2021/06/16
evalaの空間音響アルバム『聴象発景 in Rittor Base – HPL ver』が、メディアアートの最先端コンペティションである【プリ・アルスエレクトロニカ2021】デジタルミュージック&サウンドアート部門で栄誉賞を受賞した。
同作はevalaによる新たな聴覚体験を創出するプロジェクト「See by Your Ears」の1つで、広大な日本庭園での展覧会【聴象発景】を疑似体験できる最新鋭のバイノーラル技術を用いたヘッドフォン観賞用の空間音響アルバム。過去最多の1,150作品を応募総数を記録した同部門で日本からは唯一の受賞となった。
贈賞理由は「evalaは極めて重要な現代のサウンドアーティストで、プロジェクト「See by Your Ears」(SbYE)では「耳で視る」というコンセプトに基づいて、これまでにない聴覚体験と音響表現を追求しています。現在、多くの音楽作品は、しばしばオーディオビジュアリゼーションなどの視覚的な要素と組み合わされて提示されるようになっていますが、しかしevalaは、音楽や音響が持つ「聴覚を刺激する」という根幹的な力を用いて、視覚体験を“創り出す“ことを試みています。この作品は、自然のサウンドスケープと音響合成のサウンドスケープを融合させることで、目を閉じて聴くと、それまで全く見たことのなかった景色が眼前に広がるという新しい体験を創り出します。アーティストの中には、コンセプトを他より優先するあまりその他の要素を軽んじてしまう人もいますが、evalaの作品は、特にその質の高さにおいて、特筆すべきものです。evalaは稀有なアーティストです。彼の作品の中には美と暴力性が共存しており、審査員は彼の今後の作品に大変高い期待を寄せています」とのこと。
◎evala コメント
現存する日本最古の煎茶室に最新鋭の立体音響システムを持ち込み、ひとり何日も籠もって、作曲していた日を鮮明に覚えている。それまでの僕は、美術館や劇場の閉じた世界の中で自分の思うままに音を描いていた。だがその歴史ある空間では、窓を開け放ち、庭園のあちこちにマイクロフォンを設置し、今そこで生きている音の生態系と共存しながら作品をつくった。カラスや風が邪魔をしたり、魚や自動車が合奏したりしてくる。しだいに現実の境界が曖昧になっていった。自分がプログラムした音かどうかも自分自身で区別つかないのだ。自分の体内と外、そして幻想の世界がとけあうような感覚を覚えながら、展覧会「聴象発景」をおえた。
香川から東京に戻って数ヶ月後、この展覧会の音だけの上映企画を御茶ノ水のRittor Baseからいただいた。ちょうど外出にはマスクが必須になりはじめた頃だ。大都会のビルの地下、真っ暗闇にした会場に音がかけめぐると、知ってるようで知らない景色が広がった。見えないものに耳を傾け、身体の知覚を研ぎ澄ませるとき、一人ひとりの内側に異なるイマジネーションが現れる。人間と他種が共生していくには、こうした見えない知覚に感覚を委ねることなのかもしれない、そんなことを静かに思った。そして僕は、10年ぶりにアルバムという単位の音源リリースを決めた。
本作は、その旅の記録です。
photo by Susumu Kunisaki
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