2018/09/24 07:00
9月16日、服部緑地野外音楽堂と服部緑地スポーツ広場A特設ステージにて、【たとえばボクが踊ったら、#002】が開催された。今回は、真夏の炎天下から突然の雷雨となって強烈な印象を残した、初回【たとえばボクが踊ったら、#001】から約2年ぶりの実施。しかもツーマンだった前回に比べ、出演は全9組7ステージ、さらに会場も2つと大幅にパワーアップした。だが、実は会場は先の台風21号の被害を受け、3日前まで停電という状況だったという。そんななか各所の尽力をもって奇跡的にライブを行うことができ、前回とはまた違った奇跡のイベントとなった、その模様をご紹介しよう。
●jizue @服部緑地スポーツ広場A特設ステージ
今年のフジロック、ヘブンの1番手を務めトレンドに上がり話題の京都のバンド・jizue。片木(Key)と井上(Gt)が現れ、ニコニコとフロアを見渡し2人で目を合わせると、ゆったりとした空気の中、【たとえばボクが踊ったら、#002】がスタートした。2人の優しく柔らかなセッションが会場を包む。いつの間にか粉川(Dr)と山田(Ba)が定位置に登場し、徐々にテンポを上げながら少しずつ音に厚みを加えていく。「SUN」「grass」「trip」と、疾走感溢れる爽やかな楽曲のセットリストに観客からも歓声が上がる。「こんにちはjizueです。ゆったりと始めましたが野外なんで我慢できなくて。好き放題やらしてもらいます!」と井上のMCからジャジーで速く激しい「atom」、7月にリリースした「elephant in the room」と超絶にテクニカルで速くて重目の楽曲でフロアを上げにかかる。かと思うと、jizue史上1番大人なゆったりした曲「green lake」で緩急をつける。「暑いなぁ、でも今からもっと汗かくと思うで」と片木がはんなりした京都弁で話した様に、終盤には「swallow」「rosso」「Dance」最後までダンスチューンで駆け抜け、会場のあちこちから歓声があがり、圧巻のステージが終了した。バンドを組んで13年目、各々も抜群の演奏力に定評もありフジロックという大きな舞台も経験し、この日のステージも余裕すら感じられた。単独公演も売切が続出している彼らの今後にも目が離せない。
●Ovall @服部緑地野外音楽堂
晩夏らしい爽やかな風が吹き抜ける服部緑地野外音楽堂ステージの幕を開けたのは、mabanua擁するスピリチュアル・ジャズ・バンド、Ovall。入場と同時に大きな歓声で迎えられた彼らはしっとりとしたムーディーな楽曲から入り、オーディエンスを彼ら特有のメロウな世界観へと引き込んでいく。終盤にはボビー・コールドウェルの名曲「Open Your Eyes」のカバーを披露。すっかり彼らの演奏に魅せられた観客たちはリバーヴのかかったmabanuaのウィスパーボイスに酔いしれ、心地よさそうにカラダを揺らす。彼らの楽曲を聴きながらいつまでもまどろんでいたい、なんてのっけから感じさせられるステージングだった。
●韻シスト × PUSHIM @服部緑地スポーツ広場A特設ステージ
鋭い日差しが差し込み始めた会場に、今年で結成20周年を迎えたヒップホップ・グループ、韻シストが登場。グルーヴィーなバンドサウンドに、ゆるめなフロウのラップが乗った楽曲を繰り広げると、「みんなで音楽したいね」というMC・BASIの煽りに応えるようにシンガロングが巻き起こる。「Don’t Leave Me」のスウィンギーなイントロが始まると、上がりっぱなしな大人たちは前日の雨でぬかるんだ足元も気にせず、ドロドロになりながらステップ。それを見て、同じように転げ回るキッズの姿も。勢いそのままにPUSHIMがステージに現れると、会場は熱狂状態に。今年発売のコラボアルバムから「Dreamin」を演奏すると、レイドバック感たっぷりなメロディに合わせ、カラになったビールカップが揺れる。クライマックスが近づくにつれ、このまま終わらないでと願うように手を上げる人たちが増えていくと、それを察するように「Don’t Stop」。”止めないで、愛し合おう”というリリックがぴったりと当てはまるほど、愛に溢れた時間があっという間に過ぎ去っていった。
●lecca @服部緑地野外音楽堂
しばらく音楽活動を休止すると公言していたlecca。【たとえばボクが踊ったら、#002】が約1年振りの音楽活動の場となることもあって、会場には朝からleccaの名が入ったTシャルやタオルを持つ観客が多く、注目度と期待度の高さが感じられた。どことなく張り詰めたような空気が漂う音楽堂に現れた彼女が1曲目に選んだのは「スタートライン」。この時点で涙腺崩壊したファンも多かったのではないだろうか。1年前と変わらない力強く堂々としたパフォーマンスに、「大好きーー」「ありがとうーー」といった歓声があちこちから飛んでくる。中盤も「紅空」「きっと大丈夫」「マタイツカ」と嬉しいセットリストにオーディエンスはタオルをブンブンと回し会場の熱気が高まり続ける。「今日は会えて本当によかった」「みんなの前向き応援しているから」とメッセージをファンに伝え「前向き」。ラストはステージにダンサーが10人近くも登場し、コール&レスポンスで会場の一体感は最高潮に達し、「ちから」をオーディエンスと共に熱唱。多くのファンが涙しているのが見えた。「最後まで楽しんでください!」と笑顔でステージを後にしたleccaに惜しみなく拍手が送られ、1年振りの感動的なステージが終了した。
●The Birthday @服部緑地スポーツ広場A特設ステージ
前回は雷と雨のなか“伝説”と言われるステージを繰り広げた彼ら。今日の上空は厚い雲だが、曇天もよく似合う圧倒的な存在感だ。そして、まずは昨年もプレイされた「LOVE GOD HAND」から。続く「FULLBODYのBLOOD」も同様なだけに“リベンジ”といったところだろうか? しかし強靭でうねりを携えたビートで観客をいっきに沸騰させ、昨年を軽く上書き。さらに大きなスケールで描く「COME TOGETHER」を経て、中盤は最新シングル「THE ANSWER」から表題曲と「VICIOUS」を! スピード感とエモーショナルなメロディにチバの歌声が重なれば完全に“Birthdayワールド”。またシンプルなロックにも観客は心揺さぶられてその世界に没入する。そして怪しげで中毒性あるギターが耳に残る「24時」などを挟んで「1977」から終盤戦へ。雨がポツリとくるがそれも吹き飛ばし、スローなイントロから「歌えるか?」(チバ)と、「涙がこぼれそう」が始まれば大合唱。「今日は服部緑地でお前らと一緒だ!」というチバのひと吠えに多くの拳が突き上がる。そしてベースに高揚感を覚える「なぜか今日は」では「Oi、Oi」のコールとクラップを起こし、ラストの「声」に! 最後は爽快に突き抜けるこのロックで全員が打ち上がり、今年の伝説のステージは終わりを迎えた。
●SOIL&”PIMP”SESSIONS、 RHYMESTER @服部緑地野外音楽堂
この日の音楽堂ステージのトリを務めたのは、ジャパニーズヒップホップのパイオニア的存在、RHYMESTERと日本唯一のデス・ジャズ・バンド、SOIL&”PIMP”SESSIONSの2組だ。まずはRHYMESTER、DJ JINの「始めるぞ!」の掛け声と共に、宇多丸とMUMMY-Dが颯爽とお出まし。ステージ前は立ち見する人で埋め尽くされ、熱気はムンムンに。「言えよ、TBO!」という宇多丸のコールに立ち見客たちがレスポンスすれば、音量制御システムの掲示盤には警告の文字が。どんどんと会場のボルテージが上がる中、音楽堂ステージのトップバッターを務めたOvallのmabanuaをステージに招き入れるとフィーチャリング曲「Future Is Born」へ。ディスコ調のブギーなメロディに、会場はダンスフロアと化した。オーディエンスのテンションは最高潮のまま、SOIL&”PIMP”SESSIONSのエクスクルーシブ・ジャズ・セッションに移行。出だしからタブゾンビのトランペットとサックスが交互に怒涛のソロでたたみかければ、丈青がシンセサイザーで応戦する。それに負けじと興奮したオーディエンスは前へ前へ。音に乗る感情が手に取るように伝わるパフォーマンスに会場はどんどんヒートアップしていく。さらにRHYMESTERを迎えてのスペシャルセッションが始まるともうお祭り騒ぎ。この日だけの貴重なマッシュアップ曲を披露すれば、名曲「ジャズィ・カンヴァセイション」もという盛り上がり必至なセットに、誰もがこれでもかと踊り尽くす。ノイジーでクレイジーだけど、それがどうしようもなく楽しい。そんなフィナーレにふさわしい濃密なライブに、最高以外の言葉が見つからなかった。
●SPECIAL OTHERS @服部緑地スポーツ広場A特設ステージ
夕日が沈む頃、The Birthday同様2度目の出演となる彼らが今日最後の特設ステージへ! ひと鳴らしするとそのままスムーズに「luster」でテイクオフ。ブースの雑音も観客の話し声も全部を巻き込み響く耳なじみ抜群の“SPEモード”だ。もちろん曲はカラフルに展開し、途中オリエンタルな質感もありつつ進む。そしてシームレスに「STAR」へ。腹にくるベース、叩くように弾かれる鍵盤、警告音のようにリフレインするギターなどハードな一面ものぞかせる。自由度高い音楽は観客も自由にし、ビール片手に踊る人、子どもを抱いてリズムを取るママと十人十色。さらにキラーチューン「Laurentech」が始まると今年はここで雨! だが昨年と違い、しとしとと優しげ。“あのフレーズ”と混じり気持ちいいシャワーのようだ。また「Good Luck」のスカのリズムと軽快な鍵盤でキラキラした空気を作ると、MCを挟み「LIGHT」に。徐々に熱を上げ、壮大さを伴って音の波を起こすと、会場には「Fu!」の声。観客は余韻あるアウトロのなか夢見心地でラストシーンを迎えた……が、なんと予想外のアンコールが! 選ばれたのは懐かしい「BEN」。迫真のアクトで生み出すファンキーな感触は達成感十分。華やかな空気のなかついにイベントはフィナーレを迎えた。
困難を乗り越えて開催に至った【たとえばボクが踊ったら、#002】は、全9アーティストの渾身のステージで、“伝説”とうたわれる昨年をしのぐ盛り上がりとなった。終演後、特設ステージに登壇したFM802・DJの加藤真樹子と竹内琢也もその楽しさから、「来年、あるかな?」(加藤)、「あるんじゃないかな?」(竹内)、「きっと会えると思う」(加藤)と、早くも次回を望む言葉! その思いはその場の誰もが同じだったに違いない。来年の開催を心から強く願うばかりだ。
Text by服田昌子、Kenji Takeda
写真:【オフィシャル提供】渡邉一生、ハヤシマコ
◎イベント情報
【たとえばボクが踊ったら、#002】終了
2018年9月16日(日)OPEN10:30 / START11:30 / CLOSE19:00
服部緑地スポーツ広場A特設ステージ、服部緑地野外音楽堂(大阪)
出演アーティスト:The Birthday / SPECIAL OTHERS / RHYMESTER / SOIL&"PIMP"SESSIONS /
RHYMESTER×SOIL&"PIMP"SESSIONS / PUSHIM×韻シスト / lecca / 韻シスト / Ovall / jizue
MC:加藤真樹子&竹内琢也(FM802/UPBEAT!)
オフィシャルサイト:www.t-b-o.jp
◎オンエア情報
【たとえばボクが踊ったら、#002】ライブ音源放送
放送日時:2018年9月24日(月祝) FM802『BEAT EXPO』19:00-21:00
DJ:竹内琢也
番組URL:https://funky802.com/expo/
放送日時:2018年9月25日(火) FM802『UPBEAT!』11:00-13:00
DJ:加藤真樹子
番組URL:https://funky802.com/upbeat/
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