2021/07/28
2021年7月20日、【玉置浩二 PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2021『THE EURASIAN RENAISSANCE “КАПЕЛЬ(カペーリ)”』】の最終公演が東京ガーデンシアターで開催された。
2015年2月の初演以来、コロナ禍で中止となった2020年を除き、毎年行われてきた玉置×billboard classicsのオーケストラ公演。2021年6月にスタートした全国7都市8公演の本ツアーは、その集大成として開催され、この日、東京ガーデンシアターにて遂にフィナーレへ。“КАПЕЛЬ(カペーリ:雪解けの雫)”というサブタイトルを冠したツアーの千秋楽にして、玉置のオーケストラ公演史上、最大規模となるホールでのコンサートとなった。
演奏を務める東京フィルハーモニー交響楽団、指揮の大友直人が登場し、オープニングを飾ったのは「歓喜の歌」。玉置が“平和への祈り”を込めて作曲した管弦楽曲だ。大友は2015年2月の記念すべき幕開け公演でタクトを振っており、玉置とは2017年以来4年ぶりの共演となる。
そしていよいよ、満場の観客の大拍手に迎えられ、玉置がステージに姿を見せる。胸に拳を当て、客席をはじめ大友や演者たちに敬意を表した後、最初に歌唱したのは「ロマン」だ。続く「Sacred Love」など、言葉の一つ一つを丹念に紡ぐように歌うその姿に、観客も熱い視線を注ぎ、じっくりと聴き入っている。優しく繊細な歌声は、温かさの中にも切なさや憂いを感じさせ、感情の機微に訴える。
メドレー「MR.LONELY~プレゼント~サーチライト」では、包容力を湛えた美しいボーカルが穏やかな空気感を作り出す。一方、哀感のある「Friend」では深遠な世界へと誘う。その振り幅の広さが、聴き手の心をとらえる魅力なのだろう。
ブレスや発声などの優れた技巧はもちろん、豊かな表現力で楽曲にさらなる生命を吹き込む玉置。加えて、大友の指揮から奏でられる優雅かつ重厚感のある音色は目映いほどに研ぎ澄まされ、鮮やかな輝きをもって歌のストーリーに風景や色味を添える。まさに、初期公演のステージに共に立ち、時を重ねて培った信頼関係から生まれる阿吽の呼吸。しかもそれは、この瞬間にしか味わえない。あまりに贅沢な、至福のひと時だ。
第二部は、オーケストラの演奏によるモーツァルト作曲の歌劇「フィガロの結婚」序曲で幕を開け、荘厳さを醸す「GOLD」へ。またファルセットを駆使した「行かないで」では、心の叫びともいえる切々とした歌唱で観客をぐっと引き込んでいく。
安全地帯メドレー「ワインレッドの心~じれったい~悲しみにさよなら」ではテンポ感とエモーショナルさを演出。「悲しみにさよなら」の〈愛を世界中のために〉と歌詞を変えて歌う場面では、客席からいっそう熱のこもった拍手が湧き上がり、玉置も晴れやかな笑顔を見せる。楽器とボーカルの躍動感溢れる掛け合いが印象的な「JUNK LAND」では、演奏後に大友と玉置がお互いにガッツポーズを取る姿も。
さらに「夏の終りのハーモニー」では、雄大で伸びやかな玉置節を堪能。最後のサビをオフマイクで歌い上げると、麗しくもスケール感のある歌声が大ホール全体に木霊し、会場は温かな感動に包まれた。
アンコールは、ベートーヴェン作曲の「田園」プロローグから自身の楽曲「田園」へとつながる展開で、明るく開放的な雰囲気に。その軽やかなリズムに合わせて、場内からは力強い手拍子が起こる。歌詞を変えて歌われた<愛はここにある 東京にある>の一節も胸に迫るものがあり、オーディエンスのテンションも自ずと高まる。
中でも圧巻だったのは「メロディー」のラストだ。オフマイクの状態で、囁くようなトーンからダイナミックなボーカリゼーションまで、その生声を会場の隅々にまで鮮明に響かせる。すると、客席は感嘆と興奮で沸き立ち、スタンディングオベーションで惜しみない讃美の意を表現。万雷の拍手を浴びながら、お互いを称え合うかのように大友と言葉を交わす玉置の表情は、清々しい充足感に満ちていた。
クラシックの真髄といえる大友の指揮による管弦楽の調べと、玉置の歌声との絶妙な調和、苦境下の今だからこそ玉置の歌を求める観客の思い――それらが見事に呼応した空間がそこにはあった。それは、通常のオーケストラ公演の規模を遥かに上回る大型ホールでの今回の舞台など、絶えず挑戦をし続けてきた玉置浩二の現時点での到達点。着実に進化を遂げてきたbillboard classics公演の一つの完成形であり、集大成のパフォーマンスを体感できた一夜だった。
本ツアーが終了した後も、8月にライブDVD(セルリアンタワー能楽堂にて収録)発売、9月からは全国27公演の新ツアーも控え、ますます躍進をみせる玉置浩二から目が離せない。
Text by 水白 京
Photo by Eri Iwata
◎ツアー情報
【玉置浩二Concert Tour 2021 故郷楽団~Chocolate cosmos】
2021年9月2日(木)神奈川・相模女子大学グリーンホール 大ホール
2021年9月6日(月)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
2021年9月7日(火)北海道・旭川市民文化会館 大ホール
2021年9月14日(火)石川・本多の森ホール
2021年9月18日(土)大阪・東大阪文化創造館 Dream House 大ホール
2021年9月20日(月)和歌山・和歌山県民文化会館 大ホール
2021年9月23日(祝)静岡・富士市文化会館 ロゼシアター
2021年9月26日(日)京都・ロームシアター京都 メインホール
2021年9月27日(月)京都・ロームシアター京都 メインホール
2021年10月2日(土)熊本・熊本城ホール メインホール
2021年10月4日(月)福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
2021年10月8日(金)山口・周南市文化会館
2021年10月9日(土)岡山・岡山市民会館
2021年10月13日(水)長野・ホクト文化ホール 大ホール
2021年10月18日(月)東京・Bunkamuraオーチャードホール
2021年10月19日(火)東京・Bunkamuraオーチャードホール
2021年10月24日(日)静岡・菊川文化会館アエル
2021年10月28日(木)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
2021年10月29日(金)兵庫・神戸国際会館こくさいホール
2021年10月31日(日)広島・広島文化学園HBGホール
2021年11月4日(木)宮城・東京エレクトロンホール宮城
2021年11月5日(金)福島・とうほう・みんなの文化センター
2021年11月9日(火)東京・府中の森芸術劇場 どりーむホール
2021年11月13日(土)茨城・ザ・ヒロサワ・シティ会館 大ホール
2021年11月15日(月)大阪・フェスティバルホール
2021年11月16日(火)大阪・フェスティバルホール
2021年11月22日(月)東京・東京国際フォーラム ホールA
◎リリース情報
LIVE DVD&Blu-ray『Chocolate cosmos~恋の思い出、切ない恋心~』
2021/8/18 RELEASE
<DVD+CD>
COZB-1781-2 / 7,700円(tax in.)
<Blu-ray+CD>
COZB-1783-4 / 8,800円(tax in.)
アナログ『Chocolate cosmos~恋の思い出、切ない恋心~』
2021/8/18 RELEASE
COJA-9428-9 / 4,180円(tax in.)
玉置浩二・安全地帯公式サイト:https://saltmoderate.com/
公演公式サイト:http://billboard-cc.com/classics/tamaki2021-kapel/
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