シンプルなライトで照らされたステージに登場する上野大樹。アコースティックギターを肩にかけ、軽くチューニングを済ませると、村田昭によるキーボードの伴奏とともに「同じ月を見ている」でライブはスタート。少しハスキーな上野の歌声が瞬く間にスタジオを切なくもどこか温かい空気感で満たしていく。「今日は短い間ですけど、よろしくお願いします」と視聴者に挨拶をすると、「て」へ。比較的短めな楽曲だが、切実に訴えかけてくるような歌詞は聴く人の心を揺さぶってくる。
「普段は弾き語りでやっていることが多くて、せっかくのこういう機会なので、いつもの上野大樹でできればなと」と話したあと披露されたのは「おぼせ」。ギター一本の弾き語り形式でリアルな歌詞を届け、パフォーマンスのエモーショナルさが強まっていく。再びキーボードを交えて最新アルバム『帆がた』に収録されている「波に木」へ。上野の歌唱も数段階ボルテージを上げたかのように感情が溢れ出ていて、純粋に聴き入ってしまった。
ギターを置き、ラストにTikTokで話題となっている「ラブソング」をキーボードとボーカルのみで披露した。一見ショッキングな箇所もある歌詞だが、それによって楽曲の持つ温かいメッセージがより際立っている印象を受ける。実際、曲の後半から多幸感に近い感情が湧いてくる感覚があり、コメント欄にもパフォーマンスに引き込まれている節の書き込みが多く見受けられた。曲の最後の「~届くように」というフレーズの余韻に視聴者を浸らせるような形でライブは締めくくられた。
Text: Haruki Saito
Photo: Masanori Naruse