2025/12/23 18:00
横浜アリーナを満員にするという目標を掲げ、青春パンクを歌い叫び続けている女性アイドルグループ・BLUEGOATS。2026年1月28日(水)東京・恵比寿LIQUIDROOMにて6thワンマンライブを開催、4月28日には結成4年目にして初のアルバム『さらば青春の光』をリリースすることも発表したこのタイミングで、各メンバーの青春パンクアイドルとして横浜アリーナを目指す理由について独自取材した。
今回の記事では、その第四弾としてほんま・かいなにフォーカス。大金を競馬にぶっ込み、炎天下の42.195kmマラソンを駆け抜け、ライブでは客席に飛び込んで本音をぶちまける。そんな好戦的な印象もありながら、BLUEGOATSを愛してくれる者たちを全力で抱きしめる彼女のアイドル&パンクスとしての価値観も含め、本人の言葉とともにそのルーツ(嵐や銀杏BOYZなど)や特性、魅力をここで紹介していきたい。なお、ダイナマイト・マリン編、ソンソナ編、チャンチー編は先んじて公開中なので、そちらも併せてご覧頂きたい。
※BLUEGOATSダイナマイト・マリン「「いつか絶対倒してやる。アイドルになって見返してやる」と思い続けてここまで来ました」青春パンクアイドルとして横アリを目指す理由
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/156105
※BLUEGOATSソンソナ「私は本物の笑顔を何度だって見せられる」「愛されるようになった自分を横アリで見てもらいたい」青春パンクアイドルの中で王道アイドルを目指す理由
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/156374
※BLUEGOATSチャンチー「ももクロさんにずっと助けてもらっていました」「10年かかってやっとここまで来た」学校に居場所のなかった少女が青春パンクアイドルを続ける理由
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/156632
<ほんま・かいなのアイドル観とそれを培ったルーツ>
これまでBLUEGOATSを取材してきた中でのほんま・かいなの印象は、破天荒なロックスター。前述した通り、センセーショナルな企画の主役を買って出て、つい先日は現在のアイドルシーンを席巻するキラキラ可愛い系のアイドルに対しての苦言を配信。いつ何をしでかすか分からない存在なのだが、根はいわゆる「良い奴」ゆえ傷つくことも多い。けれど、そのネガティブな感情さえ歌に昇華していくところに彼女の魅力はある。そんなBLUEGOATSの支柱とも言えるかいなの特性はいかにして構築されていったものなのか紐解くべく、破天荒アイドルの先駆け的存在であるプー・ルイとの邂逅や、そもそもなんでアイドルになろうと思ったのかそのルーツについて探ってみた。
※BLUEGOATS「クソみたいに光ってやるから」炎天下での42.195kmクズアイドル撤回マラソン~ライブ【BOYS ON THE RUN】密着レポート解禁
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/150798
※BLUEGOATS「人生はギャンブル」青春パンクアイドルが日本ダービーを制した日──その生き様を音楽化した新曲「これが人生だ」公開
https://www.billboard-japan.com/d_news/detail/150417
「11月23日に東京大学駒場キャンパスでPIGGSとのツーマンライブをやらせてもらって、その際にプー・ルイさんと撮らせてもらった2ショット写真をポストしたんですけど、あれには理由があって。BLUEGOATSの前身グループに入ったぐらいのタイミングで、私は初めてWACKの存在を知ってどんどんディグっていったら、BiSHとかのルーツというか、最初にBiSを立ち上げたのがプー・ルイさんだと知ったんです。で、BiSHの「FOR HiM」という渡辺淳之介さんがプー・ルイさんに宛てて書いた曲がめっちゃ好きだったこともあって、私の中ではレジェンド的な憧れの存在だったし、それこそ私たちが目標としている横浜アリーナに立っている人でもあるので(2014年7月8日に開催されたBiSの解散ライブ)、ずっと会ってみたかったんですよ。なので、ツーマンできたことは本当に嬉しかったんですけど、実際に会ってみたらめっちゃ可愛くて……タジタジしちゃいました(笑)。」
かつてプー・ルイが憧れの高橋愛(モーニング娘。/BiS結成の間接的きっかけの人)と邂逅したときも同じような反応をしていたことが思い出されるエピソードだったが、ふたりの邂逅もまたアイドルの歴史において重要な1ページだったと語られる日が来るかもしれない。そんな破天荒アイドルの因果を匂わせるかいなはどんな少女時代を送り、アイドルに目覚めていったのだろうか。
「子供の頃はずっと勉強していたんですよね。習い事もいっぱいやって、野球、水泳、バレエ、ピアノ、ダブルタッチ(2本の縄を使って跳ぶ縄跳び)とか。ただ、受験を受けるタイミングで全部辞めちゃって、どれもやり切ることなく中途半端になっちゃったから、それがめっちゃ心残りで。それから勉強一本になって、学校行って、塾をハシゴして、夜11時とかに帰ってきて寝て、また学校に行く日々の繰り返し。だから、遊んでいた記憶もまったくないんですよね。母親がめっちゃ教育ママだったから、マンガもダメだし、NHK以外のテレビは「バカになるから」ってあんまり観させてもらっていなくて。クラスの子が『ヘキサゴン』とかバラエティ番組の話をするんですけど、マジでついていけなかったんです。その反動で今はテレビもマンガも大好きになっちゃったんですけど(笑)。
でも、子供の頃はそんな感じだったので、よく母から怒られていたし、自分の話を聞いてもらえた体験をあんまりしていなくて。学校であったとことかも話すと怒られると思って、自分のことを上手く話せなくなっちゃったんですよ。それがツラくて、誰かに話を聞いてほしくて中学生ぐらいからブログをめっちゃ書き始めるんです。そうすると、顔も知らない誰かがたまにイイネしてくれたり、コメントを残してくれたりするから嬉しくて。それもあって、今もめっちゃ文章を書くのが好きなんです。あと、そうやって抑制されていた分、今はいろいろ好き勝手やっちゃっていまして(笑)。でも、今はもう母も丸くなったからそれについて怒ることもないし、むしろ「あなたが幸せだったらいいよ」みたいな感じで。父親も「育て方、間違えたなぁ!」って笑ってくれているし。あと、父も元々小説家になりたかった人だから、そのDNAは受け継いでいると思いますね。
子供の頃の母は厳しかったんですけど、私が好きな嵐の出る番組だけは観させてくれていたんです。母も好きだったから。で、中学は女子校に入ったんですけど、ジャニオタがめちゃくちゃ多くて。アニメ好きな子も多くて、その派閥が一切ケンカせずに混ざり合っていたんですよ。だから、アニメとかジャニーズとかそれ以外のアイドルとかいろんな情報が毎日入ってきて、アイマスとかも好きだったし、二次元でも三次元でもアイドルという生き物が大好きになるんです。その流れで高校生のときかな。地下アイドルのライブを観に行って、決定的に「自分もアイドルをやろう!」と思うようになって。それこそブログにも「このアイドルのこういうところが好きで」みたいなことを書いていて、ライブの感想とか……あと、これはちょっとキモいんですけど、「嵐の櫻井翔くんってたぶんこういう人間だから、こういうことを言ったんじゃないか」みたいなマニアックな考察とかも書くようになって(笑)。雑誌とかのインタビュー記事を読み漁って、人間を紐解いていくのが好きだったんですよね。
そんな流れでアイドルの解像度が高まっていくうちに「自分がアイドルだったらこう言うかも」みたいな妄想もずっとしていて。それで、地下アイドルを観て「これだ!」と思って入ったのが今の事務所ですね。可愛い衣装を着るアイドルにはなりたくなかったんですけど、前身グループを観たときに可愛い路線じゃなかったし、楽しそうなことができそうだなと思って入って、なんだかんだで今のBLUEGOATSに至る感じですね。ただ、1,2年ぐらいアイドルになったことを親には内緒にしていて。怒られると思って言えなかったんですよ。実際、打ち明けたときはめっちゃケンカしたんですけど(笑)。でも、最終的に「とりあえず2年ね」って受け入れてくれて。その期限もいつの間にかなかったことになり、気付けば6年目。今、事務所で犬を飼っているんですけど、ライブのときは誰もいなくなっちゃうんで、ウチの母が面倒を見てくれています(笑)。
ちなみに、BLUEGOATSは横浜アリーナを目指していますけど、私が横アリに立ちたい理由は、母がSnow Manのファンで一緒に横アリでのコンサートを観に行ったことも大きいんですよね。横アリなら母も喜ぶだろうし、それもあって目標として掲げているんです。」
<横アリでは、12000人の耳を傾かせなきゃいけない>
そんな家族への恩返し的な意味合いも持つ、BLUEGOATSの夢である横浜アリーナだが、そこに立つ為に彼女は何が必要だと思っているのか。また、その目標を達成する為の方法がアイドルでなければいけなかった。もとい、BLUEGOATSでなければいけなかった理由についても掘り下げさせてもらった。
「Snow Manのコンサートを観たときも「デカい!」と思ったんですけど、横アリを目指せば目指すほどデカく感じるようになっていって、今は昔よりも遥かに大きく感じています。12000人を単独で集めなきゃいけないわけですけど、ライブに来るファン層って全員じゃないじゃないですか。ということは、その何倍も何十倍もの人に知られていなきゃいけなくて「え、どうやったら?」みたいな(笑)。なので、ウチらが横アリを埋めるとしたら、ライブに来てくれる濃厚なファンだけをそれぐらい集める流れなんだろうなって。だから、今はそれを可能にするぐらい説得力のある奴になりたいなと思っています。
横アリでやるMCって12000人の耳を傾かせなきゃいけないわけじゃないですか。そこでいくら良いことを言ったって、私がそれに見合うだけの成長を遂げていないとまともに聞いてもらえないと思うんですよね。ただでさえ横アリなんてみんなめっちゃ期待して来るわけですから。そのハードルを超える為にも、究極、何を言っても全員泣くぐらいのパワーがある人間になりたいなと思います。「かいながいるなら、横アリも絶対に成功するだろ」と思われる存在になりたいし、グループとしてももっともっといろんな人の夢を乗せられるような船でありたいし、「BLUEGOATSの横アリ、絶対にヤバい日になる」と思われる存在になっていたいですね。
ただ横アリを目指すのであれば、アイドルじゃなくてもよかったし、BLUEGOATSでなくてもよかったのかもしれないけど、私はひとりでやるのは好きじゃないし、バンドだと4人横並びにはなれない。誰かを従える感じもイヤなんですよね。4人で肩を組んでやっていきたいし、全員で歌いたいし、みんなでやりたいんです。それがアイドルグループだとできる。もっと言えば、青春パンクアイドルのBLUEGOATSだからこそできると思っているんですよ。他のアイドルグループはちゃんと踊ってフォーメーションとかもあったりするから、全員で肩を組んで歌ったりできないじゃないですか。踊らないという新しいスタイルのアイドルじゃないとできないんです(笑)。
そう考えると、私にはここしかない。だから、BLUEGOATSで横アリを目指すんです。」
たしかに、かいなの求める編成や構成を重要視するのであれば、他のどんなスタイルやグループよりBLUEGOATSがベストである。ただ、これはBLUEGOATSがそう思えるだけのチームになってきたから言えることでもある。青春パンクアイドルを打ち出したばかりの頃のBLUEGOATSは、メンバーもまだ今ほど自信を持てていなかっただろうし、ファンの中にもこのスタイルに必然性を感じられない人は少なくなかっただろうし、その結果離れていった人もいるだろう。しかし、今は誰もがこのスタイルに必然性を感じているからメンバーは胸を持ってステージに立てるし、ファンも自信を持って応援することもできる。
「たしかに最初はめっちゃ大変だったんですよ。「踊らなくていいんじゃない?」となったときに「じゃあ、何したらええねん!」と思っちゃって。だから、最初の頃のライブ映像とか観ると、明らかに挙動不審なんですよ(笑)。でも、今はそんなことなく全員煽ったり、目を合わせにいったり、お客さんの上に立ったり、各々自由に暴れていて、それが自然と形になっている。で、それの映し鏡のようにファンのみんなも自由にはしゃいで盛り上がってくれている。そもそも「踊らない」って武器をひとつ捨てているようなもんじゃないですか。でも、だからこそ、飽きさせないようにどうするべきかみんな考えたと思うんです。その結果が今のライブに繋がっているのかなって。
でも、ようやくちゃんと固まった感じがします。自分たちの方針が決まったからこそ「じゃあ、私たちのやりたいことって何だっけ?」と逆に考えるようになって、そのやりたいことに向かって走り出せるようになったし、その中で例えば「ライブはもっと自由でいいんじゃないか」と思えるようになった。その結果として、MCもナチュラルに自分の人生や目の前にいる人たちに伝えたいことをそのまま語れるようになったりして。もう「とにかく必死」だけじゃ限界が来ていたし、もっと自分の考えていること、やりたいことをこっちから提示していかないと、グループの色をつけられないと思ったんですよね。で、それを意識ししたらようやくBLUEGOATSのイメージが固まってきたので、今はすごく嬉しいです。昔から見ていたら考えられないぐらい、地盤がしっかりしてきたなと思いますね。
ずっと「横アリに行く」とは言っていたけど、どんな感じで横アリを目指していくのが少し前までは見えづらかった。でも、今はそれが見えているからこそファンの人たちも応援しやすいのかもしれないし、より多くの人に「こういうグループだよ」って説明しやすくなっていると思うんです。地下アイドルって「○○系」とか銘打っていても、意外と「こういうグループだよ」って言い切れるグループって少ないと思うんですけど、今のBLUEGOATSは「踊らない青春パンクアイドル」とか「YouTubeで競馬とかやってておかしいけど、ライブは泣けるほど熱い」とか言い切ってもらえるようになっている。その結果として広めてもらいやすくなったと思うので、地道にやってきてよかったなと思いますね。」
<銀杏BOYZに感じた「これ、自分の歌だ」を私もやりたい>
実際、最近は「他のグループ目当てで行ったイベントでBLUEGOATSのライブを偶然観たら涙が出た」「前身グループのほうが好きだったけど、久々にBLUEGOATSを観たらよかった」など絶賛の声を耳にすることが増えており、その存在が世に着実に広まっていると実感する機会も多い。それは、BLUEGOATSの4人が自らの音楽やライブに純度高く人生を乗せられるようになり、より多くのリスナーの胸を打つ青春パンクアイドルになってきた結果だろう。そんな今の4人が錚々たる作家陣と完成させたアルバム『さらば青春の光』についても話を訊いた。
「今の私たちの全部。マジで全部出し尽くしました。言いたいことを言い尽くし過ぎたから、私、途中で1曲書けなくなっちゃったんですよ(笑)。それでマリンと共作することになったぐらい、やり尽くしました。自信のない曲はひとつもない。これが刺さらない世界は嘘だと思う。そんなアルバムの中にTHE BACK HORNの菅波栄純さんと制作した「さらば青春の光」という表題曲があるんですけど、これは栄純さんに以前手掛けてもらった楽曲「解散」よりももっと良いモノをつくろうと思って、最初はより多くの人に聴いてもらえるポップスを目指して作詞したんですよね。ただ、3,4回ぐらい書き直していく中で「今のこの状態でポップスをやってもムダだな」と思って、結果的に「解散」よりもっと個人的な想いを純度高く表現することにして。
内容としては、私たちBLUEGOATSが解散しましたと。その私たちがいなくなった先でも、私たちの歌がひとりひとりの人生の中で光り続けていてほしいなっていう歌です。だから、最初も卒業式をイメージして「仰げば尊し」ならぬ「仰げば光」というフレーズにしていて。私たちがいなくなっても、ちゃんとBLUEGOATSが心のどこかにいてくれたらいいなと思うし、ひとつの救い=光になってくれたらいいなと思って書きました。それで、栄純さんに今回はディレクションもしていただいて、細かく細かく時間をかけて仕上げていった曲ですね。青春群青劇の映画のラストシーンみたいなイメージの1曲になったと思います。この曲はもちろん、今回のアルバムは私たちにとってめちゃめちゃデカい剣なので、その切れ味を含めて味わってもらいたいですね。」
そんな青春パンクアイドルの真骨頂とも言えるアルバム『さらば青春の光』を完成させたBLUEGOATS。そして、今や青春パンクをやっている人じゃなく“青春パンクの人”になってきたかいなは、青春パンクを自分の中でどう捉えているのだろうか。そのルーツについても訊いてみた。
「青春パンクは自分の中で元々馴染みのないジャンルだったんですよ。自分の人生がぐちゃぐちゃになるような恋愛もしていないから、きっとそんなに刺さらないだろうなと思っていて。でも、実際に聴いてみたら、自分の人生とバチッとハマる曲が結構あって。例えば、銀杏BOYZの「東京」。10分以上ある長い曲なんですけど、自分にその歌詞のような恋愛経験があるわけじゃないのに、例えば「僕と別れて君は仕事を辞めて 新幹線に乗って郡山へ帰った 車窓から眺めた空は何色だっただろう 君の心の色は何色だったろう」というフレーズが自分に歌われているような感覚になったんですよね。そんな感じで「これ、自分の歌だ」って重なる瞬間が青春パンクにはたくさんあって。ハルカミライも好きなんですけど、それがめちゃくちゃあるんです。
そんな青春パンクと出逢って、私もそういう歌をやりたいなと思ったんですよ。私の人生とその歌を聴いている人の人生って絶対に違うし、どういう人生を送ってきたかも知らない他人だけど、私の書いている歌やBLUEGOATSの歌っている曲で「これ、俺のことだ!」と思う瞬間をつくりたいなと思ったんです。それができるのが青春パンクなのかなってめっちゃ思って。「ヒップホップでもいいじゃん」と言われたらそうなんですけど、BLUEGOATSはひとりじゃないから。4人で集まって、メンバー同士で手を取り合って「これはあなたの歌だ!」とかそういうことを言えるのは、私の中ではヒップホップじゃないし、ただのロックでもないし、青春パンクだった。私はそれがやりたかったんです。
銀杏BOYZのライブとかめっちゃ泣きながら歌っているファンの人たちがいるじゃないですか。私、あの気持ちが分かるんですよね。峯田和伸さんが歌っている歌なんだけど、自分の歌でもある。だから、私たちBLUEGOATSの曲もファンには自分の歌のように歌ってほしいし、そういう音楽をこれからも続けていきたいですね。」
今の時代に若いアイドルの女の子たちが青春パンク。きっと大人にやらされているんだろうと思う人も少なくないだろう。が、かいなは青春パンクと出逢ったうえで「これこそが私のやるべき音楽だ」と心底思って青春パンクを選び、毎日どこかでこの熱くるしい歌が誰かの歌になってほしいと思って叫び続け、本物の青春パンクスへと成長を遂げてきた。そんな彼女が思い描くBLUEGOATSの今後について。
「銀杏BOYZじゃないですけど、もっと異端にならなくちゃいけないなと思っていて。だから、いろんなアイドルイベントにも出させてもらっているけど、そこで絶対に馴染んじゃいけないんですよ。でも、今は良い具合に馴染んじゃっているから、もっともっと尖らなきゃいけないなと思っています。ただ、それはどんどん過激になっていきたいということじゃなくて、ウチらの場合はやりたいことをやれば自然とそうなると思っているんです。せっかく私たちらしい初のアルバムも完成したことだし、その衝動だけでやっていけば、もっと良い尖りが出てくるんじゃないかなって。
で、私たちの事務所はそれができる自由な社風だから。曲の方向性とかは三川さん(プロデューサー)と作家陣の方々で考えてくれていますけど、歌詞は「ご自由にどうぞ」だから私たちの書きたいように書けるし、その結果「印税558円」みたいな曲も生まれているし。あれは自分のTuneCoreのアカウントを見たら「558円」と書いてあって、それに対して「こんなに書いて558円? クソ!」と思って私が作詞したんですけど(笑)。なので、BLUEGOATSはスタッフさんから何かやらさせて動いているアイドルグループではないんですよ。だからこそ、私たちにも責任が生じる。良い曲が生まれなかったら、それは私たちのせいでもある。でも、ゆえにメンバーも自由に動けるので、やりたいことをどんどんやっていきたいです。」
<「世界を変えられなかった」と思っちゃうのかもしれない>
自由な社風と青春パンクアイドルだからこそ怒りもぶつけられるアイドルグループ・BLUEGOATSだが、かいなの怒りの糧は、YouTubeでの競馬企画で負けたり、印税が安いことだったり、多くが金絡みなところもアイドルらしからぬ感じで面白い。先日の『M-1グランプリ2025』にてドンデコルテが低所得ゆえの世の中へのアンチテーゼをネタにして、日本中で爆笑と共感を生んで準優勝に輝いたが、かいなのその姿勢と歌もまた多くの人々の心を揺さぶるかもしれない。
「自分で自由にやっているからこそのストレスというものがあるんですよ。やらされていても「やりたいことができない」というストレスはあると思うんですけど、やりたいことをやっていても「なんで分かってくれないんだ!」とか「なんでこんなに印税安いんだ!」とか世の中への怒りが溜まっていく。で、金がないのがいちばんのストレスなんです。金がないと飯も食えないし、友達からの遊びの誘いも「忙しいからごめん」とか嘘をついて「情けないな」と思いながら断らなきゃいけないし、イライラするんですよね。でも、それも曲にできるのがBLUEGOATSの良いところなので、これからも金のないストレスを曲にぶつけて歌い続けます(笑)。」
そんな現実と戦い続ける彼女は、自身作詞の「It Won't Be Long」という曲で「世界を変えたいんだ」と歌っている。憧れのプー・ルイもかつて本気でそれを志し、BiS解散ライブの発表の際に「世界を変えられませんでした」と涙していたが(※その4年後に「世界は変えられなかったけど、BiSを作って、私の世界は変わりました」とコメント)、果たしてかいなにとって「世界を変える」とはどんな意味を持つ言葉なのか。最後に自問自答してもらった。
私は「横アリに立っても世界は変わらないな」と今んとこ思うんですよ。人生って全部グラデーションじゃないですか。BLUEGOATSが今の状況に変化したのも突然じゃなくグラデーションだったし、何かをやってその瞬間に世界が変わることはないと思うんですよね。そう思うようになったのは、私、映画が好きでよく観るんですけど、めっちゃ観ていた時期は「頼むから、この映画で私の人生を変えてくれ! 本当に頼む!」と思いながら観ていたんです。でも、どんな映画を観ても「ただ良い映画を観ただけだ……」みたいな感じで何も変わらなかった。だから、そんなドラマみたいな突然変異は私には起きないと思って。結局はすべて地続きなので、世界は気付いたら変わっているものなんだろうなって。なので、横アリに立ってしばらくしてから「そう言えば、変わっていたな」と思えたらいいですね。
ただ、私、自分の人生はそう簡単に変わらないと思いながら、人の人生は変えたいと思うんですよ(笑)。「あ、BLUEGOATSの音楽があってよかった」と思う人がいたとしたら、私の中ではその人の世界を変えたことになるんです。そういう意味では、今もいろんな人の世界は変わっているんだろうなと思うし、横アリに立ったときはもっともっといろんな人の世界が変わっているだろうし、私の世界も変わっているかもしれない。でも、そのときはきっと気付かない。だから、私もプー・ルイさんみたいに「世界を変えられなかった」と思っちゃうのかもしれないですね。変わっていたとしても。ただ、私は「世界を変えたい」というよりも「真ん中に立ちたい」ということをずっと言っているんですよ。歌詞の中でも。私をあなたの中心に、BLUEGOATSをあなたの中心に置いてほしい。……あぁー、でも、それが私にとって「世界を変えたい」ということなのかもしれないです。
先日、SUPER BEAVERのZOZOマリンスタジアム単独公演に行ったんですけど、1回で30000人ぐらい入る会場が満員で。その全員が渋谷龍太さんのMCに聞き入っていたんですよ。「私はこれをいつかやんなきゃいけないのか?」と怖くなって。でも「やりたい」とも思って。だから、横アリはやっぱり楽しみでもあるんです。それこそソレができたら「私をあなたの中心に、BLUEGOATSをあなたの中心に置いてほしい」=「世界を変えたい」という願いが最大級の形で叶えられたってことですもんね。ただ、今はまだ「なんでこんなヤバいグループなのにもっと客が増えないんだ!」って憤っていたりする段階なので(笑)、その怒りも曲に変えながら頑張っていきたいと思います!」
取材&テキスト:平賀哲雄
写真:すずき大すけ
◎リリース情報
1stアルバム『さらば青春の光』
2026/4/28 RELEASE
QARF-60368 2,250円(tax in)
◎イベント情報
1stアルバム『さらば青春の光』リリースイベント
12月29日(月)13:00~タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
and more...
BLUEGOATS 6thワンマンライブ【さらば青春の光】
2026年1月28日(水)東京・恵比寿LIQUIDROOM
OPEN 18:00 START 19:00
チケット:
超VIP30,000円/VIP20,000円/一般3,500円/当日4,000円/各+1D
https://t-dv.com/BLUEGOATS_TOUR_FINAL
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