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2024/11/21

<ライブレポート>ano「次に会う時まで必ず生きて」――ツアー追加公演完走、音楽でたどり着いた“絶対聖域”

 【ano TOUR 2024 追加公演「絶対聖域」】の最終公演が11月9日に東京・豊洲PITで開催された。

 このライブは、今年6~7月にかけて全国7か所で行われた【ano TOUR 2024「絶絶絶蟆セ蟠惹ク也阜隕ウ絶絶絶絶險ア雖∝・ス絶絶対聖域」】の追加公演で、11月5日には大阪・Zepp Osaka Baysideで行われ、この日がファイナル。ラジオパーソナリティやテレビのバラエティ番組のMC、ドラマ『民王R』やドラマ&映画『【推しの子】』への出演など、多方面で活躍するanoだが、音楽だけは誰にも邪魔させないし、決して奪わせない、剥き出しの自分のままでいられる“居場所”を超えた“絶対聖域”なのだと再認識させられるステージとなっていた。

 物悲しくも怖さのあるパレードが通り過ぎたようなオープニングSEに続き、幕が左右に開くと、バンドメンバーを従え、アコースティックギターを抱えたanoが姿を現した。オープニングナンバーは尾崎世界観(クリープハイプ)が作曲し、anoが作詞した「愛してる、なんてね。」。画面の向こうとは違う<僕を見つめてほしい>という思いを込めた楽曲を独白のようにほぼ弾き語りで歌いきると、エレキギターに持ち替え、クリープハイプのトリビュート・アルバムに収録された「社会の窓」のカバーへ。メジャーデビュー当時のバンドの状況を嘆く“あたし”に対して、「愛してる、なんてね。」には<普通にしたら可愛いとかほざいてくる常連客>が登場する。「社会の窓」では<もっと普通の声で歌えばいいのに>という歌詞があるが、自身の声や歌い方、話し方に関して世間からいろいろと注目されがちな二人はシンパシーを感じる部分があったのだろう。“普通”を強要し、常識の枠に収めようとする社会や世間、他人に対して、anoが強烈なデスボイスを繰り出すフロアのテンションが一気に上がり、「ンーィテンブセ」では「声出していけ!」と煽るanoのシャウトによって、オーディエンスの拳と手が上がり、歌詞にある<今生きてるこの瞬間>をしっかりと共有してみせた。

 インディーズ時代にリリースした「デリート」「Peek a boo」「アパシー」というアグレッシブでヘヴィーなロックナンバーを連発してヘドバンを引き出すと、「改めてまして、anoです。初めて来た人が結構いるみたいだからドキドキしちゃうな……楽しんでいってください」と軽く挨拶。自身が作詞作曲を手がけた「SWEETSIDE SUICIDE」では、生と死の境が曖昧になるドリーミーな世界にどっぷりと浸かり、「AIDA」ではエモーショナルに愛を歌いあげ、抜けのよいファルセットも披露。MCでは、「僕はいろんなお仕事をさせてもらってて。色々な日々に挑戦中ですけど、僕がそういうことをやってるの、すごくない? できるような人じゃないけど、やってるんです」と正直な気持ちを告白。「次の曲はみんなで手を振ってください。曲を知らない人はその場のノリとか、女の勘で」という言葉の後、「涙くん、今日もおはようっ」ではオーディエンスが高く掲げた手を左右に振る中で、anoはお立ち台に乗って「みんな、おはよう」と笑顔で手を振り、“普通”や“変”に対するアンチテーゼを込めた「普変」ではエレキギターをかき鳴らしながら<ムカつく>と繰り返し、「コミュ賞センセーション」では弾むビートにラップのようなフロウも展開。5キックのジャージー・クラブのビートやムーンバートンを導入した「スマイルあげない」では4人のダンサーとともにanoも<僕は僕のままのキャラクターで>と歌いながら踊ると、「F Wonderful World」では<NOと言える僕になって/クソみたいな世界ぶっ壊していこう>とシャウトし、フロアを狂乱の渦へと巻き込んでいった。

 「そんなもんじゃねーよな! もっと見せてくれ! ぶち壊すつもりでかかってこいよ!」という煽りから、「猫吐極楽音頭」では照明やレーザーも入り混じってカオティックな様相を見せると、「絶対小悪魔コーデ」では<オイ! オイ!>というオーディエンスの声のボリュームが増大。熱気が最高潮まで高まったフロアに代表曲「ちゅ、多様性。」とTVアニメ『らんま1/2』オープニングテーマ「許婚っきゅん」を投入。作曲を手がけた真部脩一(Ba.)、編曲のTAKU INOUE(Gt.)とともにお祭り騒ぎのような雰囲気となったフロアに向け、anoはハートマークを送った。

 本編最後の曲をパフォーマンスする前に、anoは息を切らしながら「こんなMCなしのライブによくついてきましたね。MCしてないからと言って、あのちゃん、手を抜いてるってXで言わないでください」と最近のニュースを交えて笑わせると、多忙だった昨年を振り返って、「一つも穴を開けられない毎日で。消えちゃいたいみたいな、もうどうにでもなっちゃえっていう負の感情がずっとあって。そんな時に、家で自分でギターを持って作った曲を最後に歌います」と語った。そして、「僕はその瞬間に、一歩も外に出られなかった学生時代の時のことも思い出して。僕は、音楽は人を救えないと思っているし、今日も救うつもりでは(ステージに)立ってないんですけど、僕は自分が鳴らす音楽に救われたというか、スプーンで掬うみたいに心が軽くなった感情になって。音楽はやっぱりいいなと思った瞬間でした」と続け、アコギを弾きながら、音楽に対する思いを綴った「YOU&愛Heaven」を感情豊かに歌い、「ありがとう! バイバイ」と手を振ってステージを後にした。

 そして、アンコールの声に応えて再びステージに登場したanoは、この日のライブを振り返りながら、オーディエンスに向かってゆっくりと、涙を堪えながら語りかけた。

 「僕はお茶の間という場所に立てば立つほど、あのちゃんは全部が作られたものでいい加減で、適当な、アホみたいなこと言ってれば、この世界で生きていける、見せかけの人間だと言われるのは理解してるんですけど、やっぱりライブや歌うこと、音楽は諦めたくないなって思ってて」と音楽活動に対する思いを吐露。「ムカつくこと、全部、音楽でぶち壊したいなと思ってて。もう、それしかできないんですよ」「音楽だったら負けない。音楽だったら、僕が僕であることを許してくれるから」と、その思いはどんどんあふれていく。そして最後に、「あのちゃんがついてるからって思ってほしい。それは僕にとっての音楽がそうだから。みんなも、音楽でもいいし、僕でもいい。なんでもいいから、次に会う時までも必ず生きててほしい。それだけです。今日は来てくれてありがとうございます」とまっすぐに伝えた。

 「ぜひ、ぶち壊しましょう」と最後に歌われたのは、anoが声優を務めたアニメーション映画の主題歌「絶絶絶絶対聖域」。ツアーのイラストも担当したあさのいにおの原作コミックと密接にリンクしている曲ではあるが、<あげる僕の絶対聖域を/もう怖くないよ>には、この日だからこそのニュアンスで心に触れ、胸に迫るものがあった。デスボイスで「ありがとうございました」と感謝の気持ちを伝え、「また必ず生きて会おうな!」と約束してライブを締めくくった。そして終演後には、2025年1月にNHKホールでのワンマンライブ開催に加え、東名阪Zeppでの対バンツアーが行われることが発表された。アンコールのMCでどこか吹っ切れたように見えたanoが、さらに剥き出しのままでエモーションをぶつけてくるライブを見ることができるのではないかと期待している。


Text:永堀アツオ
Photo:横山マサト


◎セットリスト
【ano TOUR 2024 追加公演「絶対聖域」】
2024年11月9日(土)東京・豊洲PIT
1.愛してる、なんてね。
2.社会の窓
3.ンーィテンブセ
4.デリート
5.Peek a boo
6.アパシー
7.SWEETSIDE SUICIDE
8.AIDA
9.涙くん、今日もおはようっ
10.普変
11.コミュ賞センセーション
12.スマイルあげない
13.F Wonderful World
14.猫吐極楽音頭
15.絶対小悪魔コーデ
16.ちゅ、多様性。
17.許婚っきゅん
18.YOU&愛Heaven
19.絶絶絶絶対聖域

◎公演情報
【ano 「スーパーニャンオェちゃん発表会」】
2025年1月14日(火)東京・NHKホール

【ano 「ニャンオェちゃん vs チュープリくんツアー」】
2025年2月3日(月)愛知・Zepp Nagoya
ゲスト:SiM
2025年2月5日(水)大阪・Zepp Osaka Bayside
ゲスト:PUFFY
2025年2月12日(水)東京・Zepp Haneda
ゲスト:TK from 凛として時雨
2025年2月13日(木)東京・Zepp Haneda
ゲスト:マキシマム ザ ホルモン

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