2021/08/12
新曲「インダストリー・ベイビー」や「モンテロ(コール・ミー・バイ・ユア・ネーム)」のMV、今年の【BETアワード】のパフォーマンスでの男性ダンサーとのキスなど、リル・ナズ・Xは恐れることなくありのままの自分を表現している。しかし、ラップ界で唯一LGBTQを公言しているアーティストとして、本当の自分でいようとする決断が時に恐ろしい反感を招くことがあると、彼は米バラエティに語った。
同誌が、数々のフェスティバルから出演キャンセルされ、キャリアを急降下させる原因となったダベイビーの悪意ある発言や他のラッパーによるゲイに批判的な言葉について、リル・ナズ・Xに意見を求めると、「正直なところ、非常に危険な世界なので、ラップ界での同性愛嫌悪についてあまり話したくありません」と彼は答え、「それは他でもない、私の安全のためです」と説明した。
辛辣な批判に不安を感じるかと聞かれた彼は、「間違いなく感じます」と回答した。「(悪魔にラップ・ダンスをする「モンテロ」の)MV解禁の数日後に、誰かが私の車を追ってきて、本当に“くたばれ!”など叫んできました。これを機にセキュリティを雇うようになりました」と彼は振り返った。その人物が同MVがきっかけで自分を追いかけてきたのかどうかはわかならいとしつつも、彼は「偶然ではない」と感じたようだ。
「インダストリー・ベイビー」でコラボしたラッパーのジャック・ハーロウは、リル・ナズ・Xが「それを必要としている多くの人々や子供たちに声を与えている」と述べた。「彼が属するコミュニティは、“君も一番になれる。君も偉大な存在になれる”と思えるようなメインストリームで成功をしている人を必要としていると思います。私は彼がしていることを本当に評価しているし、尊敬しています。彼と出会うずっと前から尊敬していました」と称賛した。
22歳になるリル・ナズ・Xは、「アメイジングで人々をインスパイアする音楽を制作する大胆で勇敢な挑戦者」とポップ・アイコンのエルトン・ジョンから称されている。「彼は心から自身のセクシャリティを受け入れ、その喜びを視覚的に世界に示しながら、アーバン・ミュージックの限界を押し広げています」とエルトンは述べた。また、エルトンはヒップホップ界には歴史上「多くの同性愛嫌悪」が存在すると指摘した。エルトン・ジョン・エイズ基金は、50か国以上のHIV関連プログラムを支援するため、これまでに6億ドル(約662億円)以上を集めているが、7月25日に開催された【ローリング・ラウド・マイアミ・フェスティバル】でのダベイビーの悪意に満ちた同性愛嫌悪のコメントは、エルトンに「教育とやるべきことが、まだたくさんある」ことを痛感させたようだ。
記録的なヒットとなった2019年の「オールド・タウン・ロード」の成功の後、リル・ナズ・Xは新型コロナウイルスによるパンデミックのロックダウンの期間、「音楽を作って泣いていた」と語り、最初の一か月は外出せず、その後自身が作ったすべての音楽に対し「過剰に批判」していたと述べた。さらには、ネット上のヘイトが、まだ始まったばかりの彼のキャリアがすでに終わったと思わせていたことも認めた。
2021年に入り、瞬く間に広まり、注目を浴びた「モンテロ」や「Industry Baby」のMVを発表した彼は、デビュー・アルバム『モンテロ』を夏の終わりまでにリリースすると約束した。パンデミック前にリリースした楽曲よりも「もっとパーソナル」で、2019年のデビューEP『7』に比べ「よりまとまりがある」ものになると彼は説明した。
リル・ナズ・Xは、「正直、パンデミックのおかげで、みんなを喜ばせようとする考えや、“彼はクールなゲイで、彼は受け入れられるべきゲイだ”という考えから解放されたと思います」と同誌に語った。「以前はそういったことを褒め言葉として捉えていましたが、そうではないのです。それは自分が八方美人だという意味で、そういった人は決して偉大な人間にはなりません。自分の音楽にさらなるオーセンティックさを求め、人々に私の人生を見せたいと思いました。私の音楽、自分自身、セクシュアリティ、私が支持しているものに対し、今はもっと自信があります」と意気込んだ。
また、彼は2019年のビヨンセとジェイ・Zのハロウィーン・パーティで、ビヨンセからダンス・フロアで「凄く誇りに思う」と言われた瞬間を思い起こした。さらに、今年5月に出演した『サタデー・ナイト・ライブ』での俳優のティモシー・シャラメとの出会いについて振り返った。2017年にティモシーが出演した映画『君の名前で僕を呼んで』は、シングル「モンテロ」のサブ・タイトルのインスピレーションとなっている。
同映画について「アルバムを制作し始めた頃、家で観ました」と述べたリル・ナズ・Xは、「こんな芸術的なゲイ映画を観ることができて本当に嬉しかったです。サブ・タイトルに使ったのは、歌詞をつける前から、インド音楽、アラブ音楽、アフリカ音楽の音を取り入れた、あの映画のような曲だと感じたからです」と説明した。二人は『サタデー・ナイト・ライブ』のバックステージで出会い、ティモシーは「凄く支持してくれて、好意的でした。“なんてことだろう。映画‘君の名前で僕を呼んで’にインスパイアされて、今こうして映画に出ていたティモシーに会うなんて”と感じました」と彼は語った。
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