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2026/02/13 19:00

<ライブレポート>indigo la End、15周年を締めくくった日本武道館2days 歩みを総括して提示した“その先”

 indigo la Endの日本武道館公演【indigo la End 15th Anniversary Special Series #Final】が、1月30日と31日の2日間にわたって開催された。本公演は、2025年10月の河口湖ステラシアター公演【ナツヨノマジック vol.4】に続く“15周年アニバーサリーシリーズ”の最終章。初日を「雨の藍」、二日目を「夜の藍」と題し、両日でセットリストを大きく変える構成が組まれた。

 筆者が足を運んだのは2日目。開演後、場内が暗転しステージ奥の4面の巨大LEDモニターに、川谷絵音(Vo/Gt)自身による詩の朗読を含む撮り下ろしムービーが映し出される。「もうすぐ、夜がやってくる」というナレーションの直後、佐藤栄太郎(Dr)が踏み鳴らすキックを合図に、フロアから自然発生的にハンドクラップが起こった。大きくシンバルが打ち鳴らされ、長田カーティス(Gt)によるお馴染みのギターイントロが流れ出すと、オーディエンスは一斉に立ち上がる。オープニング・ナンバーは、2015年のアルバム『幸せが溢れたら』収録の「夜汽車は走る」だ。

 indigo la Endのライブでは毎回PAの完成度が際立つが、この日も武道館という音響的に難しい会場でありながら、バンドのアンサンブルを立体的に浮かび上がらせる。とりわけ後鳥亮介(Ba)のベースラインは輪郭が明瞭で、ドライヴ感のあるフレーズが楽曲全体をしっかりと前に押し出していく。サビでは川谷のボーカルを、サポートメンバーのえつこ(Cho/Key)とささみお(Cho)がハーモニーで支え、楽曲のスケールを美しく拡張する。1階スタンド席から見ると、サビごとに掲げられるオーディエンスの腕に付けられたアクリルライト・ブレスレットの青い光が客席を満たし、まるで星の絨毯のようだった。

 「ドラムス、佐藤栄太郎!」という川谷のコールからドラムソロへと展開し、そのまま「悲しくなる前に」へ。ポストロック的な構造を内包した幾何学的アンサンブルと、ファルセットを交えたサビの浮遊感が鮮やかな対比を描く。終盤では転調を重ねながら一気に畳みかけ、緻密な構成でありながら勢いを失わない。その展開力は、indigo la Endがこの15年で積み重ねてきたバンドとしての成熟を端的に示していた。

 間髪を入れずに披露されたのは「ナハト」。2025年1月リリースのアルバム『MOLTING AND DANCING』のリード曲で、ドラマ『僕のあざとい元カノ from あざとくて何が悪いの?』の主題歌としても知られる1曲だ。ドイツ語で“夜”を意味するタイトルの通り、エッジーなギターが闇を切り裂くように鳴り響くオルタナティブ・ロック。スリリングなアンサンブルのなかで、どこかオリエンタルなニュアンスを帯びたメロディが際立つ。

 その流れを断ち切ることなく「想いきり」へ。川谷と長田が向き合ってギターを弾き始めると、会場には静かな緊張感が走る。上下動を繰り返すメロディラインと、トライバルな佐藤のドラムが楽曲の推進力となり、切なさと力強さがせめぎ合う。続く「名前は片想い」は、indigo la End屈指のポップチューン。歯切れの良い縦ノリのドラムとピアノのバッキングに乗せ、後鳥はステージ前方の台に立ち笑顔でハンドクラップを煽る。駆け上がるようなメロディはキャッチーだが、奇抜なコード進行や間奏でのフリーキーな展開など、随所に彼ららしいひねりが仕込まれており、単なるポップソングに収まらない。〈泣いたり、笑ったり〉と繰り返されるサビが印象的な「邦画」では、一転して照明が落とされる。グルーヴィーなリズムの上で、川谷はファルセットを多用しながら中性的なボーカルを響かせ、張り詰めた静けさのなかに情感を滲ませていく。

 「24時、繰り返す」では、後鳥の硬質な8ビートのベースと、長田のエッジの効いたディストーション・ギターが前面に。LEDスクリーンにはサイバー感のある映像が映し出され、バンドの静と動を行き来する演奏とシンクロする。「プレイバック」では、テンション・コードを多用した川谷のギターがノイジーに鳴り、メジャーとマイナーを行き来するコード進行や、刻々と変化するリズムが時間感覚を攪乱する。

 そして、この日のハイライトのひとつとなったのが「実験前」だ。ヘヴィロック、ハードロック、グランジを通過したアグレッシヴかつエクスペリメンタルな楽曲で、展開は予測不能。気づけばサポートメンバーのえつことささみおはステージを離れ、4人だけによる緊張感むき出しのアンサンブルが繰り広げられる。間奏では佐藤のドラムソロを起点に、長田、川谷、後鳥へと次々にソロがつながれ、会場の熱狂は一気に加速。さらに途中でえつこが乱入し、佐藤と入れ替わってドラムを叩くというサプライズ。佐藤はエレキギターを抱えてステージ前方へ飛び出し、後鳥、川谷、長田とともに台の上で熱いソロを放つ。その前代未聞の光景に、武道館の熱気はこの日最大のピークを迎えた。

 ライブ後半は一転して、しっとりとしたムードへ。まず披露されたのは、2021年発表のアルバム『夜行秘密』から、メロウなソウルチューン「夜の恋は」。スモーキーな照明のなか、川谷は言葉一つひとつを確かめるように丁寧に歌い上げる。続く「通り恋」は、彼自身が「一番辛かった時期に書いた曲」と語り、「ファンのみんなに受け止めてもらえたことで、その気持ちが肯定された」と振り返った。『MOLTING AND DANCING』収録の「哀愁東京」では、ネオンが瞬く都会の夜景を描いたCGグラフィックがLEDに映し出され、アーバンな空気が会場を包み込む。

 スピッツの「ホタル」をカバーした後、「好きに、踊ってください」という川谷の言葉を合図に始まったのは「雨が踊るから」。韻を踏んだ川谷のリリックと、人力トラップともいえるバンドアレンジが鮮やかに噛み合う。七色のレーザーが交錯し、武道館は一瞬、クラブフロアのような様相を呈した。その流れのまま突入した「ラッパーの涙」では、川谷がステージの端から端まで歩きながらラップを披露。「武道館、まだまだいけますか?」という呼びかけに応えるように、披露されたのは「夜明けの街でサヨナラを」。疾走感とセンチメンタルが同居するこの楽曲で、後半戦のギアはさらに引き上げられた。客席に笑顔を向けるメンバーたちの姿からは、かつてのストイックさとは異なる、15年のキャリアを重ねてきたバンドならではの余裕が感じられる。

 続く「雨の魔法」では、川谷がアコースティック・ギターを手にし、indigo la End流のフォーク・ミュージックを奏でる。さらに「アリスは突然に」では佐藤のアクセントをずらしたドラムと、後鳥のタイトでファンキーなベースが主軸となり、音数を絞り込んだアンサンブルのなかで情感が豊かに膨らんでいく。その曲展開は、1本の短編映画を観終えたかのような余韻を残した。

 本編終盤、「夏夜のマジック」ではサビで一斉にハンズアップ。武道館全体がひとつになったかのような一体感に包まれる。そして最後に演奏されたのは、2012年の1stミニアルバム『さようなら、素晴らしい世界』から「素晴らしい世界」。結成から15年、その原点へと立ち返るような、静かで力強い締めくくりだった。

 アンコールではまず「冬夜のマジック」が披露され、続いて今回の武道館公演のテーマ設定の起点となった「華にブルー」が演奏される。タイトルを考える際、真っ先に浮かんだというこの曲は、夜と雨、そして“藍”というモチーフを貫いてきた2日間を静かに回収するような位置づけで鳴らされ、15周年という節目にふさわしい深みを湛えていた。

 そして最後に披露されたのは、2月11日にリリースされた新曲「カグラ」。赤い照明に染まるステージで、不穏さと疾走感を併せ持つサウンドが立ち上がる。摩訶不思議なコード進行と痙攣するようなギターリフが印象的で、アグレッシヴかつアヴァンギャルドでありながら、駆け上がるメロディには強いポップネスも宿している。その感触は、序盤で披露された「名前は片想い」とどこか呼応するものがあり、indigo la Endが次のフェーズへと踏み出そうとしていることをはっきりと印象づけた。

 ライブ終演後には、Sony Musicへの移籍と、自主レーベル『Daphnis records』の立ち上げが発表される。さらに新曲「カグラ」に続き、5月にはニューアルバム『満ちた紫』をリリースすること、そして同作を携えた全国ホールツアー【ONEMAN TOUR 2026『紫にて』】が5月30日から全国20か所で開催されることも明かされた。

 結成から15年。indigo la Endは、過去を総括するだけのアニバーサリーに留まらず、自らの現在地とその先を明確に示してみせた。変化を恐れず、更新を続けてきたバンドの歩みが、この夜の武道館には確かに刻まれていた。

Text:黒田隆憲
Photo:永峰拓也


◎公演情報
【indigo la End 15th Anniversary Special Series #Final】
2026年1月30日(金)DAY1 「雨の藍」
2026年1月31日(土)DAY2 「夜の藍」
東京・日本武道館

◎リリース情報
アルバム『満ちた紫』
2026/5/20 RELEASE

◎公演情報
【indigo la End ONEMAN TOUR 2026「紫にて」】
5月30日(土)埼玉・戸田市文化会館
6月5日(金)大阪・オリックス劇場
6月12日(金)東京・府中の森芸術劇場(どりーむホール)
6月20日(土)茨城・ザ・ヒロサワ・シティ会館(茨城県立県民文化センター)
6月21日(日)福島・けんしん郡山文化センター 大ホール
6月28日(日)静岡・静岡市清水文化会館マリナート 大ホール
7月5日(日)埼玉・大宮ソニックシティ 大ホール
7月11日(土)広島・上野学園ホール
7月17日(金)愛知・愛知県芸術劇場 大ホール
9月25日(金)千葉・市川市文化会館 大ホール
9月27日(日)京都・ロームシアター京都 メインホール
10月3日(土)新潟・新潟テルサ
10月17日(土)北海道・札幌文化芸術劇場hitaru
10月23日(金)岡山・倉敷市芸文館
10月24日(土)福岡・福岡サンパレス ホテル&ホール
11月1日(日)群馬・高崎芸術劇場 大劇場
11月3日(火祝)大阪・フェスティバルホール
11月29日(日)香川・サンポートホール高松 大ホール
12月3日(木)東京・東京国際フォーラム ホールA
12月6日(日)宮城・仙台サンプラザホール

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