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ホール&オーツ 1万人が熱狂!HOTなROCK'N SOUL
ライブレポート&インタビュー/保科好宏
No.7
Photo: Getty Images
80年2月の初来日以来、今年で4度目となるホール&オーツのコンサートを日本武道館でみた。初来日時の東京・郵便貯金会館以来、ちょうど4年ぶりのコンサートになるが、会場の規模の違いだけでなく、洗練されたステージ構成や観客の反応などから、この4年間の、彼らの成長ぶりをうかがえるできばえだった。
オープニング・ナンバーの「ファミリー・マン」が始まると同時に、ものすごい熱気が会場全体を包み、曲が次々に演奏されるにつれてため息にも似た感動、絶叫に近い声援がわき起こった。4年前には想像もつかないようなダイレクトな観客の反応がホール&オーツの演奏とともに会場を支配し展開していく様は、ちょっとしたドラマを見ているような迫力だ。武道館が時々収縮しているのではないかと思えるほどのステージとの距離が近くに感じられる瞬間は、とてもスリリングだ。
それにしてもホール&オーツはヒット曲が多い。アンコールまで含めた全17曲のうちシングル・ヒットをしていない曲を探す方が難しいほどだ。その上、それらのヒット曲をレコード通りに歌うのではなく、「リッチ・ガール」ではソウル・フィーリングあふれる歌いまわしで聴かせたり、「ふられた気持ち」ではアコースティック・ギターを手にしたダリルとジョンが美しいハーモニーをかもし出したりと、ライブならではのメリハリあるアレンジで楽しませてくれた。欲をいえば、昔のようにちょっとバタくさいR&Bメドレーも聴きたかったのだが、今のファンには都会的なソウル・タッチのオリジナル・ヒット曲だけで十分満足なのかもしれない。
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雪の降りしきる日本庭園を一望するホテルでホール&オーツの会見が行われた。
定刻どおりに姿を見せたふたりは、日本側からのゴールド・ディスクの贈呈を受けた後、きげんよく語ってくれた。
やはり、時節柄か、MTVに関する質問をたくなる。ダリルは「奇妙な現象だとは思うけど、音楽業界全体に活力をもたらしたことは高く評価しているよ。しかしアメリカでは24時間繰り返し放映しているので飽きられてしまうのではないかという心配も少しはあるけどね。だから僕たちは詞の意味をどう表現してイメージをクリアにするかを心掛けているんだ」。一方ジョンは「音楽はイマジネーションの源だから、下手にストーリー仕立てのビデオを作るとかえってイメージが限定されてしまって好ましくないと思うんだ。お金をたくさんかけたからといって良い作品ができるとは思っていないよ」。発言でも音楽同様に息の合ったところを見せてくれた2人。
また興味深かったのは、彼らの音楽的なバックボーンとなっているソウル・ミュージックとの関わり方で、ダリルが「10代のころの遠い昔の話だけど、ふたりともフィラデルフィアでセッション・ミュージシャンをやっていたので、スタイリスティックスやテンプテーションズ、スモーキー・ロビンソンらとステージやレコーディングで一緒に仕事をしたことがあるよ」と話してくれたことだ。やはりホール&オーツのソウル・フィーリングあふれる音楽スタイルは、借り物でも即席でもなく、10代のころから自然に身体に染み込んだものであることを確認できたことは大きな収種だった。
そしてひとしきり続いたレコーディング・テクニックやプロデューサーについての話のあと、コンビ解消のうわさについてダリルは「音楽的にも友達としても、非常に良い関係を保っている。音楽的に同じ方向を向いている以上、別れて活動する必要はないよ」とキッパリと否定した。最後の質問となった「日本で何か買いたいものがありますか?」に対し、ジョンが「日本には僕の身体に合う洋服がたくさんあるからたっぷりと買っていくよ」とおどけて見せたのが印象的。
(保科好宏)
