2021/10/11 12:00
初チャートイン楽曲が猛進した2021年10月6日発表のBillboard JAPAN 総合ソング・チャート“JAPAN HOT 100”。首位はAKB48「根も葉もRumor」で根強い強さを見せ、惜しくもback numberの「黄色」が2位に滑り込んだ(【表1】)。しかし、2位とはいえ「黄色」はチャート的には非常にバランスのいい理想的な楽曲といえる。
まず、きちんとフィジカルのCD売上でポイントを稼げている。昨今は配信のみという楽曲が多く、実際彼らも4位にチャート・インしている「水平線」は配信のみで結果を出している。とはいえ、コアなファンにとってはまだまだCDの需要は高い。初回盤に昨年のオンライン・ライブの映像を収めたDVDやBlu-rayが付属するとなるとなおさらだろう。その一方で、彼らはもともとダウンロードやストリーミングなどの配信にも強い。今作もストリーミング数は13位だが、上位が強豪ばかりの中での結果としては申し分ないし、今後はまだ上昇していくことだろう。
加えて短編映画のようなドラマチックなMVも非常に話題性が高く、こちらも動画再生数で9位という結果を出している。ラジオでのオンエア回数が5位というのもプロモーションが行き渡っている証拠であるし、CD売上に付随するルックアップ(PCによるCD読取数)が6位というのも納得。カラオケはまだこれからだが、今後ヒット曲としての認知が固まればこちらも間違いなく上昇してくるはずだ。
おそらくCDの売上数に関しては、次週以降は下降するだろうが、ストリーミングやカラオケの歌唱数などによって補完され、ロング・ヒットになる可能性は高い。あとはテレビ出演などのプロモーションがどこまで行き渡るかにもよるが、概ねどのポイントに関してもバランスが良く優等生といってもいい一曲だ。ちなみに「黄色」はABEMAの恋愛リアリティーショー番組『虹とオオカミには騙されない』の主題歌となっているが、地上波のドラマ主題歌などに比べるとタイアップ効果は低い。むしろノンタイアップでも同じような結果を出せたのではないだろうか。
フィジカルのみで勝負するアーティストからストリーミング偏重型まで様々なヒットが生まれているが、この「黄色」は類を見ないほどそれぞれのポイントのバランスがいい。裏を返せば、きめ細かに媒体やファンにアピールしている証拠でもあり、こういった施策を行っている楽曲は往々にしてチャート上で粘り強さを見せてくる。back numberはすでに「水平線」がロング・ヒットの様相を醸し出しているが、同時に「黄色」がどこまで長くヒットするのか、そして本当に理想的なヒットなのかも注目しておきたい。
Text:栗本斉
◎栗本斉:旅&音楽ライター、選曲家。レコード会社勤務の傍ら、音楽ライターやDJとして活動を開始。退社後、2年間中南米を放浪し、現地の音楽を浴びる。その後フリーランスとして活動した後、2008年から2013年までビルボードライブのブッキングマネージャーに就任。フリーランスに戻り、雑誌やライナーノーツなどの執筆や音楽評論、ラジオやストリーミングサービスにおける構成選曲などを行っている。
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