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2024/10/04

<ライブレポート>THE YELLOW MONKEY、マスターピースづくしで敬愛する先輩へバトンを繋いだ8年ぶり【ロッキン】ひたちなか

 THE YELLOW MONKEYが、9月23日に茨城・国営ひたち海浜公園にて開催された【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA】(以下、RIJF)に出演した。

 「どうも、THE YELLOW MONKEYっていいます! ドンズバ世代の方も、『なんかお父さんお母さんが車で聴いてたな』って人も、歌詞とかテキトーでいいんで歌って、最高の時間にしてほしいと思います。今日は我々がちょっとだけ持っている、“プチ”ヒット曲だけやりまーす!」

 “ちょっと”で“プチ”かどうかはさておき、最初のMCで吉井和哉(Vo. / Gt.)がこう宣言した通りの、あまりにも潔すぎるセットリストだった。彼らと【RIJF】といえば、荒天のなか行われた同フェス初回の2000年、そしてバンドが再結成した2016年の2度、ひたちなかの〈GRASS STAGE〉で繰り広げられたパフォーマンス。そのどちらもが伝説的と語り継がれるレジェンドクラスのバンドだが、今回はその貫禄をもって“トリ前”を務め上げた。

 ステージに菊地英昭(エマ/Gt.)、廣瀬洋一(ヒーセ/Ba.)、菊地英二(アニー/Dr.)、少し遅れて吉井が現れると、その圧倒的な存在感に観客も息をのむ。〈GRASS STAGE〉スタンディングエリアには、長身な4人が覆い隠されてしまうほど多くの人が前へ前へと詰めかけた。「楽園」でライブをスタートさせ一気に引き込むと、「SPARK」では印象的なギターリフに合わせてどこからともなく手拍子が。そしてサビ頭、吉井がふとマイクを観客へ向けると、当たり前のようにシンガロングが巻き起こった。

 頭に引用したMCを挟み、期待が高まるなか鳴り響いたのは「BURN」の情熱的なリフ。2番終わりの間奏からは炎の特効も上がって視覚的にも楽しませた後は、「太陽が燃えている」と、まさに燃え上がるようなキラーチューンを重ねていく。実はこの頃には会場の風がかなり強まっており、その影響でステージの音響もうねりまくっていたのだが、やはりそこは百戦錬磨のTHE YELLOW MONKEY、パフォーマンスにいっさいブレがない。

 吉井が、人生で最初に立ったステージで歌ったのは「いとしのエリー」をはじめとしたサザンオールスターズの楽曲だったという。「田舎の少年が、まさかサザンオールスターズの前に、【ROCK IN JAPAN FES.】25周年のこのステージに立てるとは……当時の俺に言ってやりたいです!」と感慨深げに明かすと、サザンのデビュー当時を目の当たりにして受けた衝撃(吉井はメンバーにも同意を求め、3人が頷く姿も)、そしてサザンから受けた影響を熱く語る。「そんな影響を受けた曲かは分かりませんけども、このナンバーを聴いてください!」と続いたのは、「JAM」の静謐なシンバル・カウント。サザンオールスターズも長年テーマとして描く“平和への想い”をのせたバラードだ。2番のサビは観客に歌唱を委ね、あまりにも有名なラストサビからは感情が溢れ出るように、どこか苦しそうに歌う吉井。広い〈GRASS STAGE〉を包み込むような壮大なパフォーマンスに、アウトロの時点から拍手が起こっていた。

 そのまま間髪入れず「愛とはあなたのため!」と叫び、「LOVE LOVE SHOW」へ。音源よりも速めのBPMで、今度は一気にハッピーなムードで会場を満たす。ブリッジ部分では、エマとアニーの兄弟が向かい合わせでニコニコ演奏していたり、最後にはカメラに向かって投げキッスするヒーセの姿がモニターにも抜かれたりと、ステージの上もとことん楽しそうだ。

 観客が吹く歓喜の指笛まで聞こえるなか、ピアノのしっとりした伴奏にあわせ、吉井が語り出す。【RIJF】初出演時の荒天、同じようにその時バンド内も荒れていたこと。直後に活動休止からの解散。でも時が経って「自分のバンドは生涯THE YELLOW MONKEYだけ」とわかってきて、メンバーに再集結を直訴したこと。「歳をとったなりにがんばって活動してきて、いい感じになってきた」ところにコロナ禍、また自らも喉頭がんを患い、バンドが思うように活動できなくなってしまったこと。「生きているといろんな困難が待ち受けています。自分で招いたものも、身に覚えのないものもあって。でも、必ず困難の先にも、時に本当に小さいけど、光がある。たくさん困難を乗り越えるほど、人生の映画は面白いのかなあって思います」と噛みしめると、改めて今日【RIJF】のステージに出演できたことに感謝を告げる。「ボーカリストとしてあんまりよろしくないところを病気になったので、お聴き苦しいところがこれからもあるかもしれませんけども、さっき桑田さんが俺に勇気づけてくれました。『“時間薬”ってのがあるからさ』って。『桑田さん、そしたら俺おじいさんになっちゃうよ』って言ったら『バカヤロー、俺を見ろ!』って……先輩についていきます!」と、同じくがんの手術を乗り越えている桑田佳祐とのエピソードには、温かい拍手が巻き起こった。

 「バラ色の日々」では、その前の「みなさんにも必ず、バラ色の日々が訪れますように」との吉井の祈りを繰り返すように、観客がシンガロングで応える。最後は「パール」を駆け抜けるように披露し、ステージを後にした。

 THE YELLOW MONKEYは今年5月に、約5年ぶりのアルバム『Sparkle X』をリリースしたばかり。しかし今回はそれらの新曲はお留守番、一見さんもすぐに歌えるマスターピースのオンパレードで、心から敬愛するサザンオールスターズへとバトンを繋いだ。その堂々とした姿が、どこまでも眩しく映った約50分間だった。


Text:Maiko Murata
Photo:ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA

◎公演情報
【ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2024 in HITACHINAKA】
2024年9月14日(土)、15日(日)、21日(土)、22日(日・祝)、23日(月・振休)
茨城・国営ひたち海浜公園

▼セットリスト(THE YELLOW MONKEY)
1. 楽園
2. SPARK
3. BURN
4. 太陽が燃えている
5. JAM
6. LOVE LOVE SHOW
7. バラ色の日々
8. パール

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