大阪の専門学校で知り合ったU、MASATO、REIからなる3人組ボーカルユニット。EDR(エレクトリックダンスロック)という音楽スタイルを掲げ、東京を中心に活動している。2015年に1stフルアルバム『WILL』をリリースし、2016年7月にユニバーサルシグマよりシングル『Never End』でメジャーデビュー。その後もコンスタントにリリースを重ね、2017年8月に『I'm』、2019年3月に『メッセージ』とアルバムを発表。2020年1月に東京・新木場STUDIO COASTでのワンマンライブを成功させた。
結成10周年を迎えた2022年の8月4日にドラマ『六本木クラス』の挿入歌「Start Over」をリリースし各配信チャートで22冠を獲得、現在総ストリーミング5,000万回を突破。2023年6月には約2年ぶりとなる通算4枚目のアルバム『Bell』をリリースし、全国20か所を回るツアー【Bells.】を開催。2024年1月より放送中のABCテレビ・テレビ朝日系ドラマ『アイのない恋人たち』の主題歌を担当し、4月には初のZepp DiverCity TOKYOでのワンマンライブを開催する。
THE BEAT GARDENとは? そう問われたとして、あなたはなんと答えるだろうか。最近彼らを知ったという方の多くはおそらく「Start Over」を真っ先に思い浮かべるのかもしれない。2022年に放送され、世界的大ヒットを遂げた韓国ドラマ『梨泰院クラス』を日本版にリメイクしたことでも大きな話題を呼んだドラマ『六本木クラス』、その挿入歌である「Start Over」を担当し、『梨泰院クラス』のテーマソングとして韓国のシンガーソングライター・Gahoが歌う「はじまり/START」(原曲タイトルは「Start Over」)の公式日本語カバーを手がけたTHE BEAT GARDENの名は瞬く間にお茶の間にも浸透した。
ドラマにも楽曲にもオリジナルに根強いファンが数多く存在していることもTHE BEAT GARDENが一躍、脚光を浴びた要因のひとつには違いない。だが、それだけで支持を得られるほど簡単な話じゃないことは誰より彼ら本人が知っていたはず。グループにとって2022年は結成10周年という大切な節目の年であり、しかも前年には戦友とも呼ぶべきメンバーの脱退という苦い別れを経験した、まさしく“Start Over(直訳すれば「もう一度やり直す」)”なタイミングにつかんだ千載一遇の好機に全身全霊で食らいつき、「START」をTHE BEAT GARDENならではの「Start Over」へと見事に昇華して見せた彼ら。原曲に宿る不屈の闘志を真正面から受け止め、その意志を受け継いだうえで、自身の心情をもリアルに反映させた力強い日本語詞と、彼らの持ち味である四つ打ちのビートをサビに織り込むことでひときわ推進力を増したトラックによって編み上げられた“THE BEAT GARDENの「Start Over」”は世代や性別、職業などあらゆる垣根を飛び越えてたくさんの人たちの心を揺さぶり、ドラマ放送終了後も愛され続ける、彼らの新たな代名詞となったのだ。
しかしながらTHE BEAT GARDENの本領は「Start Over」のみにとどまらない。2023年リリースの最新アルバム『Bell』を聴けば、彼らが紡ぐ音楽の豊かな世界に目をみはらずにはいられないだろう。例えば、ありふれた日常こそがかけがえないと気づかせてくれるラブソング「初めて恋をするように」は、「Start Over」直後のドラマ『自転車屋さんの高橋くん』のオープニング・テーマとしても注目を集めたが、代わり映えのしない毎日を輝かせるそよ風のごとく柔らかなサウンドアプローチが実に秀逸で、前作のイメージをガラリと変えてTHE BEAT GARDENというグループの音楽的ポテンシャルを印象づけた。また、80〜90年代のトレンディドラマ的ニュアンスを取り入れたディスコティック・ナンバー「ROMANCE」、失恋の痛みとそれでも相手を忘れられないやるせなさが胸を締めつける「それなのにねぇなんで?」、親友と想い人との三角関係を洒脱に歌い上げたサマーソング「夏の三角関係」と恋愛をテーマにした楽曲だけにフォーカスしてもこれほどにバリエーション豊富な物語が楽しめるのかと素直に驚いてしまうが、さらに驚くべきは彼ら自身が“THE BEAT GARDEN”の枠組みにとらわれない、そのフットワークの軽さにもある。
当サイトに掲載の対談をぜひご一読いただきたいが、『Bell』に収録の「あかり」という曲はロックバンド・wacciの橋口洋平に、wacciファンだと公言するリーダー・Uが直接、制作を依頼して誕生した珠玉のバラードだ。自ら作詞作曲を行うボーカルグループであることはデビュー当時からTHE BEAT GARDENの大きな強みだが、そこだけにこだわることで世界を狭めてしまうのを彼らは良しとしていないのだろう。むしろ自分たち以外の才能と積極的に交わることで生まれる音楽的シナジーを心から楽しんでいるのは間違いない。実際、「あかり」でのより繊細な歌唱は彼らにとっての表現の扉がまた新しく開かれた何よりの証拠だ。音楽への揺るぎない愛情と飽くなき好奇心、そして、それに携わる人たちへのリスペクトが彼らの内に深く根ざしていたからこそ「Start Over」を引き寄せることができたとも言えるのかもしれない。
大阪の音楽専門学校で出会って意気投合したU、REI、MASATO。友人としてスタートした3人が前進となるグループを結成し、あてもないのにその1週間後には上京、六本木を中心に路上ライブをしながら、音楽事務所やライブハウスに無謀とも言えるアタックを繰り返していたというのは有名なエピソードだが、自分たちの力で一歩一歩を積み重ねるDIY的精神は今のTHE BEAT GARDENをも支える重要なファクターだろう。EDR(エレクトリック・ダンス・ロック)を自身の音楽性として掲げたメジャー1stアルバム『I'm』に息づいた初期衝動的熱量が今なお衰えを知らず滾っていることは『Bell』に収録のEDRチューン「High Again」でも明らかだ。
聴いてくれる人たちにメッセージを届けることをより意識し始めた2ndアルバム『メッセージ』以降は自身の考えや経験をも歌詞のモチーフとして取り入れ、メロディにも重きを置きながら、ありのままの自分たちを想いとともに手渡し続けてきたTHE BEAT GARDENはファンとの心の交流もとても大切にするグループだ。THE BEAT GARDENにまつわることはできる限り自分たちの言葉で伝え、共有してきたから、互いの距離感も実に近しく、ゆえにTHE BEAT GARDENのライブはいつも温かくてポジティブなムードに満ちている。3人が織りなす声のハーモニーはもとより、そのステージングは一見以上の価値アリ。幼少の頃からダンスに通じてきたREIの華麗な一挙手一投足、パッション溢れるMASATOのひたむきなパフォーマンス、客席もひっくるめてライブを丸ごと牽引するダイナミックで華のあるUの身のこなしはさすがリーダーの貫禄で、三者三様にして惜しみなく放たれる全開のエネルギーに触れれば、いっそうTHE BEAT GARDENの魅力を理解してもらえるのではないだろうか。
もちろん当サイトに掲載している彼らのインタビューや対談からもその人柄をたっぷり楽しんでいただけることだろう。デビュー以降、彼らの活動をつぶさに追ってきた筆者だが、これほどに人間性と音楽が直結しているアーティストも珍しいと声を大にしてお伝えしておきたい。
さて、来たる2024年4月13日、THE BEAT GARDENは次なる夢のステージ、Zepp DiverCityTOKYOに立つ。【THE BEAT GARDEN one man live at Zepp DiverCityTOKYO「good error」】と題されたこの晴れ舞台は、彼らをさらなる飛躍へと導くだろう。それに先駆けて2月11日には待望の新曲「present」も配信される。1月期ドラマ『アイのない恋人たち』の主題歌としてすでに耳にした人も多いと思われるが、シンプルで美しいメロディに乗せて3人が歌い継ぐストレートなこのラブソングに新境地の予感を覚えたのは筆者だけではないはずだ。ますます広がりゆくTHE BEAT GARDENの未来、彼らがたどり着く先をぜひあなたにも見届けてほしい。
Text by 本間夕子