2022/02/18
CHAIが現地時間2月4日のシカゴ公演を皮切りに約2年振りの北米ツアー【WINK TOGETHER NORTH AMERICA TOUR】をスタートさせた。本レポートでは、15日に行われたニューヨーク公演のの様子をお伝えする。
CHAIが軽やかにアメリカを席巻している。2月15日にNYブルックリンの人気会場Elsewhereでライブが行われた本公演は完売。『Pitchfork』も彼女たちを支持し続けているし、2019年にブルックリンで行われたライブは、アメリカのメジャー・メディアのライターも駆け付けていたので、そのライブの評判を聞いていたか、またはその後USインディーの名門<Sub Pop>から去年新作『WINK』を発表して以来待ち続けていた観客も多かったはずだ。コロナ後初めてライブ会場に足を運んだ観客も多かったかもしれない。25歳前後くらいの様々な人種のNYの若者が集まり、ナードっぽい子もいたし、クールなキッズもたくさん。それぞれが個性的なファンでぎゅうぎゅうに詰まった会場は始まる前から物凄い熱気とCHAIのファンらしい喜びにも溢れていた。そのファンの期待にお返しをするかのようなこの日のライブ。シルバーの衣装で登場し、キャッチーかつダンサブルな「NO MORE CAKE」で透明感あるボーカルと強烈なダンスビートで幕開けした瞬間から、最後の最後まで、ポジティブなエネルギーで会場を包み込み、観客を一体にして、心をふんわりと持ち上げてくれるような笑顔とダンスと喜びに溢れたCHAIならではのエンターテイニングなライブとなった。
『WINK』から次々に曲が披露された完全に最新モードのライブではよりリズムとダンスが全面に出ていて、「ACTION」では、<大丈夫、大丈夫、きっと大丈夫だから。言葉より行動が大事><私があなたと私を信じているから>と重要なメッセージを掲げながらも、それを重くなり過ぎずファンに優しく渡してくれる。それがおそらく人気の秘訣でもあるような気がする。それを体現するような、ピンクの大きくて軽やかな衣装でステージを所狭しと踊りながら1人1人自己紹介し、「C.H.A.I CHAI!」と叫ぶとキュートさが炸裂して会場も大喝采。さらに、ベースとドラムで独自のグルーブを生み出す「END」から、アメリカでも今熱狂的な人気のある竹内まりやの「PLASTIC LOVE」をカバーすると言う選曲も完璧。また「Wish Upon a Star」では胸を突くような美しく感動的なボーカルを響かせた。かと思えば、両バンドの良さが最大に活かされたハインズとのコラボ曲「UNITED GIRLS ROCK ‘N’ ROLL CLUB」では世の中の緊迫から解放してくれるような最高のゆるさで心に穏やかな太陽の光を注ぎ込んでくれるようだった。
前回の全米ツアー時より演奏力もさらに高くなり、しかも幅広い楽曲で、パフォーマーとしてひと回り大きくなったばかりか洗練されたCHAIを見せつけてくれた今回のライブ。極め付けに、この日の前座でもあり、楽曲をプロデュースしたBIGYUKIが自らキーボードで「チョコチップかもね (feat. Ric Wilson)」を演奏。文字通り会場が甘いムードで包まれた。アンコールでは、打って変わって、前座で出演し会場を大いに盛り上げてくれた韓国のSu Leeも参加し、「N.E.O.」で会場中がジャンプしまくって終わると言う最高の締めくくり。CHAIがCHAIらしくあることが、この緊迫した世界とそれに終わりが見えてきた今だから必要だったんだ、と言うのが明確に分かったようなこの日のライブ。CHAIありがとう!と思わず言いたくなってしまった。この後2月17日からは、なんと現在USインディ・ロックの頂点に立っているとも言えるミツキの前座という最高の場所で3万人以上の人たちに彼女たちを観てもらえると思うとワクワクする。ミツキ自身も「CHAIをアメリカの観客に観てもらいたかった」と語っていたけど、きっと観客に喜びを与えてくれるだろうし、彼女たち自身もアメリカの観客のエネルギーをもらって今回のツアーでさらに大きく成長していくような気がする。そんな期待と喜びと希望に溢れるライブだった。
Text by 中村明美
Photo by Charlie Gross
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