2021/11/24
結成5周年を迎えたNulbarichが、約2年3か月ぶりとなる全国ツアー【Nulbarich The Fifth Dimension TOUR 2021】のファイナル公演を11月15日にZepp Tokyoで開催した。
JQ(Vo.)が指揮するバンドではあるが、冒頭からノンストップで展開した「Spread Butter on my Bread」「Supernova」「In Your Pocket」までのメロウでグルーヴィーでチリングなパフォーマンスや、後半の約7分に及ぶ即興セッションを見て、彼らがセッションバンドであることを再認識した。その場の空気で各自がフリーに繰り広げた各曲のプレイは、もう2度と再現することはできないだろう。
「5周年ということで過去を振り返りながら、Nulbarichの音楽とみんなの思い出が重なった瞬間を思い出してもらえるようなツアーにしたくて、懐かしい曲を演奏します。『あの時、ああだったな』って思い出してくれたらハッピーです。」というJQの言葉通り、この日は最新アルバム『NEW GRAVITY』の収録曲はもちろん、バンドが広く知られるきっかけとなった人気曲「NEW ERA」「Kiss You Back」といった新旧ナンバーを交えたオールタイム・ヒッツのようなライブが届けられた。
ツアー名である“Fifth Dimension”は5次元を意味する。私たち人間が暮らす世界は前後・上下・左右の3つの次元と1つの時間からなる4次元だと言われており、『ストレンジャー・シングス 未知の世界』のクラーク先生の言葉を借りれば、膨大なエネルギーで時空に穴を開ければ、理論上、裏側の世界(=異世界、5次元)に行くことができるという(シーズン1第5章「ノミと曲芸師」より)。
このツアーが異次元へ導く招待状であること、もしくは次のチャプターを通して、まだ誰も耳にしたことのない新しい音楽を発表していくことの前宣言だとも捉えることができたし、このツアー・ファイナルを見て、アルバム収録曲をそのまま演奏するのではなく、アレンジや即興を織り交ぜたその日限りのスタイルでオーディエンスを決して飽きさせないというミュージシャンシップを感じた。5次元に繋がるゲートをどう作り出していくのか、彼らのこれからに胸が膨らむ。
JQは2019年から活動の拠点を米ロサンゼルスに移しており、日本では感じることのできない音楽のトレンドや感覚をいち早くキャッチして自分のバンドに反映させている。そうして誕生した『NEW GRAVITY』から、世界が断絶されている間に再構築した「TOKYO」、80’sサウンド満載の「A New Day」(シンセサイザーのソロ・パートで、会場はシティポップ一色に)や「Break Free」「Lonely」が披露された。
この日は、新曲「It’s All For Us」も披露。JQ曰く「こういう曲を作るのは苦手で……だって寒いじゃん。人のことを思って曲を書くことができないタイプなんですけど、さすがにこの2年は堪えて、(自分に)必要だった」とのこと。背中を押すポジティブなアンセムの制作を通して、メンバーたちの心も癒されたのかもしれない。
ライブ終盤に差し掛かると、ミラーボールが回り始め、会場はディスコフロアに様変わり。「Lipstick」「Super Sonic」では、バンドもオーディエンスも余力を出し切るように踊りまくる。真っ赤に色付けされたチェリーが乗ったミルクシェイクやホットパンツを履いてスケートセンターを走り回るアメリカン・ガールズ……そんな印象だ。そこからエッジの効いたハードロック「Lonely」が続き、目と耳でオーディエンスを飽きさせない。
ライブを締めくくるのは、この日のために残していた「TOKYO」。ステージに立つ者とそれを見上げる者同士が時間と空間を共有したのは確かで、身も心も“いつもより近くに感じた”ことは間違いない。
国やジャンルは違えど、イマジン・ドラゴンズのような心揺さぶるリフや鼓動が体中を駆け抜けるダイナミックさ、同会場でいつか見たディアンジェロ&ザ・ヴァンガードのような息のあった完璧さと奥深さも感じた2時間だった。
Text by Mariko Ikitake
Photos by Victor Nomoto
◎セットリスト
【Nulbarich The Fifth Dimension TOUR 2021】
※2021年11月15日(月)Zepp Tokyo公演
0. Introduction
1. Spread Butter on my Bread
2. Supernova
3. In Your Pocket
4. NEW ERA
5. It’s Who We Are
6. Silent Wonderland
7. Almost There
8. Kiss You Back
9. Sweet and Sour
10. It’s All For Us(新曲)
11. VOICE
12. A New Day
13. Lipstick
14. Super Sonic
15. Lonely
16. Break Free
17. Stop Us Dreaming
18. TOKYO
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