2026/01/01 19:00
aikoが、ライブツアー【Love Like Pop vol.24.9】を開催した。“vol.24.9”という意味深な数字が付けられた今回の公演は、12月6日・7日に東京・国立代々木競技場 第一体育館、そして12月31日に大阪城ホールで行われるカウントダウンライブの、2か所3公演。アリーナ規模のライブは、2024年1月からスタートした【aiko Live Tour『Love Like Pop vol.24』】以来、約1年ぶり。さらにカウントダウンライブは、2015年12月31日に大阪城ホールで開催された初のカウントダウン公演【Love Like Pop vol.18~CountDown Live あっという間の最終日~】以来、10年ぶりとなる。加えて、代々木競技場でのワンマンは実に15年ぶりだ。セットリストも6日と7日で大きく変えており、aikoが今回のツアーに並々ならぬ思い入れを注いでいることは、ステージの演出やパフォーマンスの端々から強く伝わってきた。
筆者が観たのは、代々木競技場の2日目となる12月7日の公演である。
会場に入ると、中央に円形ステージが設置され、そこからスタンド席のふもとへ向かって四方に花道が伸びている。オーセンティックなソウル~ファンクミュージックが流れ、開演を待つ観客の期待が静かに膨らむ。定刻となった瞬間、場内が突然暗転。ブラスアレンジされたオープニングSEと共にLove Like Pop vol.24.9のロゴがセンタースクリーンに浮かび上がり大歓声が沸き上がる中、サポートメンバーの島田昌典(Key)、佐藤達哉(Key)、浜口高知(Gt)、設楽博臣(Gt)、須長和広(Ba)、神谷洵平(Dr)、朝倉真司(Per)が姿を現し、円形ステージを背にぐるりと横一列に並ぶ。裏打ちのビートに合わせてピアノのバッキングが力強く響き、満席のフロアから自然発生的にハンドクラップが広がっていく。
真っ赤に染まったステージに、一筋のスポットライトを浴びながらステップを踏むaikoの姿が浮かび上がる。2014年のアルバム『泡のような愛だった』から「明日の歌」で、この日のライブは幕を開けた。グルーヴィーなアンサンブルの上を、たゆたうようでいて哀愁を帯びたメロディが自由に舞い、aikoはそれを伸び伸びと歌い上げる。このフォーメーションではメンバー同士が互いの顔を見ることは難しいはずだが、それでも一糸乱れぬ演奏を成立させているのは、長年aikoと苦楽をともにしてきたメンバーならではの「絶対の信頼感」があるからだろう。
赤を基調とした抒情的な照明から一転、続く「ねがう夜」ではカラフルな光の筋が舞い、それに呼応するように円形ステージがゆっくりと回転を始める。aikoはその外周をステップを刻みながら練り歩き、集まったおよそ12,000人のオーディエンス一人ひとりに語りかけるように歌いかける。かと思えば、突然その場から弾かれたように花道の先端へ全速力で駆け出し、2階席・3階席の観客に向けて大きく手を振る。
ここで庵原良司(Sax)、小林太(Tp)、斎藤幹雄(Tp)、川原聖仁(Tb)からなる4人のホーンセクションが加わり、歯切れのよいピアノとホーンの絡みが特徴的な、軽快なナンバー「荒れた唇は恋を失くす」へと突入。高揚感あふれる演奏に、客席のボルテージはさらに上昇していく。つづく「ぶどうじゅーす」では、島田による跳ねるようなピアノバッキングと、耳に残るリフレインのメロディが心地よく響く。2023年リリースのアルバム『今の二人をお互いが見てる』からの楽曲を3曲連続で披露し、ライブは勢いを加速させる。
aikoは歌いながら、観客に向かって手を振り、指をさし、両手でかたどったハートマークを送りつづける。どれだけ会場の規模が大きくなろうとも、「あなた」と「私」の一対一のライブであることを、お互いに確かめ合っているようですらある。そして、『暁のラブレター』収録の「蝶々結び」では、ミドルテンポのソウルフルな演奏に乗せ、aikoが縦横無尽にフェイクを散りばめる。どこまでも飛んでいきそうな自由さに、フロアのあちこちから漏れたため息が印象的だった。
「こんばんは、aikoです。代々木体育館での2日目、寒い中集まってくれてありがとうございます」と、ここでようやく最初のMC。「なんと15年ぶりの代々木体育館、そして50歳になって2回目のライブです」と告げると、「いくつになっても可愛い!」という声が客席から響く。「どちらの方? 改めてお礼を言います、ありがとうございます」と、関西弁のイントネーションで声の主へ呼びかけると、会場は温かな笑いに包まれた。
「今日も楽しみすぎて、実は朝から具合が悪くなりまして……ね、たつたつさん?」と突然aikoが佐藤に振ると、「そうそう。セットリストも昨日と違うから、今日も初日(の意気込み)なんですよ」と明かし、客席のあちこちから大きな歓声が上がった。
島田の美しいピアノに導かれた「秘密」は、神谷の柔らかくオーガニックなドラム、シンプルながら要所を押さえた須長のベース、そして抑揚を抑えたaikoのメロディを、柔らかなストリングスサウンドが包み込む壮大なミドルバラードだ。続く「宇宙で息をして」では、ステージ上空に設置された4面LEDスクリーンに満天の星空が映し出され、その上にaikoやメンバーの姿が重なり、まるで宇宙空間を漂っているような浮遊感に包まれる。地声とファルセットを巧みに行き来するメロディは、聴き手の予想を心地よく裏切りながらも、一度聴けば癖になるほどキャッチーだ。
夢見心地の時間も束の間、「列車」では縦ノリのリズムがオーディエンスの体を自然と揺らし、スリリングなコード進行を持つ「skirt」では、曲が進むほどサウンドスケープがどんどんカオティックに広がっていく。aikoは花道を縦横無尽に駆け回り、「男子! 女子! そうでない人! 全員!」と恒例のコール&レスポンスで観客を煽りまくる。会場の熱気はこの日最初のピークを迎えた。
と、ここで突然「秘密」のイントロの音色について、aikoと島田による“反省会(?)”が始まる。「本当はもう少しエレピっぽい音色のはずで……」と島田が弾き直すと、aikoは即座に歌い出し、今度はサポートメンバーにマイクを向けリレー形式で歌わせていく“無茶振り”へ発展。気づけば「秘密」のオルタナティブバージョンとも呼べる即興演奏になっていった。さらに〈あいしてる〉のフレーズを観客全員で歌うと、aikoは「やばい、最高」「鳥肌立った、泣きそう」と声を震わせながら叫び、会場の感情がひとつに重なる瞬間となった。
「よし、このままいく? やっちゃう?」とメンバーと目配せしてから「58cm」へ突入。再びホーンセクションが加わり、溌剌としたリフが響き渡る。続く「その目に映して」では、aikoが花道の端から端までを走り抜け、まるで客席の誰ひとりをも取りこぼすまいとするかのように歌いかける。
ハチロクのリズムにのせたケレン味たっぷりのメロディが異彩を放つ「カプセル」を歌い終えると、ここで物販紹介コーナー。多くのアーティストなら“橋休め”の時間だが、aikoは違う。バンドメンバーにアドリブで“ボサノバ風”のBGMを奏でてもらいながら、自らもそこに即興で歌詞とメロディを乗せてグッズを紹介していく。aikoとバンドメンバーの、類まれな即興性と作曲力に改めて唸らされるひと幕だった。
ここからライブは後半へ。眩い光に照らされながら「向かい合わせ」が演奏される。続く「ヒカリ」では、曲名どおり幾筋もの光が飛び交い、幻想的な空間が広がる。ゴスペル的な高揚感を誘う名曲「アップルパイ」では、あちこちからメロディを口ずさむ声が聞こえ、会場全体がひとつのクワイアとなっていた。
「今、こうやってみんなと一緒に過ごせていて、本当に楽しいです」
aikoはここで、改めて喜びをかみしめるように語り始める。
「楽しいし、終わってほしくないし、もっと頑張ろうなって気持ちがね……この歳になって、より強く感じるんです。なんかこう、20代のときみたいに『うぇーい!』って勢いで突っ走るんじゃなくて、一つ一つ、みんなと過ごせるチャンスを真剣に考えるようになったというか。みんなが元気になる瞬間を自分がつくるにはどうしたらいいんやろう……って。みんなが元気になると私も元気になるし、みんながめっちゃ可愛い顔でライブ見てくれてるから、『ギュー!』ってなるんです。だから、これからもみんなと楽しい時間を過ごせるように、一生懸命頑張っていきたいです」
その言葉に、客席から「無理しないでね!」という労いが飛ぶ。しかしaikoはすかさず、「違うんです。お母さんにも言われるんやけど、『無理できるときが、無理する時や』って思ってて。もう無理できなくなったら、ほんまにできないから。いま無理できるなら、やれ、やれ! って。だからみんなにも『無理しないでね』って言いながら、ちょっと無理してほしいんです。なんか筋トレみたいな感じというか。体もそうやけど、『ここからいける!』って、自分で自分にちょっと催眠かけないと乗り越えられない瞬間、いっぱいあると思うんです。 凹んで泣いて『もうダメかも』となる瞬間なんか何回もあるけど……それでもみんなに会いたいから。『絶対頑張ろう』と思って今日を迎えられました。だからこれからも、みんなに会えるように……無理します! よろしくお願いします!」と、ここぞという場面で力を注ぐことの意味を、自分の言葉で丁寧に伝えた。
その後は、全員でハンドウェイブをしながら楽しんだ「キラキラ」、「アスパラ」を経て、「be master of life」で本編が終了。アンコールでは「シネマ」「磁石」「赤いランプ」を披露。そしてダブルアンコールへ突入し、初期の名曲「愛の病」、裏打ちのビートが心地よい「beat」、モータウンビートに心が弾む「ドライブモード」、最後に「すごく寂しいけど、今はこの気持ちでいっぱいです」と告げて歌われた「シアワセ」で、この日のライブは幕を下ろした。
年明けには【aiko Live Tour「Love Like Pop vol.25」】がすでに決定している。さらに1月14日にニューシングルのリリースも決定しているaiko。その新曲を引っさげての次のツアーはどんな景色を見せてくれるのか。今から待ちきれない。
Text by 黒田隆憲
Photo by 岡田貴之、河本悠貴
◎公演情報
【Love Like Pop vol.24.9】
2025年12月6日(土)東京・国立代々木競技場 第一体育館
2025年12月7日(日)東京・国立代々木競技場 第一体育館
2025年12月31日(水)大阪・大阪城ホール
【Love Like Pop vol.25】
<前半公演>
2026年1月15日(木)東京・J:COMホール八王子
2026年1月16日(金)東京・J:COMホール八王子
2026年1月21日(水)静岡・アクトシティ浜松 大ホール
2026年1月24日(土)広島・上野学園ホール
2026年1月25日(日)広島・上野学園ホール
2026年1月30日(金)愛媛・松山市民会館・大ホール
2026年1月31日(土)香川・レクザムホール(香川県県民ホール)・大ホール
2026年2月8日(日)茨城・水戸市民会館グロービスホール
2026年2月10日(火)埼玉・大宮ソニックシティ
2026年2月11日(水祝)埼玉・大宮ソニックシティ
2026年2月27日(金)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2026年2月28日(土)福岡・福岡サンパレスホテル&ホール
2026年3月4日(水)東京・東京ガーデンシアター
2026年3月5日(木)東京・東京ガーデンシアター
2026年3月12日(木)滋賀・滋賀県立芸術劇場 びわ湖ホール 大ホール
2026年3月14日(土)兵庫・アクリエひめじ 大ホール
2026年3月15日(日)兵庫・アクリエひめじ 大ホール
2026年4月5日(日)鳥取・米子コンベンションセンター
2026年4月8日(水)大阪・フェスティバルホール
2026年4月9日(木)大阪・フェスティバルホール
<後半公演>
2026年4月19日(日)秋田・あきた芸術劇場ミルハス 大ホール
2026年4月23日(木)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
2026年4月24日(金)愛知・Niterra日本特殊陶業市民会館フォレストホール
2026年5月3日(日)大阪・フェスティバルホール
2026年5月4日(月祝)大阪・フェスティバルホール
2026年5月9日(土)宮城・仙台サンプラザホール
2026年5月10日(日)宮城・仙台サンプラザホール
2026年5月14日(木)北海道・札幌文化芸術劇場 hitaru
2026年5月16日(土)北海道・函館市民会館
2026年5月23日(土)京都・ロームシアター京都 メインホール
2026年5月24日(日)京都・ロームシアター京都 メインホール
2026年6月6日(土)東京・東京ガーデンシアター
2026年6月7日(日)東京・東京ガーデンシアター
2026年6月12日(金)石川・本多の森 北電ホール
2026年6月16日(火)新潟・新潟県民会館0
2026年6月29日(月)大阪・フェスティバルホール
2026年6月30日(火)大阪・フェスティバルホール
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