2013/03/15
今年でデビュー20周年を迎え、2月20日には記念ベストアルバム『and then... ~20th anniversary BEST~』をリリースした古内東子。かつては“恋愛の神様”と称され、OL世代の女性から圧倒的な支持を得た彼女だが、今回のベスト盤にはどのような楽曲が収録されたのだろうか。
90年代を知る人からすれば、古内東子=失恋や片想いソングという印象は強いだろう。という訳で実際に、これまで発表された150曲(※)を超える彼女の楽曲を、まずは大きく4種類に分けてみた。
A.幸せラブソング(例:大丈夫、淡い花色、Beautiful Days)
B.失恋の歌(宝物、銀座、サヨナラアイシテタヒト)
C.片想いを歌った曲(誰より好きなのに、悲しいうわさ)
D.付き合ってるけど不安を感じている曲(Strength、45分)
以上に含まれない曲をいくつか除外したが、歌詞をもとにざっくり分類してみると実に60%を超える楽曲がBとC、つまり失恋や片想いを題材にした歌詞になっている。
対してAの“幸せラブソング”は全体の20%ほど。全体の7割以上が切なさを感じさせる楽曲で、ひと昔前にシーンを席巻したセツナ系ブームより以前から、そうした傾向の歌を数多く輩出してきたシンガーだったことが分かる。
では、続いて今回の2枚組ベスト『and then...』に収録された27曲を見てみよう。平井堅を客演に迎えた新録曲「さよならレストラン」も含めたBと、代表曲「誰より好きなのに」などのCは共に7曲。その上、Disc1とDisc2の割合もほとんど均等と、先に記した全曲比率とほとんど変わらないバランスを保っているのだ。
そしてDには「PURPLE」「IN LOVE AGAIN」「君がわかるから」の3曲。こちらもやはり全曲比率と変わらない割合になっているのだが、本人はこのテイストの歌詞が好きらしく、「本当は、分類し難い歌詞をもっと書きたい」のだとか。どちらとも言えない感情、言葉にできない感情を音楽で表現することこそが、シンガーとしての原点なのだと彼女はいう。
日本人は元来、切ないという感情を好む傾向にある。特に若い頃は淡い恋心を抱くシチュエーションが多いから、リスナーから強く求められるのではないか。切ない歌詞が大多数を占める理由をそう分析する彼女は、一方で近年の流行歌に対して「直接的な表現が多い」という印象もあるそうだ。
言葉や表情の裏にある日本人独特の微妙な気持ち……。切なさには、ある程度の深みが必要だという彼女は、自身の楽曲をこう評している。「回りくどいのも、歌ではありかなって思いますよね?」。失恋や片想いが題材の代表曲が多いのも確かだが、ともすればその真髄は割合にして10%ほどの“付き合ってるけど不安を感じている曲”の中にあるのかもしれない。
「幸せな時もあれば、怒りに満ちてる日もある。色んな曲があって当然だと思うし、何事もバランスだと思っています」。昨年秋には結婚したことも報道された古内東子だが、これからも作品におけるバランスは変わらないだろうと穏やかに笑う。
次回作への期待もさることながら、平井堅や槇原敬之との豪華コラボ曲も収録している今回のベスト『and then... ~20th anniversary BEST~』は、彼女が歩んできた20年の軌跡を克明に刻んだ素晴らしい作品に仕上がっている。日本人ならではの繊細な感情の機微をていねいにつづってきた古内東子の真髄に、是非触れてみて欲しい。
※シングルのカップリングにのみ収録曲とカバーは除く
◎ベストアルバム『and then... ~20th anniversary BEST~』
2013/02/20 RELEASE
AVCD-38590/1 3990円(tax in.)
◎古内東子 弾き語りツアー【and then... acoustic tour】
4月27日(土)、28日(日) 横浜モーションブルー
5月8日(水) ビルボードライブ大阪
5月18日(土) 名古屋ブルーノート
5月24日(金) コットンクラブ
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