幕した北米ツアーと今年6月からのヨーロッパ/南米ツアーのちょうど合間に行われた、ハリー・スタイルズによる【コーチェラ】での初ステージ。最新アルバム『ハリーズ・ハウス』のリリースを来月に控えるタイミングで、どんなパフォーマンスを行うのか開演前から期待が膨らんだ。
今回用意されたのは、舞台の後方から前方に向かって階段になっている白い円形上のステージとそれを覆うような大きな照明が印象的なセットだ。定刻通りに暗転すると、ステージ後方の一番高い位置に黒いコートとスパンコールが施されたシルバーのパンツを履いたハリーが登場し、まるでモデルのようにポーズを決めると、特に女性ファンの興奮した歓声が鳴り響いた。
4月1日にリリースされたばかりの最新シングル「アズ・イット・ワズ」のイントロが流れると、ハリーはステージ中央にあるマイクに向かってコミカルに階段を駆け降りた。この日、ライブで初披露した楽曲のキャッチーな歌詞を観客が一緒に口ずさむ中、曲の中盤でハリーは黒のコートを脱ぎ捨て、楽曲MVの赤いスパンコールが施された衣装のシルバー・バージョンをお披露目した。
続いて、大ヒットとなった2ndアルバム『ファイン・ライン』から「アドア・ユー」を演奏し、「今日はとてもスペシャルです。ありがとう」と挨拶をした後、続けて「ゴールデン」をパフォーマンスした。昨年開催した北米ツアーのバンド・メンバーと今回のメンバーが同じかは不明だが、この「ゴールデン」やソロ・デビュー・アルバム『ハリー・スタイルズ』からの「カロライナ」や「ウーマン」などで、ハリーとバンドの一体感が生み出すグルーヴ感は音源以上で、とても気持ち良かった。
続いて、『ハリーズ・ハウス』から新曲「ボーイフレンズ」を紹介したハリーは、アコースティック・ギター、バック・ボーカル2人というシンプルな編成でしっとりと楽曲を歌唱した。「チェリー」では、ハリーがギターを手にし、ギタリストと共に演奏をはじめ、そのスムースで伸びやかなボーカルをオーディエンスに届けた。ドラマチックに歌い上げた「シー」では、ギタリストのソロ・プレイがさらにスパイスを加えた。
「ここからはノン・ストップのダンス・タイムです」と花道に登場したホーン隊(トランペット、サックス、トロンボーン)と共に「キャニオン・ムーン」を披露すると、「トリート・ピープル・ウィズ・カインドネス」、ワン・ダイレクションの「ホワット・メイクス・ユー・ビューティフル」の3曲を一気に演奏し、会場のボルテージは最高潮に達した。
そして、シャナイア・トゥエインがサプライズで登場し、彼女の代表曲である「フィール・ライク・ア・ウーマン」と「スティル・ザ・ワン」で共演した。ハリーの母はシャナイアのCDを車内でよくかけていたそうで、それを聞いていたハリーはシャナイアから歌唱法を学んだと言ってもおかしくないと彼女を紹介した。特に後者は、ハリーのボーカルの音域の広さとそれを自在に操る才能を認めざるを得ないほど素晴らしかった。続いて、ニュー・アルバムからホーンのアクセントとコーラスが印象的なダンス・ソング「レイト・ナイト・トーキング」をライブで初パフォーマンスした。「ウォーターメロン・シュガー」では、前述の巨大な照明がスイカの色を表したピンク、緑、白、黒の配色でステージを照らし、気付けばホーン・セクションが10人に増え、演奏、演出共にライブのハイライトとなった。
ステージ後方から花火が打ち上がる中、ファン人気の高い「キウイ」をパワフルにパフォーマンスする彼の姿は、まさにロック・スターだった。そしてラストは「サイン・オブ・ザ・タイムズ」。フェスティバルにしては渋い曲を最後に選んだなと不思議だったが、同曲の「Why are we always stuck and running from the bullet(なぜいつも行き詰って弾丸から逃げているのだろう)」、「Remember everything will be alright(すべては大丈夫だと覚えていて)」、「We got to get away(逃げ出さなければならない)」という歌詞を踏まえると、現在の世界情勢に対する彼の思い込めた選曲だったのだろう。すると巨大な照明がウクライナの国旗の色となり、ウクライナの国旗がスクリーンに投影され、彼の意図が理解できた。
ハリーがポップ・シンガーであることは間違いないが、時にロック・スターのように激しくパフォーマンスし、ファンキーにダンスもするかと思えば、カントリーもこなし、バラードではオーディエンスの心に直球で訴え、一つのジャンルや枠に決して収まらない実力を持ったパフォーマーであることが伺えた。洗練されたダンサブルな「アズ・イット・ワズ」に加えて、新曲2曲、そして言葉にはしなかったが、彼がオーディエンスに最も伝えたかったであろう最後の曲の演出など、最新アルバムにどう反映されるのか、全体像が気になると同時に大いに期待したくなるパフォーマンスだった。
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